シベリアでお湯でない生活5日目 根性でバスタブに湯を張る
お湯が1週間近くでない。
こんなことが日本で想像できるだろうか。ロシアで年に何度かお湯がでなくなるのは数十年前から変わっていないそうだ。全く進歩していないのか。
競争がない
新しいシステムを考えてお湯を止めなくても暖房を切り替えられるようにしよう!
という考えがロシアにないのはソ連の名残なのかもしれない。それなら多少高くてもお湯が止まらない水道会社を選ぼうということは不可能なので、競争はない。そのシステムを作ったところで自分が儲かるわけでもなんでもないわけだ。
ラップがパリっと切れるように研究開発したり
シールが剥がしやすくなっていたり
とんでもなく滑らかに書けるボールペンを作ったり
ずっと角がとがりつづけるというシャーペンを作ったりするのもそこに競争があるからなんだと改めて思う。細かい改善を少しでもしていこうという努力をするかしないかは、その民族の性格も関係するが、やはりそれによって自分の生活や地位が上がっていくかは大事な点だ。
無理やり浴槽に湯をはる
毎日電気ケトルで沸かした少量の湯で凍えながら身体を洗うことが耐えられなくなってきたため、こうなったら意地でもバスタブに浸かってやろうと思いがんばって湯を張ることにした。
ロシアのバスタブは基本的に日本のものよりずっと大きく、160cmくらいは長さがある。というわけで腰までつかるためには相当な量の湯を溜めなければならないのだ。
そして蛇口をひねると絶望的にキンキンに冷えた水がでてくる。そのまま飲んでもおいしいくらいによく冷えている。なぜこんなに水道水が冷たいのかは謎だ。地下がよほど冷えているのだろうか。
電気ケトル2台を駆使し、2L沸かしてはいれてみるものの、中々温度が上がらない。
キンキンに冷えた水を常温にするのにもこんなに大量の熱湯が必要になるとは途方もない作業だ。何度いれても冷たいまま。
電気ケトルはすぐに湯が沸くが2Lとなると少し時間がかかる。その間にどんどん浴槽の温度も下がってしまうから、1Lずつ少しずらして沸かした。湯を投入するスパンを短くした方が冷めにくいのではないかという考えのもと、どんどん熱湯をそそぎまくる。
あまりにも途方もない作業に「こんなに時間と労力と電気をかけて湯を沸かしても風呂に入るのはほんの数分なんだよなあ」と絶望し始めたが、ここまできたら湯につかって思う存分頭から湯を被らなければ気が済まない。
ここで投げ出したら今までの時間全てが無駄になる
と自分を奮い立たせながら何度も何度も湯を注ぐ。
20回ほどは沸かしただろうか。ようやくつかっても凍えないほどに温まった。
何とか腰までつかれるほどの湯舟。疲れ果てながら入って、「やってやったぜ!」と大きな達成感を感じながら湯につかり、鍋で頭から湯をこれでもかとばかりにかけまくった。
こんなにいっぺんに大量に湯をかけまくってもなくならない、なんて贅沢なんだと感動していたのも束の間だった。
臭い
最悪なことに、今回のために引っ張り出した大家のくれた安いロシア製電気ケトルの質が悪すぎて沸かすとプラスチックの溶けたような臭いがするのだ。水に注いでいたから湯を張っていた時はあまり感じなかったが入ってみると臭う。
プラスチック臭にまみれたものの、久しぶりに身体がよく温まりストレス解消になった。となるべくポジティブに考え、数十分かけて入れた風呂も入浴時間は10分にもみたず終了したのだった。
いつになったらでるのだろう。お湯が出たら朝からでも湯船に入ると決めている。
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