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冬を愛する人

3月になった。もう今年も2ヶ月が終わってしまったのかと思うと月日が過ぎ去る早さを痛感する。

北海道も一気に春めいた気温になり、雪解けも進んでいる。
今年は雪が少なく、雪解けも早そうだ。

ぐっと凍れる朝の冷たい空気がもう懐かしくも感じている。


先日雪の降る中、犬たちと散歩に行くストーリーをインスタで載せた所、関東に住む友人から

「こっちはもう桜が咲き始めているのに、北海道はまだまだ冬ですね」

と送られてきて、ちょっと不思議な気持ちになった。

というのも、道民は3月に雪が降っていても周りでは

「もう春が来るね」と話しているからだ。

こちらの感覚では雪=冬ではなくて、気温だったり風の匂いなどから春を感じている。

でも関東に住む人から見たら雪=冬でこちらはまだまだ寒いと思うのだろう。

同じ「春」でも他方では桜が咲き、北海道では雪が残る季節が「春」になる。

都会に暮らす人たちも北海道の田舎で暮らす人たちも、桜や風、気温などやはり周りの自然から季節を感じている。

全然違う「春」なのに、僕たちは同じ時間を生き、同じ「春」を感じているという矛盾がなんだかとても不思議に思えたのだ。

僕は冬が好きだ。
なぜかはわからないけれど、昔から秋〜冬が大好きだった。
秋生まれだからだろうか。

逆に春〜夏はとても苦手。

教員時代の記憶が色濃く残っていて、春の生暖かい風が吹くと卒業で生徒との別れ、新しく入ってくる仔犬たちの世話で忙殺される日々を思い出すからだ。

いまだにあの匂いを嗅ぐと、複雑な気持ちになる。

匂いと記憶はとても近いところにあるなと思う。

関東にいた頃は、周りに夏が好きな人が多かった。

夏に海に行ってSUPをしたり、犬たちと泳いだり、それはそれで楽しかったのだけれど、周りの人が夏が好きで冬が苦手な人が多かったから、あまり冬の良さに共感してくれる人は少なかったように思う。

日本全体で見ても、おそらく僕の方がマイノリティだと思う。

半分以上の人は夏が好き、と答えるのではないだろうか。

日本人にはハワイや沖縄のような南国が人気のことからもそんなような気がする。

そのことに、僕は大きくはないが小さなストレスを抱えていた。

冬の寒さを楽しむ人があまり周りにいなかった。

でも北海道に来てそれが一転した。

確かに寒さは半端じゃないし、北海道民でも夏が好きな人はいる。

だけれどTwitterやInstagramで新しく繋がったカメラ界隈の人たちやここで出会った人達は冬が好きな人がとっても多いように思う。

寒さが厳しい分、美しい景色が広がっていることを皆知っているからだ。

寒いからこそ美しい、厳しいからこそ美しい、何もないからこそ美しい。

そんな何処か簡素て寂しげな冬に暖かさを見出す人たちが北海道にはたくさんいる。

Twitterでも3月になって春が近づいてくると、「冬が終わってしまう」とか

「春が来ちゃった」と言った冬を名残り惜しむようなツイートが目に付く。

リアルでももう冬終わるね、春だねとあちこちから聞こえてくる。

みんな無意識のうちに季節の移ろいを感じている。

そんな光景を見るたびに、僕はああ北海道にきて本当に良かったと思えるのだ。

関東の友人たちももちろん今でもとても大切な仲間だ。それはこれからもずっと変わらない。

けれど、人には必ずその人に合う土地があるのだと思う。

住む場所は大切な自分の人生の大部分を占めるからこそ、自分の肌に合った土地を選びたい。

僕にとって北海道は気候や風土だけでなく、そうした冬を愛する人たちとの繋がりを感じられるとっても大切な場所なのだ。

この土地での生活も2年を迎えようとしている。

まだ2年。もう2年。そして住み始めて2回目の冬が終わろうとしている。

次に来る春の匂いより、日に日に減っていく冬の感触をまだ感じていたい。

そして僕も言いたい。

もう冬、終わっちゃうね。




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