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とんちはロックだ!「えんま大王の失敗」

「スキ」の理由を考えるのは難しいけれど楽しいものです。

そして、すとんと落ちる理由が見つかると、何だかうれしい。

このごろ、いろいろなとんち話を読んで「好きだなあ」と思い、理由を考えていたのですが、すとんと落ちた気がするのでうれしくて書いています。

つまり、とんちってロックだから、なのです!


・・・ぜんぜん、すとんと落ちていませんね?(笑)

今回は、わたしがロックの心を感じるとんち話をご紹介して、「とんち=ロック説」とはどういうことか、お話したいと思いますので、ロックファンの方もとんちファンの方も、読んでみてくださいね。

「えんま大王の失敗」あらすじ

死んでえんま大王の前に引き出されたお医者さん。
「私は人の命を救う仕事をしていましたから、極楽へやってください」と言うと、
「お前はもう治っている患者に薬を高く売りつけたり、薬だと言ってうどん粉を売りつけたり、いろいろ悪事があるから地獄行きだ」と言われてしまいました。
一人で地獄へ行くのも心細いので、誰か道連れがいないかと待っていると、山伏、鍛冶屋がやってきます。
二人とも生前の行いを調べられ、地獄行きを命じられたのでした。
旅は道連れ、三人は一緒に地獄へ向かいます。
まず三人を待ち受けていたのは、抜き身の剣が上向きにびっしりと生えている山。
痛そう!とても歩けっこない!と怯える二人を尻目に、鍛冶屋は「任されよ」と持っていた仕事道具で(持ってるんですね)剣を何本か折り、鉄のわらじを三足作ってくれました。
これを履いて歩くと、剣はポキポキ折れてしまいます。「後から来る人のために」と三人は山じゅうを踊りまわって剣をみんな折ってしまいました。
怒ったえんま大王は、三人を釜ゆでにしようとします。
ここで「任されよ」と言ったのは山伏。得意の術で湯を冷まし、ちょうどいい湯加減に。三人は喜んでつかり、ついでに「後から来る人のために」と、例のわらじで釜の底を踏み抜いてしまいます。
こんな三人組は鬼に食わせてしまえ!とえんま大王。大きな赤鬼が三人を食べることになりました。
ここはもちろん医者の出番。持っていた(持ってるんですね)しびれ薬を鬼の口に塗ってしまいます。
噛むことも呑むこともできずアワアワする赤鬼。三人は口の中をいたずらして回り、ついにはくしゃみの出る筋を引っ張ったからたまりません。
ハクショーンと大きなくしゃみ。
三人は鬼の口から吹き飛ばされ、地獄をぴゅーっと駆け抜けて、とうとう極楽へ行ったとか。

えんま大王を「失敗させる」三人組のお話。
死後の世界を舞台に、ピンチを次々に切り抜けるところが愉快痛快ですね。

さて、わたしが思う「ロックな心」ととんち話って、共通点がたくさんあるのです。もちろん、このお話にも当てはまります。

「えんま大王の失敗」に見る3つのロックな心

ロックな心その1:
エライ人、強いものへの反骨精神
⇒死後の世界で絶対の力をもって「地獄へ行け!」と命じるえんま大王に、ちっとも従わない三人組。反逆者たちです。

ロックな心その2:
常識を疑い、ちょっと違う角度で見る革新性。
⇒地獄へ行ったら、ただもう、ひたすら苦しいことに耐えなきゃいけない。
・・・ほんとにそうなの? そんなことないでしょう。
かわせるならかわしてしまえ!という三人の思考がいいですよね。

ロックな心その3:
すべてを笑い飛ばす明るさと強さ

⇒鉄のわらじで剣の山や釜ゆでの釜を壊すところ、好きです。
「後から来る人のために」と言ってはいますが、たぶん、暴れまわるのがおもしろかったんだろうな、と思ってしまう。想像するとちょっとニヤニヤしてしまいます。

さらに最後、鬼のくしゃみで勢いがついた三人組が、地獄を駆け抜けていくところ。(たぶん、道々、例のわらじでいろいろ壊していったであろう)
疾走感があって、痛快で、ロックのワクワク感そのもの。

いいぞ、三人組!
ロール・オーバー・えんま!


今回ご紹介した『えんま大王の失敗』は
『かもとりごんべえ ゆかいな昔話50選』稲田和子 編/岩波少年文庫
に収録されています。

このお話、それぞれの特技を生かしてピンチを切り抜けるというのも好きなところです。

次回もそんなとんち話をご紹介しますので、また読んでくださいね。

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とんち研究所(とんち研) ちはる

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