愛車に「EVトゥクトゥク」を選んだ理由。
家から少し離れた小学校に通うことになった息子。
バスを降りてから、大人の足でも徒歩15分という、少し不便な場所にある。1度一緒に歩いてみたら、30分くらいかかった。息子はとってものんびり歩く。
とりあえず1年生のうちは送り迎えをしよう、ということになったけれど、わが家には車がない。
自転車では30分。体験授業のとき、息子の送迎で2往復してみた。1日のうち、2時間も自転車をこいだことになる。送迎を終えて自転車から降りると、オマタがジンジンと痛かった。これを毎日続けるのは、私のオマタに優しくない感じがした。
となると、車を買うしかないか・・・
そう思ったとたん、
なんだか両肩がドッと重たくなった。
私も父ちゃんもペーパードライバーなので、慣れるまで練習が必要だからだろうか。
駐車場代やら税金やら車検代やらガソリン代やら、お金がかかりすぎるイメージがあるからだろうか。
貯金がどのくらいあれば安心なのかは人それぞれだとは思うけれど、わが家の目安は100万円だ。
100万円あれば、なんだか安心。
なにか突発的なことがあっても対応できる。
100万円を切れば、ちょっぴり節約する。
そんなバランスで生活をしている。
3人家族。
日々のごはんの食材は、特にケチらない。
休日には、気楽なお店で外食する。
ちょっぴり遠出したりする。
1年に1回くらいは近場で旅行する。
欲しいものはおおよそ買える。
海外に行きたい欲がほとんどないし、そこまで高価なものを食べたいとも買いたいとも思わない。服もユニクロとか無印で十分満足してしまう。
そんな「ザ・庶民的」な感覚のわが家。
「お金持ち」ではないのかもしれないけれど、このバランスを保つようになってからは「お金が足りない!」と思ったことはない。
むしろ、豊かになったなぁ、と思っている。それは数年前にお金がキツイ時期を経験しているからかもしれないけれど。
でも、息子がオルタナティブスクールに入学することになって、学費が私立並みにかかるようになった。
その上「車を持つ」となると、絶妙に保っていた豊かなバランスが、おそらく崩れることになるだろう。
車を持てば、もちろんいろいろ便利なことも多いかと思う。
でも車を持ったせいで、
日々のごはんの食材をケチったり
外食の回数を制限しないといけなかったり
遠出するときもお金のことばかり考えたり
家族旅行に行けなくなったり
ほしいものを我慢しないといけなくなるなら
車は欲しくない。
車がない生活に慣れているわが家にとって「車を持つ」ということの優先順位はかなり低いのだ。
そんなわが家に、救世主があらわれた。
「EVトゥクトゥク」だ。
車以外に何かいい乗り物ないかな、とネットサーフィンをしていたときに見つけて、「これだ!」とピンッときた。
家で充電できる。
3輪で3人乗り。3人家族にはぴったり。
普通免許があれば運転できる。
屋根もついてるから、雨の日も大丈夫。
バイク置き場におけるから駐車場代よりも安いし、車検も必要なし。
この乗り物に乗っている自分を想像すると、
スッと両肩が軽くなった。
まだまだ歴史の浅い乗り物なので、口コミやネットの情報が少なすぎたから、ちょっぴり不安だったけれど。
この体が軽くなる感覚にまちがいはないような気がしたから、この乗り物を信じてみることにした。この乗り物にカケてみることにした。
納車待ちの休日、
私は原付きで、父ちゃんと息子は電動自転車で、近所のニトリとマクドに出かけた。
わが家では近所に出かけるとき、
「現地集合」スタイルなのだ。
「ねえねえ、EVトゥクトゥクの名前決めようや。」
マクドでポテトをポリポリかじりながら、私が提案すると、息子と父ちゃんが口々に名前案をあげていく。
「とらえもん!」
息子が発したそのリズムに「いいね!」をして、私と父ちゃんで「虎衛門」という漢字をつけた。
黄色だから「虎」。
「門」には「家」っていう意味があって、「衛」には「守る」という意味があるから、
虎衛門は「家族を守ってくれる」乗り物だね、きっと。
そんな「意味」まで、つけ加えた。
虎衛門に乗り始めて、約1か月が経った。
運転方法は原付きとほとんど一緒だけれど
2輪と3輪はやっぱりちがう。
コツをつかむまでは怖くて怖くて、
道路に車が少ない、早朝の3時半から6時くらいまで、2日間練習をした。
そして無事、息子を小学校まで送迎することができるようになったのだけど。
予想以上に、周りの反応がすごかった。
朝、虎衛門のいる駐輪場に行くと、おじちゃんが5人ほど群がっていた。そして、質問攻め。
虎衛門に乗ろうとすると、通りすがりのおばちゃんに、必ずといっていいほど話しかけられる。そして、質問攻め。
小学校に到着すると、子どもたちが「わ〜!」と集まってくる。そしてジャンケンしたりグーチョキパーで別れましょ、などをして、1列に並びはじめた。子ども2人ずつを後ろに乗せて、小学校の周りを一周する。全員が乗り終わるまで、それをくり返す。
「このたびは〜トゥクトゥクにご乗車いただきまして〜まことにありがとうございます〜それでは良い旅を〜」
そんなナレーションをしてくれる女のコまで現れて、まるでアトラクション。
信号待ちをしていると、バイクに乗ったおばちゃんがス〜ッと隣に停まって、「それ、なんていう乗り物なんー?いいねー!」と話しかけてくれる。
反対車線からやって来る、大型バイクに乗ったイケイケのおじちゃんと目が合って。親指を上に立てて「いいね!」を送ってくれた。そして、とっさに親指を上に立てて「いいね!」を返した。私はそんな外向きな性格ではないので、ちょっぴり照れたけれど。
そんなこんなで。
思った以上の街の人達の反応に、はじめはびっくりしたけれど、なんだかだんだん楽しくなってきた。
知らない人と話す機会が増えて、なんだか街に知り合いが増えた気分。
虎衛門のおかげで、新しい学校のスタッフさんや子どもたちと話すきっかけが増えた。虎衛門のおかげで、「はじめまして」の緊張がゆるんだ。
ある雨の休日。
虎衛門がやって来る前、雨の休日は家にこもることが多かった。
「ていうかさ。雨だけどさ。虎衛門いるから、3人でお出かけできるんちゃう!?」
なんだかテンションがあがって、傘をさして虎衛門のいる駐輪場まで向かう。
わが家のマンションの駐輪場には屋根がなかったのだけど、まるで虎衛門が来るのに合わせるかのように、古くなった駐輪場の工事が始まった。そして、屋根がついた。車体にとっていいのはもちろん、雨の日に屋根があると濡れずに乗り込むことができる。虎衛門、なんかすごい。
少し離れたイオンまで行って、買い物をして、オヤツを買って、帰ってくる。
「3人でいっしょに出かけてさ、いっしょに帰って来られるのって、めっちゃいいね〜!うれしいね〜!」
今まで「現地集合」だった家族にとって、一緒にでかけて一緒に帰ってくることは、しみじみと幸せだった。
後部座席には2人座れるけれど、肩と肩がぶつかるくらいに狭い。でもその狭さだって妙に温かい。
虎衛門のおかげで、またわが家にぴったりの「豊かさ」が増えた。
でもよくよく考えてみると、
「EVトゥクトゥクがぴったりだ!」という家庭は、かなり限られてくるような気がしている。
まず、3人家族よりも多い家族構成だと、車の方がいいと思う。つまり「ひとりっ子」家族限定、ということだ。
なかなか揺れが激しいので、車の安定感に慣れている人は、慣れるまでは不安を感じるかもしれない。
そして、充電器は22キロもある。一軒家でコンセントが駐車場にあればいいけれど、マンション住まいであれば、家までカートでガラガラと運ばないといけない。それがなかなかめんどくさい。
あとはまだまだ情報が少ないので、なにかあったときにGoogle先生に聞いても、いまいち知りたい答えを教えてくれない。
そして、値段が高い。維持費は安いけど、車体は安い軽自動車並みだ。
でも、今のわが家にとってはジャストフィットしている。
もちろん未知な乗り物に対して不安がないといったらウソになるけれど、虎衛門を迎え入れて始まった新しい生活は、なんだか楽しくて豊かで温かい。
この確かな気持ちを大切に。
今日も虎衛門に守られながら丁寧に丁寧に、
息子を学校まで運ぶとしよう。
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