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#87 コロナ禍理想の働き方とはー乖離する経営者と従業員の考え

先日の日経新聞に、SalesforceのCEOのインタビューが載りました。タイトルは「コロナ後、出社で上下緊張」というタイトルでした。割愛しながら紹介せていただきます。

「世界の企業がポストコロナの働き方を探っている。夏以降に日本の顧客を含む百社余りのトップと面会したところ、誰もが柔軟な働き方のあるべき姿を話題に挙げた。
”2020年は恐怖の年だった”と振り返る。先行きが見えず、人々は勤務先にとどまろうとした。”2021年は一転して世界的な大離職が起きた”多くの人が働く目的を見つめ直した。激動を経て、今は経営陣や管理職と従業員の間に緊張関係が生じている。経営者は、オフィスに戻るよう求め、従業員は抵抗している。
経営者は、企業文化の喪失を不安視するが、従業員は通勤の負担減や家族との時間が増えるといった利点を失いたくない、両方とも大切で世界中の企業が新しい時代の働き方を探っている。

日経新聞記事より一部割愛

というものです。確かに、コロナによってリモートワークや、会議もZoomを使用するなど、家で仕事をする機会が増えました。そのおかげで、会社内でどれだけ無駄な時間を過ごしてきたのだろう、無駄な時間があったのだろう、そういったことに気づいた従業員、私も含めてですけれども、とても多かったと思います。

一方で経営者からすると、やはり従業員が直接働いている姿を見ないと落ち着かない、不安になる、そういった考え方があるのではないかと思っています。

私は仕事をしていて思うのは、使い分ければいいのと思っています。
報道という仕事の場合、会社に出社しないと絶対に放送はできません。
そもそも放送設備はお台場にありますし、以前、デッドラインフル活用というタイトルでアップした内容でもありますが、締め切りギリギリまで、みな原稿を書いています。映像もOAに合わせて系列局から送られてきたり、もしくは現場の取材班から送られてきたりしますので、さすがにリモートワークですることは不可能です。

ただ会議であったり、打ち合わせであったり、そういったものはリモートでいいと思っています。

以前、夜のニュース番組を担当していたとき、コメンテーターさんに、夕方ごろ会社に来ていただいて打ち合わせをして、それから5時間ぐらい、社内で待機してもらっていました。途中、途中で待機してる部屋にお邪魔して「こちらでどうですか」など打ち合わせをしていたのですが、今では完全にリモートになっています。

電話のスピーカー機能を使って、こちら側は複数いるのですが、コメンテーターさんはご自宅にいていただいて、打ち合わせをする。そして、出演自体も、コメンテーターさんのスマートフォンを使ってスカイプ中継で結ぶ。そうして完全にリモートが成立していますし、そしてコメンテーターさんが伝えたい内容、これはお台場に来ていただいたときと全く同じことをリモートで実現することができています。

ただ、これが継続できたのは視聴者さんの意識の変化もあります。コロナ禍で各局共にリモート出演が増えましたが、やはり体裁は悪いです。スタジオに来ていただいて、席に座って、正面にきちんとしたカメラがあり、マイクをつけて、としたほうが当然綺麗に写りますし、音声もクリアです。

ただ、コロナ禍になりリモート出演が増えたことによって、その演出方法に視聴者が慣れたと思っています。各テレビ局、ほぼ同じタイミングでリモートによる出演をはじめました。結構、横を見ていたりするんです。横を見るというのは、他局を見ている、ということです。いよいよ、他局さん、アナウンサーも個室から放送するようになったぞ、とかコメンテーターがリモートで出演し始めたら、そろそろうちも切り替えるか、など他局の状況を気にしています。

後輩を隣で見ていたからこそ気づいたこと

先日、後輩の企画原稿をチェックしていました。やはり直すところたくさんあるのですが、これをリモートでできるかどうか。

確かにパソコンがあれば、僕がチェックして直した上で送ることはできます。何往復かすれば、原稿は出来上がります。ただ、社内で彼の顔を見ながら原稿のやりとりをしていたときに、私が指摘した点に対して、やや不服そうな顔をしたことがありました。つまり「僕はそういう考えではない」もしくは「ぜそういう構成に直すのかが理解できない」おそらく、そのような表情だったと思うのですが、これはやはり間近で見ていないとわからない

私自身「あれ、なんかこいつ、ここの点において不機嫌そうな顔してるな」と思うと「遠慮なく言って」と、冗談ぽくでも聞くことができます。そうすると、きちんと話してくれる。そして、本人も心から納得して原稿が気持ち良く直っていく。そしてお互い納得した上でOAに向かっていける。これは、やはりリモートでは無理でした。

だから何事も使い分けなんです。

従業員に対して、経営者が過剰に出社することを求めすぎているのではないかと、従業員の立場としては思います。そこまで監視・管理されなくても、やるべきことはやるし、できている。

あとは給料の問題もあるのではないか、と考えています。
大抵ほぼ全ての企業において、経営者の給料の方が従業員より遥かに高いですよね。私達、従業員側の立場からすると、それだけもらっているのだったらば、給料があるのだったらば、別に会社行っても無駄ではない。ただ、私達からしてみれば、この程度だったら自分の時間がもっと欲しい。通勤時間ももったいないし、会議と会議の合間の待機の時間も勿体ない。なんなら会議ももっと早く終わるのではないか、と思ってしまう。

もし今、自分の給料に月五十万円プラスするから週五日、完璧に出社してくれ、と言われたら、おおむね多くの人が納得するのではないでしょうか。

あとは家族環境にもよりますよね。今、自分の娘は七歳、小学二年生です。日に日に成長していくし知識をつけていく。父親としては焦りを感じることがあります。もっと一緒の時間を過ごしてあげないと、もっと一緒に遊ばないと、すぐ大きくなってしまう、という焦りです。さすがに中学生はギリギリ、高校生になったら一緒にキャンプ、なんて行ってくれないと思っています。今、小さなうちに、ありったけの愛情をいろいろな形で注いであげたい。そうなると、やはり一緒に過ごす時間が必要です。通勤の時間が自由だったとしたら、もっと娘とゲームができるな、ワンコの散歩一緒にいってあげられるな、とか思うわけです。

何か大切にしたい時間が、きっと皆さんそれぞれあると思うのですが、リモートにすることによってその時間を捻出することができたのではないか、と思っています。だからその辺りも、経営者側がきちんと考えてあげるべきなのではないかな、と。なぜなら、気づいてしまいましたから、従業員がそうした時間の大切さを。

alesforceのCEOの記事後半にこのようにあります。

”顧客の間でも意見は様々”としつつ、テイラー氏は”出社を曜日で強制するのは浅はか”と持論を述べた。出社は週三日から四日で、営業チームは互いをねぎらうために出社する。期末に集まる仕事や役割に応じて、オフィスに来る意味があり、来てよかったと思える日に設定すべきだ。

その通りだな、と。日本の場合、とやかく形を作りたがりますよね。「何曜日の何時に会議」「何曜日の何時に打ち合わせ」そこは絶対に動かさない。そこに向かってみんな予定を決めていく。

もっと、柔軟でいいのではないのかなと。テイラーCEOが言う通り、もっと柔軟性を持たせて、それぞれが気持ちよく働ける環境を作っていくことが今後のコロナ禍、そしてウィズコロナの時代に求められているのではないかなと考えています。

(voicy 2022年10月11日配信)

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