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お金の魔力

『お金』
いいことばですよね、みなさんお金は好きですか?
僕は大好きです。

だって資本主義の中で生きてるんですもん、そりゃお金は好きだよね。
たぶんですが、嫌いな人はまずいないと思います。

というわけで今回はみんな大好きなお金のお話しですが、お金の持っている魔力って理解してますか?
お金の本質、お金が僕らに与える影響と言い換えてもいいかもしれません。

※余談
ちなみに『そもそもお金ってなんなの?』という話しまでしようとすると、とんでもないことになります。
なぜならその道の専門家ですら『お金とは?』という質問に対する明確な答えを未だに出せずにいるからです。
最近だとMMT(現代貨幣論)とかも話題になりましたよね、興味のある人は調べてみてください、きっと頭が???になります。
ちなみに僕の個人的な考えとしては『お金は記録』だと思っています。
閑話休題

このお金が持つ魅力的な魔力、これについてちゃんと理解した上で使ってあげると膨大な成果をあげることが出来ますが、逆に間違った使い方をしてしまうと、この魔力に身を焼かれかねません。

お金というのはただの言葉です、文字です。
もしくはコインだったり、紙幣だったり、通帳に書かれた文字だったりするかも知れません。
これらはあくまでもツールです、手段です。
大事なのは、それをどう扱うのかです。

●例え話し
ここに1本の包丁があったとしましょう。

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この包丁で人を刺し殺してみます、悲劇の幕開けです。
悪いのは包丁でしょうか?
違いますよね、裁かれるべきは犯人です。

包丁その物は悪くありませんし、包丁を作った人も、包丁を売った人もそれぞれの努力を果たしただけで、誰も悪くありません。
ここで悪いのは、犯人です。

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次はこの包丁で美味しい料理を作ってみるとどうでしょう、幸せな家族団らんの始まりです。
偉いのは包丁でしょうか?
違いますよね、頑張ったのはお母さんです。

包丁その物は偉くありませんし、包丁を作った人も、包丁を売った人もそれぞれの努力を果たしただけで、今回頑張ったのはお母さんです。

言葉も、道具も、それ自体に良し悪しはありません。
重要なのはそれを使う人間と、使い方。
なんの為に、どうやって、それを扱うのかです。

▼お金の魔力

おそらくですが、こんなnoteを読んでいる人はお金が欲しいのでしょう。
僕は欲しいです。
が、まずここに落とし穴があります。

『なんの為にお金が欲しいんですか?』

大抵の人はなんとなくこう考えています、お金を稼げれば幸せになれる、と。

これはある意味間違いじゃありません。
実際、各国で様々なお金と幸福度に関する調査研究はされていて、ある一定額までは年収が上がれば人生で感じている幸福度は同じように上がっていきます。

https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.pdf
ソース:2019年5月、内閣府発表「『満足度・生活の質に関する調査』に関する第1次報告書」

政府の出した長ったらしい文章を読んで楽しいと思う人もそうそう居ないでしょうから、私が乱暴に要約すると

『いろんな物別に幸福度を調べてみた』
・全国平均 5.89点

〇年齢別
・15~24歳 5.85点
・25~34歳 5.66点
・35~44歳 5.48点
・45~59歳 5.41点
・60~89歳 6.36点

だいたいこんな感じの調査が性別、年齢、性別×年齢、地域、収入、学歴、健康などなど、いろんな物と幸福度の相関性を政府が調査した資料になります。
今回はお金の話しですので、お金に関係した部分を見てみましょう。

満足度・生活の質に関する調査

画像では世帯年収が2000万以上3000万未満までは主観的満足度がじわりじわりと上がっていますが、そこから先は返って満足度が下がってますね。

※余談
そしてここがちょっと面白いところですが、それに対して回答者数は300万以上500万未満が頂点で、そこから順調に下がり続けますが1億以上になると3000万以上、5000万以上よりも多くなっています。
一定の割合までは個人の才能や努力で年収を伸ばすことは出来ますが、その先へ行くには個人の力では限界があるんですよね。

なので壁を突き抜けるためには個人の力に頼るのではなく、自分が居なくても回る『お金を生む仕組み』を構築して、それを量産いく必要が出てくるわけです。
超富裕層の壁、いつか超えてみたいもんです。
実際年収の分布を調べてみるとおおよそ山型になっていますが、一番上位層になると少しだけ増えていたりします。√を左右逆にした感じですね。
閑話休題。

やや古いソースですが、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンさんの発表した論文でも似たような結果になっていますので、信ぴょう性は高いかと考えられます。
(ソース:https://www.pnas.org/content/107/38/16489.short)

僕は英語が苦手なので翻訳サイトや解説サイトをいくつか見たのですが、この調査を乱暴に言ってしまうと

・45万人を対象に調査
・年収と幸福感をアンケート
・年収と幸福感の相関性を調査

ざっくりとこんな感じの調査研究です、結果は年収7万5000ドルまでは年収の増加とともに幸福感も上がっていきましたが、その先は横ばいになったというものでした。

※『ダニエル・カーネマン 7万5000ドル』でググってみるとたくさんのサイトが出て来ますが、割と曲解している所も多いので一応注意しましょう。
ここでの幸福感は「昨日は幸せでしたか?」と言った、具合に今この時を幸せに感じるかどうかを聞き取りしたもので、人生そのものを幸福に感じているかどうかの調査ではありません。

基本的に幸福度というのは収入に比例して伸びていきますが、それと同時に孤独を愛するようになることも統計で出ていたりします。
収入を上げる事にかまけることで、お金以上に幸福度に強い影響力を持つ人間関係などが疎かになってしまうわけですね。
その結果、精神的な自衛のために『私は孤独になってしまった』と認識するのではなくて『私は孤独を愛しているのだ』と現状と自分を肯定する思考に寄っていくそうです。

ちなみにお金をいっぱい稼いでいなくても、お金のことを考えるだけで人間は人と会いたくなくなる傾向も確認されています。
例えば友達に遊びに行かないかと誘われてとても楽しい気分になったのに、予算の話しになった途端気持ちが乗らなくなった経験はありませんか?

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あいつは仲のいい友達だし、行けばきっと楽しいのも分かってる。
でも、その為に幾ら払わなければならないという思考になった途端、行きたい気持ちが一気に萎えてしまった…

嗚呼、私は何て賤しいんだろう。なんて不義理なんだろう。
そんな風に考えて、落ち込んでしまった経験のある人も多いんじゃないでしょうか。

大丈夫です、それ、あなただけじゃありません。
人間はお金のことを、お金を払うだけじゃなくて、自分の時給や預金残高について考えるだけでも、他人を避けるようになる性質があります。
普段何気なく使っているお金は、実は日常的に、僕らの精神や行動にものすごい影響を与えているんです。

これを知らずに、何となくお金と付き合っていくのか、ちゃんと知っておくのか。
稼ぐにしても幸せになるにしても、お金の上手な使い方や、お金との付き合い方を知っておく必要があるわけです。

僕はこれをお金の魔力と勝手に命名しています(タイトル回収)

ちなみに破産しやすいのは800~1000万あたりと言われることが間々ありますが、その理由の一旦もこの孤独じゃないかなと個人的に考えています。
(あくまで個人の思考です、誰か反対意見や肯定意見があればどしどしお寄せください)

まず収入が上がると、支出は増えます。これは性格を問わず統計的に既に確認されています。
内向的な人は外交的な人に比べて緩やかではありますが、それでも支出は増えます。

しかしその後収入が目減りした場合、まともな人ならそれに合わせて支出を抑えようとしますよね?
でも外交的な人、特に見栄っ張りだったり、自分に自信のない人は逆に支出を増やす傾向が確認されたそうです。
収入が減ったから、支出を増やす。普通に考えて謎ですよね。

これはどういう事かというと、外交的な人は自分で自分をどう思うかより、他人が自分をどう思うかに重きを置くからです。
乱暴に言ってしまえば外交的な人というのは、自分から人が離れていくのが耐えられない性分なわけです。

収入が下がってくると
『お金持ちキャラだったのに、稼げなくなってきた…人が離れていくんじゃないか!?』
と不安になってしまうんですね。

そうするとどうなるのかというと、ロンドン大学の統計調査によると、なんと収入が高かったころよりも使うお金は増えて、しかも生活に必要のない、いわゆる贅沢品が増える傾向にあったそうです。
(参考:https://mikaitabi.com/okane-heru)

じゃあ収入が上がり続ければ大丈夫!
と考えた人もちょっと注意しましょう、先にも書いた通り収入が上がってくると孤独性が高くなってしまいます。
その結果、やはり他人を引き止めるために散財という手段に出てしまう人が少なからずいます。

ちなみに内向性の高い人にはこの傾向はなかったそうですが、代わりに内向性の高い人は同時に協調性の高い、乱暴に言ってしまえばNoを突き付けるのが苦手な割合が多いので、人からのおねだりや、皆持ってるよ系のお誘いに注意しましょうね。

お金という物は、良かれ悪しかれ様々な影響を私たちに与えます。
これが、お金の魔力です。(再びタイトル回収)


▼お金が欲しい『欲』より強い、失う『恐怖』

『お金』
いいことばですよね、みなさんお金は好きですか?
僕は大好きです。

だって資本主義の中で生きてるんですもん、そりゃお金は好きだよね。
たぶんですが、嫌いな人はまずいないと思います。

『無料』
これも良い言葉ですよね、皆さん無料は好きですか?
僕はこれも大好きです。

だって資本主義の中で生きてますもんね、そりゃ無料も好きだよね。
たぶんですが、嫌いな人はまずいないと思います。

でも、何でみんな無料がこんなに好きなのか考えたことはあるでしょうか。
実は人間には『得をしたい』という感情よりも『損をしたくない』という感情の方が強いという特徴があります。

●例え話し
賭けをしましょう。
コインを投げて表が出たら1万円を差し上げます、裏が出たら1万円を頂きます。
イカサマなどは一切なく、純粋な運任せの勝負です。

さて、この賭けに参加しますか?

勝率は50%
リスクとリターンは同等
冷静に考えてみれば、文字通り五分五分ですから参加するかしないかは、人数を増やしていけば半々になるはずですよね?

しかし現実ではまず間違いなく、不参加の人が大多数になります。

では次にこんな賭けをしましょう。
コインを投げて表が出たら1万円を差し上げます、裏が出たら9000円を頂きます。
イカサマなどは一切なく、純粋な運任せの勝負です。

さて、この賭けに参加しますか?

今度も勝率は50%
そしてリスクよりもリターンの方がわずかですが上回っています。
冷静に考えてみれば、参加した方が得をする可能性は高い勝負です。

しかし現実には、やはり不参加の人が多くなるでしょう。

では表なら1万円を差し上げます、裏が出たら5000円を頂きます。
イカサマなどは一切なく、純粋な運任せの勝負です。

ここら辺になってきて、ようやく参加を選ぶ人が増えてきます。

表なら1万円、裏なら1000円になってくると、流石に参加の方が多数派になってくるかも知れません。
これを心理学の言葉では損失回避バイアスと呼びます、人間はリスクを大きく捉えがちな傾向があるのです。

ちなみにこの性質を損失回避バイアスと名付けたのは、さっきも登場したダニエル・カーネマンさんです。2度目の登場ですね。
ダニエル・カーネマンさんいわく、リスクを取るには損失額に対して2倍の利益が必要だそうです。
(参考:https://japan.pimco.com/ja-jp/insights/economic-and-market-commentary/behavioral-insights/look-left-recognizing-and-managing-loss-aversion-bias)

●バイアスとは?
心理学や統計学に馴染みのない人には聞きなれない言葉だと思うので、一応バイアスの簡単な説明を挟んでおこうと思います。

『バイアスくらい分かってるよ!』
という人は読み飛ばして頂いて大丈夫です。


バイアス(英: bias)は日本語に直訳すると『斜め』という意味になります。
ここから派生して、統計学ではデータの『偏り』を指す言葉に、心理学では人間の持つ『偏見、先入観、思い込み』を指す言葉に使われています。今回の場合は心理学用語としてのバイアスですね。
心理学の世界ではこのことを『認知のゆがみ』という格好いい表現をしたりする場合も多いですが、我々に馴染みのある言い方をするなら色眼鏡をかけて見るという表現が一番わかりやすいかもしれません。

さて、くどいように感じるかも知れませんが、もう1度同じ質問をします。

『お金』
いいことばですよね、みなさんお金は好きですか?
僕は大好きです。

おそらくですが、こんなnoteを読んでいる人はお金が欲しいのでしょう。
僕は欲しいです。
が、まずここに落とし穴があります。

大半の人はお金が欲しいというけれど、深層心理ではお金が欲しいという気持ちよりも、お金を失いたくないという気持ちが強いのが人間です。

人間に限らず生物は『快』を求めて、『不快』を避けるように出来ています。僕たちがお金というものに惹かれてしまうのは、生き物として仕方のないことです。
だからこそ、無料という言葉は魅惑の魔力を宿して、我々はつい引き寄せられてしまうわけです。


▼有料の魔力

そこで今までとはちょっと違った質問なのですが

『お金』
いいことばですよね、みなさんお金を支払うのは好きですか?

たぶんほとんどの人が『No』と答えるでしょう。
しかし、お金はあくまで道具です。何か価値のある物と交換したり、必要なサービスを受ける為に使う為のものです。
そして望んでいようといまいと、僕たちは日常的にお金を支払わざるをえません。

さてここまで簡単なお金の魔力と、損失回避バイアスを学んできましたが、実はこのふたつを考えると『有料の魔力』が見えてきます。

●たとえ話
あなたは今とても喉が渇いています、もう喉があまりにもカラカラで痛みすら感じるほどです。
そんな時、目の前にふたつの選択肢があります。

・高級グラスの代名詞バカラのゴブレットに入ったお水 240ml/1000円
・ペットボトルに入ったお水 500mo/100円

さて、どちらを選ぶでしょうか。

多くの人はペットボトルを選ぶことでしょう、割と当たり前ですよね。
だって今欲しいのは喉の渇きを潤すためのお水であって、オシャレなグラスで楽しむ飲食体験ではありません。

損失回避バイアスを知った今ならとても分かりやすいと思いますが、お金を払うからには損の少ない選択肢を選びたいのが人間です。
言い換えるなら、お金を支払ったからには少しでも取り戻したいのが人間です。

そうなんです、実はお金を支払う事でもお金の魔力は発揮されるんです。
難しい言葉ではサンクコストバイアス、またはコンコルド効果と呼ばれるものがあります。

ビジネスとして考えると非常にわかりやすいのですが、資本主義はコストをかける事で、コスト以上のリターンを得る事で回っています。
そうやって人類は発展してきました。

しかし当たり前の話ではありますが、何でもかんでもコストをかければリターンが見込めるとは限りません。
もしそうだとしたら無限に富が生み出され続けて、世界はもっとバブリーなことになっているはずです。当然のように希望を抱いて泡と消えていったお金が世界には溢れています。

この回収できなくなったコストのことをサンクコスト、日本語では埋没費用と呼びます
平たい言い方をしてしまえば、損したお金のことです。損失回避バイアスがゴリゴリに刺激される奴ですね。

この代表的な実例がコンコルドと言う名のイギリスやフランスで共同開発された超音速旅客機で、コンコルド効果の語源になっています。


●超音速旅客機コンコルドのざっくり解説
コンコルドとは上記の通りイギリスやフランスが中心となって、1950年代から開発が始まった民間の超音速旅客機です。

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超音速とか言われても我々一般人にはピンとこないので具体的な数字で見てみましょう、wikiによると巡航速度はマッハ2.4(時速2160キロ)だそうです。
桁が違い過ぎて余計に良く分かりませんね…

これは東京⇔大阪間(401km)をわずか11分で飛行できる速度になります。

ちなみに東京⇔ハワイ(6430km)ですら3時間で着いてしまう計算になります。2020年現在でも7~9時間ほどかかるのが現実ですので、コンコルドが超音速を名乗るのも納得です。

ぎりぎりまで削った鉛筆のような尖った機首が特徴的ですが、これは余りにも速すぎて空気との摩擦熱で機体が120度近くになってしまうため、少しでも空気抵抗を減らすためのこのようなデザインになりました。
それでもやはり熱すぎるため断熱の為に窓は葉書サイズまで小さくなり、それでも熱すぎて機内側から窓を触れないほどだったそうです。

どれほど桁違いの速さだったのかが分かるエピソードですね。

1950年代当時は人々の移動が増えていることもあって、一度に大量の人間を素早く運べる、効率のいい飛行機の開発が望まれていました。
そんな世情の中、トンデモ性能で殴り込みをかけてきたのがこのコンコルドです。

さてそんなウルトラスーパースペックのコンコルドですが、ご存じの通り現在では東京大阪間を11分で飛行していません。先述の通りハワイに行こうと思ったら飛行機で7~9時間かかるのが現実です。

当初はその超性能から
・パンアメリカン航空
・カンタス航空(オーストラリア)
・JAL(日本)
などなど、世界中から注文が相次ぎました。

しかし時期は1970年代、オイルショックが世界を、そして航空機業界を襲います。
オイルショック自体はコンコルドに限らず全世界に影響を与えた大事件ではありますが、コンコルドはマッハ2.4という超音速を実現するためにアフターバーナーという戦闘機などに用いられている技術を採用していました。コイツが物凄く燃料を食うんです。

普通の飛行機と比べてどれくらい燃料を食うかというと、日本からアメリカに向けて太平洋を横断しようと思うと、途中で燃料が尽きてしまうほどでした。
更に最大の強みである速度も、離着陸の時に通常の飛行機よりも非常に長い距離の滑走路が必要になるため、そもそも発着できる空港が少ない。
他にも速度で言うならば、あまりに速すぎる為に凄まじい騒音や衝撃波を発するため、住人や建築物に被害を出すおそれがあるので海上でしか飛行できない。(でも太平洋は超えられない)
そもそも速度を出すことに特化しているため、客席は狭く、席数も100席しかないためチケットが非常に高額になってしまう。(ネットで見つけた情報によると1席100万円

などなど、多くの問題点が浮き彫りになります。

そもそもコンコルドが開発された背景は、先ほども説明した通り

・人々の移動が増えた
→だから速く運べる飛行機が欲しい
→だからいっぱい運べる飛行機が欲しい
→だから効率よく人を運べる飛行機が欲しい

『よし、コンコルドは速度に特化するぞ!!!』

という背景なわけですが、燃料費や維持費に膨大なお金がかかり、更に衝撃波や騒音や滑走路の問題で飛行できる区域が制限され、それなのに1度に運べる人数は少ない。
とてもではないですが、効率のいい飛行機ではなかったわけです。

ちなみにコンコルドにかわって、航空機業界の覇権をとったボーイング747(いわゆるジャンボジェット)の客席数は、コンコルドの4倍にあたる400席。燃費性能に関しては比べるまでもありません。


▼有料の呪縛

なぜこのコンコルドが経済学や心理学の世界で使われる単語の元に、それも割とネガティブな単語の由来になってしまったのかと言うと、ここまで説明してきたように、いろんな意味で非常にやらかしてしまったしくじり飛行機だったからではありません。

そもそも東京⇔大阪間(401km)をわずか11分で飛行できるマッハ2.4の旅客機というのは、2020年現在ですら実現していないいわばオーパーツのような物で、しくじりどころか奇跡の機体だったと言ってもいい旅客機です。
当時の最先端技術を詰め込んだ結果、未来よりも高性能な機体が過去に実用されていた。ロマンですよね。

ではコンコルドはどこでしくじったのかと言うと、開発ではなくビジネス的な失敗でした。

超スペックを実現するために、開発・維持の費用は莫大に膨れ上がり、その一方で実用性・汎用性に乏しいことに気が付いた航空各社はコンコルドの導入から撤退。最後まで残ってコンコルドを購入したのはイギリスとフランス、開発国の2社のみでした。
250機で採算ラインに乗るといわれていましたが、実際に製造されたのは16機のみ。大赤字もいいところです。

なぜこんなことになってしまったのかと言うと、まさにこれこそがお金の魔力、有料の束縛力でした。

損失回避バイアスを知った今ならとても分かりやすいと思いますが、お金を払うからには損の少ない選択肢を選びたいのが人間です。
言い換えるなら、お金を支払ったからには少しでも取り戻したいのが人間です。

そうなんです、実はお金を支払う事でもお金の魔力は発揮されるんです。
難しい言葉ではサンクコストバイアス、またはコンコルド効果と呼ばれるものがあります。

ビジネスとして考えると非常にわかりやすいのですが、資本主義はコストをかける事で、コスト以上のリターンを得る事で回っています。
そうやって人類は発展してきました。

しかし当たり前の話ではありますが、何でもかんでもコストをかければリターンが見込めるとは限りません。
もしそうだとしたら無限に富が生み出され続けて、世界はもっとバブリーなことになっているはずです。当然のように希望を抱いて泡と消えていったお金が世界には溢れています。

この回収できなくなったコストのことをサンクコスト、日本語では埋没費用と呼びます。
平たい言い方をしてしまえば、損したお金のことです。損失回避バイアスがゴリゴリに刺激される奴ですね。

コンコルドの開発はロマンを追い求めた挑戦ではなく、利益を出すための商業活動ですので当然

『このまま開発を進めたら、採算はどれくらいになるのか?』

という計算はされていました。
そしてその結果として

『このまま開発を続けても、利益を出すどころか開発費の回収も難しい』
『開発は終わっていないのでまだ開発費は必要だし、開発が終わっても維持整備で継続的に出費は続く』
『開発を続けて販売にこぎつけるよりも、今すぐ開発を中止して予約してくれてた会社に賠償金を支払った方がずっと安上がりで済む』

『ど う 足 掻 い て も 大 赤 字』

という事は、事前にわかっていました。

しかし開発を中止するという事は、当然今までにかけたお金や時間を諦めるという事になります。
更にその責任は誰がとるのか、特に時代の先を行った超性能の開発だっただけに、かけてきた途方もない金額は誰か個人の責任で済む領域を完全に超えていました。

結果、有料の束縛力に囚われて、開発に携わる全員が『今やめるのが一番赤字が少なくて済む』と理解していながらも、プロジェクトは止まることなく行くところまで行ってしまったと言われています。

これがコンコルド効果の由来です。




ほんとはもっと書き込んで有料で出そうと思ってたんですが、流石に長くなって疲れてきたので中途半端ではあるけど、書き上げてある所までをぶん投げてみることにしました。
無料記事だからね、誰に文句言われる筋合いもないしね。

気が向いた時に追記・編集します。
ハートや投げ銭が増えたらやる気が出て、更新が早くなるかも知れません(ダイレクトマーケティング)


おまけ:今回執筆時の自分用メモ(いわゆるプロット)

1お金の魔力
1-2お金が欲しいよりお金を失いたくない
2無料の魔力
2-2無料の魔力の怖さ
3有料の魔力
4お金の魔力の怖さ
5お金の魔力の強さ


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