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子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)と妊活 ② 体外受精・採卵

※ 子宮内膜症を患う妻と、夫(検査結果異常なし)が体外受精に取り組んだ一例の話です。経過は前回、前々回と記載しています。

卵巣チョコレート嚢胞の発見から不妊治療に至るまでに、病院A(結婚前に利用していた病院)、病院B(新居の地域の病院)を経て、病院C(高度不妊治療に力を入れている個人病院)に辿り着いた。

病院Cの院長に、内膜症や卵巣チョコレート嚢胞(左右ともに約5cm)の状態を内診してもらい、タイミングや人工受精を飛ばして、早期に体外受精を行うことを勧められた。家で夫と病院から配布されたDVDで説明を受け、体外受精に取り組むことにした。

実施にあたり、夫は一体どのあたりで納得してくれたのだろうか。

コロナ禍の真っ只中、産婦人科病院での診察は妻のみが受けられた。夫は何事も合理的に考えるタイプではあるが、いきなり「体外受精をしたほうがよい」なんて、会ったこともない医師からの勧めをすんなりと受け入れられるものだとは思わない。ひょっとしたら、私は自分が思う以上に切羽詰まった表情をしていたのかもしれない。

体外受精の方法はいくつかパターンがあった。大きくは、高刺激(卵巣にたくさん刺激を与え、一度に多くの卵子を採取する)か、低刺激(自然周期か服薬で身体に優しいが採取できる卵子が少ない)の2つである。てっきり、方法は自分で選ベるものだと思っていたが、私の場合は卵巣チョコレート嚢胞の大きさを踏まえ、高刺激で行っても採れる卵子が少ないとのことで、クロミッドによる服薬の低刺激療法を行うことになった。

後ほど別の記事にまとめようと思うが、体外受精を行うにあたって、職場の上司(社長も含め)に説明をした。治療のスケジュールが読めず、急遽、会社を休む可能性があること、服薬や注射の影響で体調不良になる可能性があること。妊婦もいて、様々な状況の社員を抱える職場ではあったため、表面的な理解は一応得ることができた。いや、逆に「するな」とは言えない世情なのだろうか。

私が取り組んだ「クロミッド法」は、クロミッドという薬を服薬し、卵胞の育成を促す。卵胞が育ってきたら、排卵直前に自己注射を打ち、卵胞を最大まで増大させる。自己注射の針は思ったよりも小さいものであった。(夫は針を見て「これ刺すの?痛そう」と震えていたが。)お腹への皮下注射であったため、贅肉(笑)がいい仕事をしてくれていた。それでも痛いことには変わりないけど。事前に病院で練習もさせてもらっていたこともあり、決められた時刻ちょうどに、無心になって思い切って針を刺した。また、排卵を直前まで止めるのに、ボルタレン座薬の使用もあった。自分で座薬を刺すのは初めてで、なかなかうまくいかず、注射よりもこちらに苦戦した。

排卵直前の内診では、卵胞は4つ育ったようだった。多いのか少ないのかは分からないが、低刺激では1〜2個採れたら上出来だと医師に言われた。内診でチョコレート嚢胞が相変わらず5cm前後でドカンと存在しているのを見ると、4つの卵胞が見えても卵巣がちゃんと機能して卵子が作られているのかどうかはわからなかった。

採卵当日を迎えた。

前日から絶飲食。手術は午前中を予定していた。病院に着いてから最後に診察をしてもらい、排卵してしまってないかの確認。大丈夫だったようなので手術着に着替え、自分のベッドで待っていた。希望して静脈麻酔による全身麻酔での手術にしてもらったため、点滴をブスッと刺したまま待機していた。病院によっては麻酔なしで行うところもあるようだが、病院Cは全身麻酔の希望を聞いてくれた。

手術直前に、看護師に連れられて最後のトイレを済ませ、手術台に上った。

なるようにしかならないのは頭では分かっていたが、とても心細く、手術台の上で怖くて泣きそうになった。全身麻酔も初めてだ。これからまた採卵するたびに、手術台に上ってこの恐怖と戦わないといけないのか。結果が出なかったらどうしよう。採卵の担当は院長だった。院長から「体調どうですか」「今から準備していきますね」といった会話をしてもらったが、不安いっぱいでか細い声での返答になっていたと思う。

看護師の「麻酔入れますよー」という声かけで、とうとう全身麻酔が注入された。

目を閉じていると光がだんだんと薄れ、本当に眠りにつくような感じだった。目覚める瞬間は、事前に予習していたような「数を数えて意識が途切れて、目覚めた瞬間終わっていた」というよりも、数時間寝ていて夢から醒めたような感じだった。目が覚めても少しウトウトしていたが、まだ手術台にいたようだった。卵胞から卵子を抽出する施術は、無事に終わっていた。スッキリ目が覚めたわけではなかったが、下半身でパンツとナプキンを取り付けてもらっているのを感じた。看護師が数名で私をストレッチャーに運んで、入院のベッドに移乗しているのも分かった。

病院のベッドで再び1時間ほど眠っていたが、尿意で目が覚めた。初めての施術で、どれだけ安静にするのが正解か分からず、ナースコールを押すこともできず、尿意をその後2時間ほど我慢したまま横になっていた。看護師がようやく見にきてくれたので起き上がってトイレに行くことにした。鈍痛のようなものを感じ、ナプキンには少量の出血がついていて、施術は行われていたのを改めて実感した。麻酔の量が少なかったのか、約3時間の安静でスッキリとした体調になっていた。

その後、看護師に「採卵はどうでしたか?」と聞いた。医師に確認してもらい、4つの卵胞のうち2つは空胞であったこと、卵子はとりあえず2つ採れたことを聞いた。何もなかったわけではないことに、ひとまず安堵した。

採卵がうまくいけば終わりではない。その後、夫のと受精させ、胚盤胞へと成長させていくという過程がある。(病院Cの方針は、胚盤胞まで成長させてから移植するというものであった。)次の日から職場に復帰し、休憩中に病院から数回連絡があった。2つとも受精したこと、受精したのち適切に分割したこと、2つとも「胚盤胞」に成長したことを伝えてもらった。

「胚盤胞」というのは、子宮内膜に着床する直前の状態の受精卵のことである。全ての卵子が胚盤胞なるわけではなく、そもそも変形など卵子が受精に向いた状態でなかったり、何らかの原因で受精しなかったり、受精しても適切に分割しなかったり…様々な事情で、「胚盤胞」まで辿り着く卵子は少ない。2つの胚盤胞ができたことに対して、病院Cの院長も後の診察で「これはビギナーズラックだ」と言っていた。

採卵をしたその月は、クロミッドの使用もあり子宮内膜が薄くなっているため、移植は見送られた。2つの胚盤胞は凍結され、来月の移植を待つことになった。

次の月、移植をする予定であったが、血液検査で、とあるホルモンの値が足らず、移植は見送りになった。(ホルモンを補充する方法もあったが、医師は勧めなかった。)仕事も一日休んでしまい申し訳ない気持ちになった。

翌々月、ホルモン値も水準を満たし、ようやく一度目の移植をすることになった。体外受精を決意してから、約3ヶ月が経っていた。

移植当日までに、夫が回らないお寿司屋さんに連れて行ってくれたのは、いい思い出。







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