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#21 僕がISSに行った! 仕事がつないだ感動の実話

今回のテーマは、JAXAの宇宙飛行士募集です。現在、宇宙飛行士の選考過程中です。実は今年の春、3月まで募集していました。
結果的に、なんと4000名を超える方々が応募。
今回、なぜ多くなったかというと、今までは宇宙飛行士に応募するにあたっての、条件が結構厳しかったんですね。僕も実は関心をもっていました。多くの人がなりたい、憧れの職業ですもんね。

自分が大学生のとき98年くらいかな、当時のNASDA、今のJAXAの前身ですね。宇宙飛行士を募集しました。何で知ったかというと、紀伊国屋の本屋さんに本を買いに行ったら、そこのカウンターに「宇宙飛行士募集」のチラシがあって、お!とおもい、持って帰って中を見てみました。

すると、結構ショックだったのは、条件として「自然科学系の大学を卒業していること」ってあったわけです。

当時、僕は大学生。しかも法学部政治学科。卒業していない上に自然科学のしの字もない。かすってもいない。もうその時点で、到底無理なわけですね。もちろん、他にも無理なことはたくさんあったのは承知の上なんですけれども、そもそも、基本の基本の基本。もう全く条件に達していないという状況だったわけです。

でも3月まで募集していた際の条件が、ものすごく緩和されていたのです。
身長が149. 5から190. 5センチまで。視力は1. 0以上。しかも、矯正視力でいいんです。裸眼じゃなくていい。そして、色覚もちゃんと大丈夫、聴覚も大丈夫、いわゆる健康体であれば、応募できる。ということで、一気に応募者が増えたんですね。

なぜこうしたかというと、やはり条件が厳しいともちろん応募できる人も限られてしまうので、他にももっと優秀な人がいたんじゃないか、となる。ということで、今回大幅に緩和して門戸を広げて、たくさんの人!応募してください!そういう方針に変えたんですね。

この度、応募した人数は4127人。書類選抜の合格者数は2266名ということで、半分ぐらいの人がまずは書類を通過したわけです。この内訳がまた夢があるんですよ。この4000名のうち、なんと20代以下が483名。今回の合格者のうち21%を占める人たちが何と10代ですよ。そして、30代が一番多いんです。およそ50%半分近くを占めているんです。でも、60代以上の方も23名、書類選抜に受かってる。パーセンテージで示すと1%しかないんですけれども、それでも23名の方が書類を通過しているんです。

僕が大学生の頃、応募して合格したのが山崎直子さん

ちなみに、自分が大学生のとき、1998年に募集がかかった際に宇宙飛行士として採用されたうちの1人が、山崎直子さんでした。

直子さんが宇宙に行ったのは2010年です。途中で、スペースシャトルの爆発事故があった関係でミッションがだいぶずれたんです。それで採用されてから12年の月日を経て、直子さんは宇宙へと旅立ちました。

僕は2009年から2013年までアメリカ・ニューヨークに特派員として赴任していたのですが、NASAの取材をしたいとずっと思っていました。
そうした中、山崎直子さんが訓練のために、アメリカ・テキサスのNASAの訓練センターに滞在、というかお引越しになり、現地で訓練を受けることになりました。

ちょうど、ニューヨークに赴任する数ヶ月前に日本で直子さんにインタビューをさせていただく機会がありました。でも、それは全メディア、新聞もテレビもインタビューするのですが、個室で1社それぞれ5分とか10分時間を与えられるのですが、僕が当時アナウンサーだったのでさせてもらいました。
その数ヶ月後にアメリカに渡りました。JAXAを通じてですね、ぜひ直子さんのご家族、そして訓練の様子などを取材させてもらいたいとお願いしたんです。
そしたらOKが出ました。

なんと、直子さんが僕がインタビューしたときのことを覚えてくださっていたんですね。

それもあって、密着取材をさせてもらうことになりました。

ご家族の様子であったり、当然NASAにもメディアとして入って訓練の様子を取材させてもらいました。ご縁をものすごく強く感じました。あと自分も運が良かったなと。あのタイミングでニューヨークに赴任していたからこそ、直子さんと、その訓練期間が重なってNASAで取材をすることができた。

当然、打ち上げも見に行きました。その直前に、電話をくださいました。本来ならば、ご家族としか話さない、そういうタイミングで電話をくださって。もうこの時点で、取材じゃないんです。個人的な思いしかありません
。「本当に頑張ってください!いってらっしゃい!地球で待ってます!」そんな会話をして、彼女が宇宙へ飛び立って、15日間にわたる国際宇宙ステーション・ISSでの、いわゆる任務を終えて地球へと戻ってこられたわけです。

地球に戻ってきてから心を込めて「お帰りなさい」と電話で伝えしました。

おかげで、こうしてもう10年の月日が経っても決して忘れない思い出となりました。

NASA・スペースシャトル

地球に戻ってから渡してくれたもの

その後、続きがありまして、直子さん一家がNYに遊びに来てくださいました。食事の時に、直子さんが「森下さん、実は渡したいものがあるんです」と言うんです。

そのとき彼女が渡してくださったのは、1枚の写真。

僕がNASAの取材をしているときに、彼女がその施設の中で1枚写真を撮ってくれていたんです。なぜ写真を撮ってくれたかというと、直子さんはISSでの写真撮影も担当されていたので、その練習も兼ねて大きな一眼レフカメラで僕の写真を撮ってくれていたんです。

それをなんと彼女は、国際宇宙ステーションにまで持っていって、その写真を地球をバックに撮影し、プレゼントしてくれたんです。しかも、NASAが粋なんですよ。ちゃんと証明書を発行するんです。「森下知哉の写真は、このミッションで、何日から何日の何日間に渡ってISSに行ったことを証明する」と。つまり僕の写真は、あの国際宇宙ステーションに行ったんです。

もうね、感動して泣いてしまいました。そんなサプライズがあるなんて。

今ももちろん大事にしています。

(voicy 2022年4月25日配信)

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