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020 書く② 文章の質

“悪文” という日本語はあるのに反対の “良文” という日本語がないのは、もしかすると文章は「良くて当たり前」と思われているからなのかもしれません。── というわけで(?) 、前回に引き続き、今回は「良い文章」の書き方をご紹介していきましょう。

正しく書く

まずは、当然のことながら “正しい日本語” で書く必要があります。推敲や校正の段階で直せばよい話ではありますが、ごく簡単によくある間違い例をご紹介し、その確認にかえたいと思います。
※例文はいずれも 阿部紘久『シンプルに書く!』より引用(一部改訂)

主語と述語をかみ合わせる
誤:私の欠点は、せっかちです。
正:私の欠点は、せっかちなところです。
主語や述語を勝手に変更しない
誤:海外から出した手紙は、友だちの中で彼ひとりだった。
正:海外から手紙を出したのは、友だちの中で彼ひとりだった。
正:海外から手紙を出した友だちは、彼ひとりだった。
事実と意見を混同しない
誤:90年代以降、弊社は業界をリードしてきました。
正:90年代以降、弊社は業界をリードしてきたと自負しています。

少しでも長い文章になると、主語と述語の齟齬に気付きにくくなります。ですので、せめて推敲や校正の段階で「主語と術語が一致しているか?」という確認を怠らないようにしましょう。(ちなみに最後の「事実と意見を混同しない」については、第15回「話す③ アイメッセージ」で詳しくお伝えした通りですので、ここでは説明を省きます。)

わかりやすく書く

「伝わるように伝える」というのがコミュニケーションの基本です。ですので、文章は正しく書くだけでなく、わかりやすく書く必要があります。再び前掲書の例文をつかって、よくある失敗例を簡単にご紹介します。

構成を意識する
悪:会社に遅刻した。電車が遅れたからだ。その原因は大雨だ。
良:大雨が原因で電車が遅れ、会社に遅刻した。
修飾語は直前に置く
悪:男性向けの従来のものより大きいサイズのパンを開発したい
良:従来のものより大きいサイズの、男性向けのパンを開発したい
否定文は肯定文に変換する
悪:製品A は製品B のようには軽くない
良: 製品Aは製品Bと違って重い
受動態は能動態に変換する
悪:抜本的な改革が期待される
良:抜本的な改革を期待する

これらの中でも、とくに受動態を使った表現をよく目にします。わかりやすく能動態で表現すると主語が「私は」になってしまい、その発言責任まで明確になってしまうため、それを避けるためだと予想されます(←これが受動態)。つまり、責任を負いたくないため意図的に受動態をつかって、主語と責任の所在を “うやむや” にしたかったのだと思われます(←これも受動態)。

論点のズレとボケ

さて、文章を書くということは、多くの場合「誰かに伝えたい内容がある」ということを意味します。一方、前回はその「伝えたい内容」が 論点なのではなく、「論じて欲しいと相手が考えている点」「相手が知りたがっていること」こそが論点だとご説明しました。今回はそこからさらに掘り下げて、どうやってその論点を伝えればよいかを考えます。

少なくとも論点を伝えるためには、次のふたつに注意する必要があります。

・論点をズレさせない … 話題を脱線させない
・論点をボケさせない … 余計な情報を盛り込まない


人によっては、このふたつが同じことを指しているように思えるかもしれませんが、このふたつは全く別物です(前者は例えば「話の途中で別の話題を伝え始める」ことを言い、後者は「余計な周辺情報まで伝える」ことを言います)。

この論点のズレボケを、図で表現すると次のようになります。

つまり、読者を特定した上、その読者が知りたがっていること(論点)を知り、それを外すことなく、拡げすぎることなく文章化すればよい…という訳です。そしてその内容を正しい日本語で、わかりやすく表現しさえすれば、大ハズシする可能性を下げることができるのです。


今回の内容が、最後まで読んでいただいた皆さまの「知りたかったこと」と一致していればよいのですが…(合掌)

[参考]これまで&これからの記事

法人/個人を問わず、論理思考やコミュニケーションスキル、メンタルスキルなど各種ビジネススキルを、基礎の基礎から分かりやすくお伝えいたします。   (株)トンパニ https://tongpanyi.co.jp/