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Youtubeスパチャランキングで日本のVtuberが上位を独占した件に関する所見

Youtubeのスパチャランキングで日本のVtuberが上位を占めていると話題になっている。スパチャとはスーパーチャットの略で、Youtube Liveで配信中にチャット欄で「特別な目立つチャット」として投げ銭をする機能。

まず前提条件として

・このランキングは外部からデータを取得して計算したものでYoutube公式発表ではない(ただし数値はほぼ正確かと思われる)

・あくまで「スパチャ」の額のランキングであって収益化全体のものではない。

収益化はスパチャ以外にも動画の広告費(こちらのほうが規模は圧倒的に大きい)、メンバーシップなどがある。このランキングはスパチャのみなので、そもそもそれ以外にメンバーシップの定額費、また動画アーカイブの広告週収入も別途あるはず。

なおこの金額は「ファンがYoutubeに対して投げた金額」、つまりグロスであり、これが配信者まで入ってくるわけではない。ここから

-Youtubeの課金手数料(30%)
-入金はドルのため日本円への為替手数料
-事務所に所属している人はそのマージン

が引かれ、さらに日本の所得税がかかる。所得税は結構高い。個人で雑所得だと半分近く行かれる。

ランキングはざっくりまとめると以下のような感じ。
1.桐生ココ
2.縦横研究所(海外)
3.潤羽るしあ
4.湊あくあ
5.兎田ぺこら
6.葛葉
7.宝鐘マリン
8.UnitedGamer(海外)
9.M.S.S Project
10.因幡はねる

もともと日本国内でのVtuberのスパチャの集計は見ることができるサイトがありVtuber内の順位自体は予想通りなのだが、意外だったのは、スパチャの世界ランキングでも日本のVtuberが独占していたこと。世界には登録者数、再生数でははるか上がたくさんいるのでVtuberはマニアックでマイナーな存在というイメージだった。

スパチャはYoutubeのライブ配信がないと存在しないものなので、他国に比べるとYoutubeでライブ配信に力を入れてるのが日本くらいで世界では少ないってことなのかと。
北米など他国はYoutubeは編集した動画をアップする場所で、ライブ配信プラットフォームにYoutubeを使用するのはあまりメジャーではないのかもしれない。僕がライブ配信専門メディアとして僕が知っているのはTwitchくらいですが、他にもありそう。中国ではYoutubeはアクセスできない建前なので、ビリビリ動画での投げ銭はもっとすごい数字が出ているんだろう。

このランキングを見てまず思うのは、Vtuber事務所の中でもホロライブが突出していて、そもそも「Vtuberのライブ配信」という流行を発明した「にじさんじ」が葛葉以外は入っていないこと。実はこの要因ははっきりしていて、にじさんじにはスパチャ読みの文化がないから。唯一トップ10に入っている葛葉のように、プロの配信者として意識高い人はにじさんじでも
・配信中に投げられたら反応する
・最後にスパチャよみタイムを設ける
ってのははちゃんとやってるが、全体的に事務所全体としてはそういったことをやる人は少数派の印象。
おそらくホロライブはスパチャ読みを義務としてルール化していると思われる。

※ちょっと話はずれますが、こういった「スパチャ読み」を強制しないなどのにじさんじの配信内容へのルール縛りが少ないという特徴はある意味大きなメリットでもある。テレビ番組のような専門の構成作家を用意できないVtuber運営において、にじさんじだけがライバー自身が企画立案し箱全体を巻き込んだ大型企画を実施できているのは、この自由さによるものが大きい。

また箱の象徴である月ノ美兎委員長がそういう「稼ぐ」活動にそこまで前向きではないのもあり(彼女のはあれだけ人気があるのにいまだにメンバーシップをはじめていません。おそらく意図的でしょう)スパチャ読みを敬遠するにじさんじの雰囲気の形成に影響している。彼女はニコニコを見て育ったことを公言しているのでそういう「ムード」にはなじめないのかもしれない。なみににじさんじの配信者としては「プロ意識が強い」という印象の鈴原るるもスパチャへの反応、スパチャ読みはしない。

ただ芸能人の狩野英孝さんもスパチャに反応するのは否定的という趣旨の発言をしていたので、日本全体に流れる感覚、また自分の配信をコミュニケーションや垂れ流すものではなく「作品」と捉えている人からすると、スパチャに反応するのは途中で流れを中断するという意識になり否定的になるのかもしれない。

さて上位を席巻したVtuber事務所の「ホロライブ」。
桐生ココ氏は少し前の配信で、自己の月収が「4ケタ万円」に達したことを報告していたので(これはいかにもアメリカ出身らしいな、と。日本人は自分の収入を言いたがらないので)、もともと彼女のスパチャ金額はかなり多いものと推定されてた。先程スパチャ金額が多い人はスパチャ読みをする、という話をしたが、ココ氏のような上位の人気者はただ機械的に読むだけではなく、スパチャのメッセージを丁寧に読み、それと会話する、ということまでやっている。これは実はけっこう大変なことで彼女くらいのファンの規模になるとスパチャ読みが数時間たっても終わらない、ということもザラだったりする。なんなら本編より長いんじゃない、くらい。

スパチャ読みタイムになると特にお金を払っていない無料視聴ユーザーはさっさといなくなり同時接続数は激減するのだが、逆にそこからが「濃いファンとの交流タイム」になっており、たくさんの人に見られたほうがいい一般視聴者向けの時間とはまた異なった趣旨の配信となっている。ただ機械的にスパチャ読みすればいいという従来のフェーズから、スパチャ読みをいかに「熱いファンとの濃密なコミュニケーションの時間にするか」、というのが鍵になっているのだ。そして優秀な配信者はよくスパチャを投げてくれたユーザーの名前をすべて覚えている。「なじみの客」になったというわけだ。

ホロライブの配信者は、スパチャを読む前にいったん配信を「締める」。いったん終わりを宣言することで、通常の視聴者はそこで帰っていいよと伝えて、でも配信自体は切らない。エンディングテーマを流して終わった後にスパチャ読みタイムが始まる。これは非常によくできていて、Vtuberライブ配信の
・なるべくたくさんに見てもらいたい一般視聴者向けの配信
・後半のファンとの濃密な交流時間
を両立させているというのは非常に興味深いビジネスモデル。
(ちなみにコーナーを分けても配信を切らないのは、システムの都合上「枠」を取り直すとURLが変わってユーザーも配信者も面倒くさくなるから)

このニュースを見て、Vtuberの興味のない人は「オタクコンテンツに貢ぐ悲しい日本人」を語る人も出てくるだろうが、おそらくそれは的外れ。なぜかというと1位の桐生ココ氏も含めホロライブのVtuberは「海外ユーザーに人気がある」ことが特徴だから。ここ最近のホロライブのYoutube登録者数の増加は海外需要によるものが大きい。

この点では「日本人向けのサブカルトーク」が得意な委員長には不利なところ。僕の勝手な主観だと日本国内のVtuber男性オタク需要は登録数50万人で頭打ちになってしまう印象で、そこから先は海外需要かキッズ需要を取り入れないと厳しい印象。任天堂ゲームやパワプロ甲子園とか見てるのはおそらくキッズじゃないかなあ。

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