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自分をつくる漫画5つを紹介しあおう!|会話ログ#3

日々の思ったこと、楽しかったこと、挑戦してみたことを、仲良しの二人【osi=デザインする人】【しづむ=漫画を描く人】が話します。

(↑ 音声版はこちら)

『自分をつくる漫画5つを紹介しあおう!』 - 会話ログ#3

しづむ:今日は漫画の話をしましょう。

osi:しましょう。

しづむ:読んできた中で、自分を作ったといえる人生に欠かせない漫画をお互いに5冊を選んできたってことね。

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(↑ osiの選んだ5作品)

漫画しづむ

(↑ しづむの選んだ5作品)

しづむ:いきますか。

osi:はーい。一個ずつ互い違いに話してみる?


■osiの1作品目

osi:1作品目は『ラブ★コン』ですね。最初に好きになった少女漫画かな。大谷っていう背が小さい男の子と、小泉っていう背が大きい女の子の話なんだけど。ヒーローの大谷がめっちゃ好きだった。色々好きなキャラってあると思うけど元祖どストライクな男子キャラだった。『ラブ★コン』ってめっちゃギャグが面白くて、初めてギャグとかで笑った漫画。『ラブ★コン』のギャグで育ったみたいな。

しづむ:笑いのツボがここからきてるってことね。

osi:大阪が舞台だから関西弁なんだよね。関西弁好きもここで発症してて…。『ラブ★コン』から関西弁が好きになった。面白いなと思って。

しづむ:関西弁好きは不治の病やけんね。

osi:ずっと好きだったなー。

しづむ:大きい小泉と小さい大谷のラブ・コンプレックスってことで『ラブ★コン』ってことだよね。

osi:ラブリーコンプレックスの略ですね。

しづむ:ラブリーなのね、失礼いたしました。じゃあ小学生の頃から趣味変わってないってことじゃん。小学生の頃に読んでた漫画って本当に莫大な影響を及ぼすね。

osi:だからそれ以降も、漫画・アニメやドラマもちょっと軽妙なギャグが入っているような作品がわりと好き。

しづむ:ベースじゃん。


■しづむの1作品目

しづむ:自分が人生に影響を与えた漫画を挙げていくと、自分が漫画を描いてる方だから、作風に影響したとかそういう観点のが多いんやけど…。

しづむ:1個目は尾田栄一郎先生の『ワンピース』ですね。今も連載されている。これ、小3か4くらいで最初に買ってもらった漫画で。これが漫画描くきっかけになったのね。

osi:へえ、一作目にして。

しづむ:小学校高学年でこの『ワンピース』のパクリみたいな漫画を描いてた。めいどさん(osiさんとの共通の友人)と一緒に。きっかけっていうところでは外せないかなと思って。

osi:始まりの作品だね。どういうところが面白いと思ったの?

しづむ:やっぱわくわくしたのかな、小学生だったから本能で読んでたけど…。今読んでもめちゃ漫画が上手い。ひきつけるのが上手いのかな。


■osiの2作品目

osi:『のだめカンタービレ』。私の漫画は人生のきっかけになったとか、考え方に影響するとかで選んでるけど…。私、大学でオーケストラに入っていたんだけど、『のだめ』を読んで憧れて入ったんだ。もともと楽器は違うきっかけで始めてるんだけど、中学・高校でひとりで楽器をやりながらずっと『のだめ』を読んでオーケストラってどんななんだろうって思ってて、大学では絶対入ろうと思ってた。

しづむ:そうだったのね、いいきっかけじゃん。『のだめ』めっちゃ面白かったよね。

osi:面白いよね!専門性とストーリーの軽妙な面白さが絶妙だよね。クラシック知らない人も読める。キャラめっちゃいるけど、みんな魅力的だもんね。

しづむ:おかしいやつがいっぱいいる。

osi:『ラブ★コン』もそうだったけど、『のだめ』もギャグがめちゃめちゃ面白い。千秋先輩のツッコミありきの漫画だから。のだめもツッコミないと死んでるし。THE クラシック音楽漫画って感じだけど、音楽というテーマと同じくらい笑いがある。

しづむ:うん。

osi:オケで出会った友達とも今でも続いてるし、『のだめ』読んでてよかったな。

■しづむの2作品目

しづむ:久保帯人先生の『BLEACH』ですね。『ワンピース』と同じく少年漫画。絵柄とかの影響が一番強いのが『BLEACH』。っていうと恥ずかしいんだけど…。『BLEACH』は、演出に比重を置いてるのよ、ストーリーの整合性というよりかは。見せ方もかなり思い切って背景をはぶいたり、大きくコマを取ったりするのよ。背景が白いと言われることがあるけど、演出を重視してるからむしろ余計なものを描いてなくて…。ストーリーは王道の少年漫画。主人公がある日力を得て戦いに身を投じていくみたいな話。

osi:なるほどね。

しづむ:キャラとキャラの関係性がめちゃめちゃ丁寧に描かれてるのよね。キャラの数とかも多いのに。例えば敵の陣営にしても、そこにある主従とか上下関係とか、キャラの掘り下げをちゃんとしてるのよ。

osi:それはいいね。やっぱり主役の二人に付随した人間関係は描かれやすいけど、めちゃくちゃキャラクターがいてもキャラとキャラの関係を描いてると「動いてるな」という感じがするね。

しづむ:そうなのよ。よくわかってるじゃない。キャラクターたちには学生時代があって先輩がいて、兄弟がいて奥さんがいて…とか、それがちゃんと描かれてるの。そこが一番好きかも。群像劇の要素がある。

osi:めちゃ読みたくなった。THE 少年漫画だと思ってた、そういう性質が隠れてると思わなかった。


■osiの3作品目

osi:矢沢あい先生の『Paradise Kiss』。『パラキス』。矢沢あい作品の中で挙げるとしたらこれみたいな感じ。『NANA』とかね、『ご近所物語』とかも全部好きだけど。愛蔵版持ってて定期的に読み返す。まず、なんかね、おしゃれ。そこが好き。常におしゃれじゃん、出てくるキャラが。だからこれを読んだら、なんでもない日とかもちゃんと好きな服着ておしゃれしよう、っていうモチベーションになる。

しづむ:なんて素敵なの?それ。

osi:あとは『パラキス』だとみんな矢沢芸術学院(服飾科)の学生で、好きなことを頑張ってるじゃん? 主人公の紫も最初は受験ノイローゼになってたけど、ジョージたちに出会ってやりたいことをやっていくみたいな話だから、私も好きなことを仕事にしようとして頑張ってるときもあったし、そういうときに背中を押してくれる。頑張ってるじゃん、漫画の中のみんな。だから自分もがんばんないとな〜みたいな。こいつこんなにやってんだぞ? って。そういうときに読むと薬になる作品。

しづむ:なんていい話なの?それ。素敵ね、なんでもない日にもちゃんと好きな服着ようって。

osi:思える。かわいいんだよな。実和子ちゃんとかもかわいいじゃん、みんな絶対いちごのにおいのシャンプーを使いたいと思ったはず。パラキスも群像劇というかそれぞれの関係性が深く描かれるからそういうところも好き。

しづむ:なんかこんなに聞いてたらめっちゃ読みたくなるね。

osi:お互いの読みたくなるね。いい企画だな。…企画って言っちゃった。

しづむ:いい機会だな。


■しづむの3作品目

しづむ:『BLACK SAD』。この漫画知ってる人あんまりいないと思うんだけど…画像検索してほしいな、雰囲気がわかるから。

osi:えっ?  猫?

しづむ:そう、猫。海外の漫画で原作と作画の人に分かれてる作品。スペインの人かな。登場人物がみんな動物が擬人化された姿で、それが面白いなと思って手に取ったんだけど。面白くない? ディズニーで動物のキャラがたまにニヒルな顔つきをするときがあるじゃん、あの感じがある。

osi:かっこいいじゃん。表情が豊かっていうか。

しづむ:話はアメリカを舞台に、主人公の探偵である黒猫の男が、自分の昔の恋人が殺されたところから始まってその謎を追っていく。すごい「大人だな」と思ったのよ、読んだときに。初めてこういう大人な漫画に出会ったっていうところで、ずっと心に残ってて。読み返しすぎて本が壊れちゃったのよね。

osi:しぶいね。

しづむ:一言でいうと「ハードボイルド」。死んでしまった恋人との思い出を振り返って、あれは人生でいちばんいい時だったな…なんて中年の主人公が言ってるの、大人! って思わん? この挙げてきた作品の中だと異色なんだけど。

osi:こんなのが出てくるとは。

しづむ:ハードボイルドなディズニー。


■osiの4作品目

osi:『虫と歌』と『25時のバカンス』、2冊なんですけど。『宝石の国』の市川春子先生の短編作品集。「私の好きなものはこれです!」っていう感じの、好みがぜんぶ詰まってる作品。『宝石の国』も宝石が人のようなものの形をしてしゃべったり、月からくる敵とされてるものと戦ったりする話で、設定が面白いと思うんだけど。石・鉱物が擬人化してるから。そういう不思議な世界観が詰まってて、設定がSFチックで。指が落ちたらそれが植物みたいに育って、人になったものとの交流とか、海の小さい生き物が体の中に入っていって…みたいな話とか、体が崩れていって…とか。短編集からいっぱいお話が入ってて、ぜんぶ非日常的な話なんだけど、親しみがあって…。なんかね、市川春子先生の作品にはずっと宮澤賢治みを感じてる。

しづむ:なるほど!

osi:短編にはキャラクターがそれぞれ出てきて、キャラクター同士が相手に何かしてあげたいとか守りたいとか、感情はシンプルっていうか、重いけど直球的な感情で動いてるストーリー。それがぐっときてすごい好き。絵もかわいいし。

しづむ:うんうん。

osi:これ私ね、プレゼントしたいなって思うくらい好きなんだけど。

しづむ:え、マジ? ちなみに私今Amazonのワンクリックで今すぐ買うの上に矢印があるんだけど。

osi:すきだとおもう、しづむさん。不思議な設定の中の人間的な感情っていうのが面白くて、切ないけど読んだ後「はあ…」ってなる。

しづむ:日常漫画じゃないファンタジーだからこそ引き立つ感情の描写とかあるじゃない、そういうことね。

osi:創作意欲が刺激される。これが好きって感じ。こういう物語が思いついたら素敵だろうなって思う作品。

しづむ:私の中で「宮澤賢治みを感じる」がかなりキラーワードなんだけど。これちょっと決済させていただいていいすか。

osi:よろしくお願いします。『宝石の国』より好き。


■しづむの4作品目

しづむ:穂積先生の短編集、『式の前日』。ここで「こういう漫画描きたい」が確定した感じ。現代を生きてる人の感情の機微とか人間関係とかを丁寧に描く漫画。短編集だからめっちゃ読みやすいし、いいわよ。絵もいいわよ。あったかい話だけど、押し付けがましくない。ファンタジー要素もありつつ基本的に日常を描いてるんだけど、見せ方がめちゃめちゃ上手いんだよな。

osi:ファンタジー要素もあるんだ。

しづむ:あるやつもある。でも、突飛じゃないというか。さっきの短編集とも通じるんだけど、結局描いてるものは人間の感情とか。

osi:なんかさやっぱ、創作する上で目指すものってあるじゃん。そういう作品ってことね。しづむさんにとって。


■osiの5作品目

osi:最後はね、『おいしい関係』。ちょっと昔の漫画、リアルタイムではないんだけど。主人公の藤原百恵が、すごいど素人だったけど、立ち往生したときにたまたま入ったレストランでシェフを目指していくっていう大まかなストーリー。主人公の百恵ちゃんが私にとってまぶしい存在、理想の女性像っていう感じ。いるだけで周りを明るくする。どんな人にも常に愛を持って接するっていう感じの人で。こういうタイプ嫌いっていう人もいると思うんだけど、私はこんなふうに生きられたら楽しいだろうなっていうか、いろいろできそうだなって。理想像がこの主人公。

しづむ:ほう。

osi:料理界って男性社会な感じで描かれてて、その中で百恵ちゃんの明るさとグルメさでどうやっていくかという面白さもあるんだけど。料理の世界で女性でやっていく境遇と、自分の境遇がちょっと重なって。周りはみんないい人たちなんだけど、周りの三つ星シェフたちは圧倒する技術とかびっくりさせるものを作っていく。その中で百恵ちゃんは基本的に人を幸せにする料理を作りたいっていうのを悩みつつも見つけていく。そういうのがいいなぁと思って。私も仕事する上で人が喜ぶようなことがしたいって思ってやってるから、色々見失いそうなときにこの作品を読むと、百恵ちゃんも頑張ってるから私も信じて頑張ろうと思える。生き方の指針みたいな作品。

しづむ:百恵ちゃんおしゃれじゃない? 今、表紙眺めてるんだけど。

osi:そうなの! 服もかわいいの。昭和の服っぽいんだけど全部おしゃれ。それも楽しみで読んでますね。

しづむ:矢沢あい作品にもちょっと通じるかもね。

osi:食事も大事にしようと思える、これ読むと。今まで自分が作った料理って信用してなかったんだけど、これを読むと「自分の好きな味を作れるのって自分だな」と思って、もうちょっと料理頑張ろうかなって思える。

しづむ:なるほど。

osi:百恵ちゃんが片思いしてる相手の織田さんって人もすごい素敵でしづむさんも好きだと思う。

しづむ:マジ? いつこの作品に出会ったの。

osi:わりかし最近? 仕事はじめる前後かもしれない。だから自分とリンクしてて。

しづむ:人生の転機とか考え方の変わる時に寄り添ってくれる作品があるってめちゃめちゃ最高じゃん。


■しづむの5作品目

しづむ:最後のは直近の作品なんだけど、和山やま先生の『夢中さ、きみに。』。めちゃめちゃ話題になってた。『女の園の星』の方ね。同人誌で描かれてた作品がもとになった本。私が漫画を描くことにすごく自信がなくなってた時期があったのよね、まあ今もわりとないんだけど…。そんなときにこれを読んで。和山先生が自分の好みを描いてらっしゃる。ちょっとボーイズラブ要素とかもあって、かなりニッチだと思うのよ、作品の感じが。それが受け入れられてるじゃん、今。それって、(先生が)好きなことを突き詰めた結果というか、突き詰めていいんだ!って思った。好みで描いてたら、それを超えて何か伝わるものがあるんじゃないのかと思って。絵がめちゃめちゃ上手いところとかも好きなんだけど。

osi:独特だけど上手いよね。癖になる感じだよね。

しづむ:けっこう衝撃だったよね。時代も感じた、こういう漫画が受け入れられることに。これ読んで、「好きなもの描こう」って純粋に思った。描きたいなって、理想としてね。私これ読んだときはファンレター書いて送ったのよ。

osi:え! すごい。

しづむ:送った。ありがとうと思って…。こういう漫画が描きたいなと思うものの、これもその1つかもしれない。私があげたやつってこういう漫画が描きたいなとかばっかりなんだけど、ついこういうチョイスになる。

osi:そうなるでしょうね。


おわりに…

osi:やー、面白かった。

しづむ:面白かったね。めちゃめちゃosiさんが笑いを重視してるのも面白かったけど。

osi:そう、私結局笑いを重視してるんですよ、何事も。

しづむ:新鮮じゃない? 私たちは付き合いも長いし漫画の話もけっこうしてきたけど、改めてこうやって5つ挙げてみて。

osi:知らなかった思いじゃないけど、そんなことがあったんだ…なんて。これ書くの楽しかった、考えるの楽しかった。

しづむ:なんか不思議とほぼ「自分史」って言っても過言じゃない感じになったね。漫画読んできてるから。あと5つ聞いて思ったのが…「通ってきた道、ぜんぜんちげ〜」と思って。

osi:それは思った。それがなんで仲良くなったんだ。

( そして席を立つふたり… )

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