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021 書く③ 文章の量

書くスキルの3回目として、今回は “文章量” を取り上げます。前々回ご紹介した通り、伝えたいことをにシンプルに伝えられると必然的に文章量は少なくなる筈です。ですが「シンプルに伝える」ことそれ自体にもスキルが必要ですので、ここでは真似やすい、ちょっとしたコツを幾つかご紹介します。

一文を短くする

まず一番簡単なのは、文章をわけて一文を短くするテクニックです(例文は前回同様、 阿部紘久『シンプルに書く!』より引用/一部改訂)。

主語・述語の数だけ文章を分ける
悪例:
私は、後ろで支える地味ですが大事で誰かがやらねばならないことを行う庶務を希望します。
良例:
庶務は地味ですが⼤事で誰かがやらねばならない⼤事な仕事です。私は皆を後ろで⽀えるその仕事を希望します。

基本は「主語+目的語+述語(S+O+V)」で1セットです。ですので、その1セットが終わったら、一度、句点(。)で文章を終えてしまうだけのテクニックです。ただし細切れにしすぎると、「来日されて何年目ですか?」と尋ねたくなるような、たどたどしい文章になってしまうため、注意が必要です(そのときには接続詞を使います)。

適度に接続詞をつかう
悪例:
問題は⼭積している。売上げは順調に推移している。
良例:
問題は⼭積している。しかし売上げは順調に推移している。

同様に、次のふたつのテクニックも意識すると良いでしょう。

述語を早く示す
悪例:
彼は今朝奥さんに伴われて脳外科の専門医として有名な医師の診察を受けるため東京に行った。
良例:
彼は今朝早く奥さんに伴われて東京に⾏った。脳外科の専⾨医として有名な医師の診察を受けるためだ。
一語一文字でも短くする(無用な装飾を削る)
悪例:
週末は家族と過ごす時間を大切にするように心掛けて生活するようになった。
良例:
週末は家族と過ごす時間を⼤切にするようになった。


読みやすくする

そもそも「書き言葉」「話し言葉」は別物です(最近では音声入力でメールやブログを書く人も増えてきたようですが、読点や句点を追加するなどの手直しが必要なことからも、そのふたつが同じでないことが分かるでしょう)。ですので「書き言葉」ならではのテクニックも使うことをお薦めします。端的に言うと「読みやすくする」という 気遣い” です。

読点は意味の切れ目に打つ
悪例:
これまで日本を22回、訪問してきたA氏が首相の死去を受けて会見を行う。
良例:
これまで日本を22回訪問してきたA⽒が、首相の死去を受けて会⾒を⾏う。
「話し言葉」をやめる
悪例:塩と胡椒を入れていきます。
良例:塩と胡椒を⼊れます。
悪例:そこでの判断が重要になってくる。
良例:そこでの判断が重要になる。
悪例:会場は2階になります。
良例:会場は2階です。

ほかにも、次のような点に注意すると、良いかもしれません。

「動詞 + ことで」をやめる
悪例:
工程を見直したことで、コスト削減のヒントが得られた。
良例:
⼯程を⾒直した結果、コスト削減のヒントが得られた。

最近ではニュース番組ですら「動詞 + ことで」を使っていますが、文章では避けた方が好ましいとされています。


全体の文章量を調節する

そして何より全体の文章量を減らす努力が必要です。ただしこれは前回「論点のズレとボケ」でお伝えした内容ですので、ここでは補足テクニックのみを簡単にご紹介します。

話の核心から入る
だらだらと前置きを並べない
省略する
共有済みの前提を省き、繰り返しを避ける
要約する
できるだけ短く、端的に伝える努力をする

「話し言葉」では「思わず口をついて出てしまった」というような失敗も起こりがちですが、「書き言葉」では(時間の許す限り)見直しが可能ですので、省略も要約も「話し言葉」よりは楽な筈です。慣れないうちは、じっくりと時間をかけて見直し、一文を短く、全体も短く、さりとて論点をズレさせず、相手が知りたいことを端的に伝えられるよう努力いただけると嬉しいです。

[参考]これまで&これからの記事

法人/個人を問わず、論理思考やコミュニケーションスキル、メンタルスキルなど各種ビジネススキルを、基礎の基礎から分かりやすくお伝えいたします。   (株)トンパニ https://tongpanyi.co.jp/