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#81 LGBTであることに15年気づかなかった同僚と新コーナー

数年前、フジテレビのネット放送局で「LGBT専門のコーナー」をやりました。これを企画したのがそもそもLGBTの当事者でした。最も衝撃だったのは、僕、十五年以上一緒に仕事しているのに、全く気が付かなかったのです。十五年経ってからの彼女自身の言葉でいうカミングアウトに、驚きつつ
、一緒に仕事をずっとしてきたので、僕自身の性格やMCとしての番組の進め方など彼女はご存じだったので、僕に番組の企画を提案しくれました。

僕はLBGTに関しては何も勉強もしていないし、そうした人たちと話をした経験もないので、全くもってわからない世界だったのですが、彼女自身が友人などのゲストを呼んで、僕に何を聞いてもいい、知らないが故に逆にそうしてほしいと。性的少数者であるからこそ、そうではない人たちがどういう疑問を持っているのかとか、もう何でもいいから自由に聞いてほしい。そういうスタンスで始めました。

本当にたくさんの方が出演してくださり、ありがたかったです。

ディレクターである彼女自身が一番心配していたのは、彼女自身身の周りにLGBTの友達や知り合いがたくさんいるのだけれども、果たして本当に出演してくれるのか、という点でした。しかし、番組を始めてみたらなんのことはなく、たくさんの方がぜひ出たい、ぜひ話しをしたい、と出演してくださいました。

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そのうちの一人の男性の方。この方の話がとても心に残っています。僕自身はもちろん差別的な感情も何もないし、LGBTのみなさんは全くもって僕らと同じ、プラスの感情もマイナスの感情などなく、ごくごく普通にしています。しかし、その「普通」な接し方、何気ない言動が、実は彼や彼女たちに、いろんな感情を抱かせている、というのです。これは、言われてみれば確かにそうだよな、という驚きがありました。

男同士で、例えばジムに行ったとします。お互い、終わった後に「お疲れ!」と肩を叩いたりします。終わった後に、ちょっと飲みにでも行こうよと誘うこともあります。でも、女性に対しては気安く触ることなどないし、二人で飲みに行くのも、男性同士よりなんとなくハードルがあがります。
ことと場合によっては何か特別な意味合いがありそうな気がしてしまうこともあります。タイプのひとだったらなおさらです。

でも、その方がおっしゃっていたのは、森下さんが普段するように肩を叩いたり、何気なく握手したりする、それは、私達からすると特別な意味合いになる、と。彼が強調していたのは、だからと言って何か特別なことをしてくれなくてもいい、でも知ってほしいということでした。

この番組のディレクターのように、僕が彼女がLGBTの当事者であることに十五年間気づかず、僕自身は、周囲の友達と同じように気軽に接していました。同じように、性別は男性で、でもLGBTの当事者に対してのそのような普通のスキンシップは、異性にされているのと同じ感覚なんです、と。

普通にしているが故に、特別になってしまっていたわけです。
それでは、どうしたらいいのだろうと思ったのですが、彼は別にどうしてくれなくてもいい。ただ、知ってほしい。こういう感情なんだ、と知ってほしい、ということでした。

どのうよなことでも、当事者の人たちと話し合う。これはやはり本当に大事なことでです。なぜなら、今回のケースの場合、僕はプラスの感情もマイナスの感情も、差別的な考えも全く何もなく、ただ普通に暮らしていて、普通にしていることこそが一番いいことなんだろう、と思っていましたが、当事者の方々と話し合った結果、その普通が特別だったのだ、と知ったからです。

自分が知らない世界であったり、避けていたことであったり、何も知らないな、と自分で感じている事柄があったら、もし周囲にそれを知る人や当事者の人たちがいるならば、話し合うというか語り合うというか、そういった場が必要なんだなと感じました。

(voicy 2022年9月30日配信)

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