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#73 数百万人以上が見ることになるアナウンサーの服の選び方

今回は「服選びのルール」についてお話します。アナウンサーは果たしてどうやって服を選んでいるのか。

基本的にはスタイリストがつきます。男性も女性も、もちろんつきます。
男性の場合、僕の場合はですね、春夏用で5着、そして秋冬用で5着。
こちらが用意されます。ただ、用意されるというのは、勝手に用意されるわけではなくて、10着ずつぐらい、僕の好みや希望を聞いた上で用意してくれたものの中から選び、自分専用のスーツになります。

あとは、ワイシャツとネクタイ。こちらも何パターンか用意してもらった上で、その中から気に入ったものをオンエア前に着ます。

ただ、バラエティーと報道ではだいぶ違うんですね。

というのも原則報道では、衣装を無償で借りるということはできません。
バラエティーの場合は、クレジットスーパーで衣装メーカーやブランド名をテレビに表示させることができるため「提供」してもらえるケースがありますが、原則報道ではそれをしていません。というのも、そういった貸し借りが発生したときに、じゃあその貸してくれた企業で不正不祥事が起きたとする。それをきちんと報道できるのか、という疑いの目を向けられることもありうるわけです。

いわゆる利益供与であったり、便宜供与、そういったものが発生しないようにしています。だからちょっと服選びから外れますが、映像提供や取材協力に対しての金銭の授受というものもありません。これは原則です。

なのでそういった意味で言うと同じテレビ局でも衣装に関する認識であったり、その扱われ方というものはだいぶ変わってくるんですね。

報道担当ならではの衣装選び

ではその報道では、僕たちはどうしているのか。男性の場合って意外と簡単なんですよね。同じスーツ着ていてもネクタイを変えるだけで、だいぶ印象が変わります。そして用意しておくのも簡単です。

女性の場合が難しいですよね。女性アナウンサーももちろんスタイリストがついていますが、僕はいまプロデューサーという立場にいますので、今週はこの衣装でいきます、とスタイリストさんから連絡が来ます。これには、二重の意味があります。まず一つはかぶっていないか。週末の夕方のニュース番組では、女性が2人のアナウンサーがいます。この2人の衣装がまずかぶらないかどうか、それを気にする必要があります。

さらに、ものすごく明るいポップな感じの衣装があったとして、その週末に取り扱う予定のニュースがものすごく深刻なもの、もしくは犠牲者が多く出ているニュースだった場合、あまりにもその見た目の印象とかけ離れる可能性が出てきます。なので、それもチェックします。そういった二重の意味合いでのチェックを経て、女性のアナウンサーの2人の衣装が決まります。当然それぞれの好みも反映されます。

もう一つ、男女に共通しているのは、いわゆる喪服のようなものを用意しているということです。僕の場合は、ずっと報道をやっていますので、突然の訃報に接する可能性があります。また、凄惨な事件や事故の現場に立つ時、明るい色合いのスーツとネクタイってやはりないですよね。なので、僕の場合は、真っ黒なスーツと黒ネクタイは常に会社に用意してある状態、女性も一緒です。特に報道を担当している方々は、そういった深刻なニュースであったり、人が亡くなるニュース、そういったものにちゃんと対応できるような黒っぽい色合いの服装を用意しています。

政治家もそうだといいますよね。政治家の方々も常に喪服を用意してあると聞いています。

この辺りが、普通とはちょっと変わった感じなのかな。でも皆さんもお持ちですよね。ただ気をつけなくてはいけないのは、そんなに年がら年中、喪服を着るわけではないので、いざ必要となったときのために、どこかのタイミングで着られるかどうか確認しておく必要がありますよね。

結婚式の司会者用のスーツを20年愛用

久々に着るものといえば、アナウンサーになってから、僕は80組ぐらい結婚式の司会をしているんですけれども、初めての司会は大学生のときの先輩でした。司会をするときに思い切って伊勢丹で司会者用のスーツというものを買いました。

厳密に言うと司会者用というわけではなくて、今後もおそらく司会が増えていくだろうから、伊勢丹のメンズの売り場の方と相談してどういったものならいいのか選んでもらいました。フォーマルな格好って、それぞれ時間帯であったり、出席する場所によってだいぶ変わるんですよね。例えば、燕尾服。宮中晩餐会とか、あとは大臣の認証式とかで皆さん見ることがあると思うんですけれども、さすがに宮中晩餐会に行くことはないだろう。燕尾服はちょっと大げさすぎるんじゃないか、フォーマルすぎる、ということでパス。

そしてタキシード。でも実は、タキシードって着る時間が決まってるんですよ。それも20年前に伊勢丹の方に教わったのですが、タキシードは基本的に夕方から夜にかけての礼装なんです。結婚式は夜にあるとも限りません。昼間にやることもありますよね。昼間にタキシードを着ていくと、この人、実は基本を知らないんじゃないの、と思われても恥ずかしいので、タキシードもパス。

ということで僕が選んだスーツは上は普通のいわゆるスーツに見えるものの、下がグレーのパンツ。この組み合わせによって、全時間帯もいけるのです。

上下で15万円ぐらいしましたが、だいぶ元は取ったんじゃないでしょうか。
ただ、自分も40を過ぎてだいぶ周りで結婚式の司会をやってほしい、という人も少なくなりました。大学の先輩、後輩、仲がいい人たちはほぼ全員やらせてもらいましたし、口コミで繋がっていった友達、知り合いもやりました。

最近はまわりもほとんど結婚したので、司会していません。最も近いもので六、七年前でないでしょうか。政治部の記者をしていたとき仕事仲間だった女性の方。ずっと彼氏との恋愛相談を聞いていました。「私、本当にこの人と結婚できるのかな」みたいな悩みだったんですね。なので、もし結婚することになったら僕司会するよ!と約束したのですが、その1年後ぐらいでしたでしょうか。無事ゴールインとなりまして、僕も約束を果たしたのが最後でした。

一方で私服はどうしているのか。こだわってる人すごい多いんですけれども、皆さんにとっての役にも立たない話で恐縮なんですが、僕は全くこだわりがないんですよね。

セールとアウトレット以外で多分買ったこともないです。許されるならば、ジャージとかでずっと過ごしていたいタイプなんです。

(voicy 2022年8月30日配信)

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