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ふるさと

今日は朝からお墓参りに行って来た。
お盆に行けなかったので、半年ぶりのお墓参りだ。

お墓参りに行くと、いつも感傷に浸ってしまう。
それが何故なのか?

少し、私のふるさとについて語ろうと思う。



私のふるさとは、福島県のかなり山あいの小さな村だ。

私は ↓ で書いたとおり、東日本大震災の原発事故で避難を余儀なくされた。



その村は人口が少なく、電車はもちろん通っておらず、
バスも一日に3往復ぐらいしか通っていなかった。

村の中心部には保育所と幼稚園と小学校があり、
そこから500mほど坂を登ると中学校があった。

コンビニやスーパーなどは無く、小さな商店がいくつかと、
ふたつの食堂があるくらいだった。

私の家から小中学校までは10kmほどあり、
小学校3年生まではバス通学。
4年生からは、自転車の免許(通学許可証みたいなもの)を取り、
自転車で通学をしていた。



私の両親と祖父は働いていて、農業もしていたので、
土日も夏休みも無くずっと働いていた。

私は三人兄弟の真ん中で、兄と弟がいる。

そんな私たち兄弟の子守りをしてくれていたのは曾祖母。
畑仕事をしながらご飯の準備などをしてくれたのが祖母だ。


私のふるさとは山の中にあって、周りは田んぼと畑ばかりだった。
田んぼのそばには小さい川が流れ、魚が捕れることもあった。

周りに何にも無かったけれど、星がとても綺麗だった。
母と祖母は花が好きだったから、庭にはいろんな花を植えていた。
今頃の季節になると、コスモスがたくさん咲いたものだった。


私の家は曾祖母が生まれた頃に建てたそうなので、
私が中学生の時には築90年以上経っていた

上水道なんてものはなく、山からの湧水を溜め、
そこから家に水を引いていた。

その綺麗な水は、とても冷たくて美味しかった。

近くには清水(しみず)と呼ばれる湧水が流れる場所があったので、
遠くの町から車でよく水を汲む人が来ていた。


家は平屋で、玄関を入るとすぐ茶の間。

茶の間の右側に台所とお風呂があって、
台所の奥の渡り廊下を通った先に離れが二間あった。

茶の間の左側には中間(なかま)があって、そのまた左にお座敷があった。

ただトイレが外にあったのが不便だった。

夜は私は祖父母と中間に、曾祖母はお座敷に寝ていた。
両親と兄と弟は離れに寝ていた。
なぜ私が祖父母と寝ていたのか、よく分からないのだけれど、
たぶん私がばあちゃん子だったからだと思う。


狭い家だったけど、家族8人仲が良くて楽しかった。
でも兄弟喧嘩はしょっちゅうだった。



その地域でのお店は、家から1㎞ほど先にひとつだけポツンとあって、
私の母方の曽祖父夫婦が営んでいた。

うちの曾祖母が愛煙家だったので、タバコを買いに行くように頼まれ、
母方の曽祖父からよくポテトチップスを貰って帰ったのが良い思い出だ。
(今は子どもがタバコを買うことはできないけどね。)


曾祖母は私が中1の時に94歳で亡くなり、
祖母は私が結婚した後83歳で亡くなった。

母方の曽祖父母も、私が高校生になった頃には亡くなったと思う。



私が20歳になる頃に、台所と家の隣の牛舎を取り壊して新しい家を建てた。

新しい家は二階建てで、トイレも水洗でもちろん洋式。
お風呂はユニットバスで、タイルの割れ目から、
ミミズやナメクジが出て来ることも無くなった。
(これだけはイヤだった。)


27歳で私は結婚して一旦家を出たのだが、事情があって家に戻り、
離れを少し改装して夫婦で住むことになった。



そしていろいろあって、その約8年後に起こったのが東日本大震災。

見た目では何にも変わらないのに、
放射性物質で汚された山・田んぼ・畑・湧水。


私たちは、普通に暮らしていただけだった。

なーんにも悪いことなんかしていない。

悲しいけれど、そこに住むことはこの先も無い。



◇◇◇◇◇◇

今、私たちはふるさとから数十km離れた町に住んでいる。

両親と兄と祖父は健在で、祖父は102歳になった。
(弟は私より先に結婚して家を出ていた。)

両親たちは両親たちで家を建て、
その隣に私たち夫婦が家を建てた。


今の住まいは車で3分の距離にコンビニ、
5分の距離にスーパーがふたつもある。

とても便利で快適な生活だ。

ただひとつ、水道の水がとっても不味いことを除いては。



私のふるさとに、今は何も無い。

家は解体してさら地になっている。

田畑の痕跡は無いが、両親がこまめに
草刈りに行っているので荒れてはいない。


近くの川は、変わらず流れている。

そして、飲めない湧水も変わらず湧き出している。


コスモスの花はもう咲かないけれど、
でも夜には満天の星が輝いているはずだ。

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