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母に逢いたい~わたしの祖母の物語③

やがて仕事も切上げ、皆それぞれの家に帰る事になりました。

楯身から母を嫁にほしいと云われました。

三年すぎても石坂よりはなんのたよりもなく、かはいそうに思った祖父母は妾しをつけて楯身の嫁にしたのです。

やがて父は母をつれて野付牛に帰る時、妾しを手放す事の出来ない祖母は、学校に行く迄は育てる事にして引取、父は母をつれて野付牛に帰って行きました。

妾が六才をむかへた時、野付牛の父から黒部旅館を建るのに棟梁として来てほしいと手紙がきて行く事に成りました。

三人に見送れ別れをおしむ祖父の汽車が発車を知らせたとたん、人ごみの中から突然汽車にとびのった妾しわ、おどろく人々祖母と叔父の叫ぶ声も耳にはいりません。

母さんの所へ行くんだ、母に逢える、早く逢いたい、只々それ一ぱいで祖父のひざにもたれてねむる六才の妾しでした。

だがその時から妾しの波乱の人生の初まりました。


※ほぼ原文ママ。
※句読点は読みやすさを考慮して追加。
※写真はイメージ。


【登場人物】
妾し(幸子):この物語の主人公。T.Yamazakiの祖母

ノヱ(小野ノヱ):幸子の母。
小野康太郎:幸子の祖父。
ノブ(小野ノブ):幸子の祖母。
武士(小野武士):幸子の叔父、ノヱの弟。

楯身(楯身友蔵):小樽築港で小野康太郎が出会った野付牛の若者。幸子の養父となる。


野付牛:今の北海道北見市。参考:北見市 - Wikipedia
黒部旅館:北見市の老舗旅館、ホテル黒部。1902年創業。参考:ホテル黒部

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