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やけに静かな夜にわたし

月の見えない夜だ。公園のベンチに座っていた。むかし自転車を練習した公園だ。

風の強い夜だ。耳に流れるのは灰色ロジック、海岸線。

一生どこにも帰りたくないような夜だ。とぼとぼと家路につく。高校生くらいのカップルが、通りのベンチで話しこんでいる。

最近かけたパーマは好評だ。気の利いた返しのできないわたしはガキだ。

小雨が霧のように、肌に吸いつく夜だ。あの子を好きだったあの頃は良かったなと、おもう。


恋がしたい夜だ。

まっすぐに気持ちをぶつける相手のいない、夏だ。

またきっと、誰かを好きになれる、誰かを好きになりたいとおもった、夏の夜だ。