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集団生活の中で合意形成や意思決定を学ぶ教師のアプローチの考察①-1<探究概要>


探究概要

このnoteでは集団生活の中で、子どもたちが合意形成や意思決定の資質能力を育むための教師のアプローチを考察していきます。具体的な探究内容としては、小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 特別活動編の目標にある"集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようになる"ためのアプローチ方法として、国際バカロレアのATT(Approach to Teaching)の考え方が応用できると考え、具体的な教師の指導方法について考察をしていきます。

◎ 特別活動の目標(参考リンク
集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動
に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団
や自己の生活上の課題を解決することを通して,次のとおり資質・能力
を育成することを目指す。
(1) 多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必
要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。
(2) 集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために
話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができる
ようにする。

(3) 自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして ,
集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するととも
に,自己の生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする
態度を養う。

小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 特別活動編(pg.11)

ちなみに、麹町中学校の学校改革を行った工藤勇一氏も、麹中生が目指す生徒像の中に合意形成という言葉を用いています。

麹町中学校が目指す生徒像(出典:麹町中学校「進取の気性」

これらの目標に対して、教師がどのようにアプローチしていくのかを、全てのIBプログラムの指導の根幹にある6つの主要な教育原理に基づいた教師のアプローチの方法を考察していけたらと思います。

探究を基盤とした指導
概念理解に重点を置いた指導
・地域的な文脈とグローバルな文脈において展開される指導
・効果的なチームワークと協働を重視する指導
・すべての学習者のニーズを満たすために差別化した指導
評価(形成的評価および総括的評価)を取り入れた指導

「国際バカロレア(IB)の教育とは?」(リンク

ATTのアプローチの検討①

そこで、ATTの6つの項目を1つずつ検討していけたらと思います。

  1. 探究を基盤とした活動



Inquiry process from What is an IB education? (2013)

IBプログラム全体に根付く教育原理の1つは、探究を基盤とした活動です。探究する人は、IBの学習者像の1つであり、この探究するプロセスを通して、子どもたちの好奇心を自然に育むとともに、彼らが自律的に生涯学び続ける人になるために必要なスキルと考えられています。また、探究を基盤とした学習活動の枠組みは様々あるのですが、重要なこととして以下のように書かれています。

大切なことは、子どもたち一人一人が主体的にクラス活動に参加し、子どもたちと教師、および子どもたち同士の相互作用がとても高いことです。

Approaches to teaching and learning in the Diploma Programme(pg.15)


「集団や自己の生活上の課題を解決する」とは,様々な集団活動を通して集 団や個人の課題を見いだし,解決するための方法や内容を話し合って,合意形成や意思決定をするとともに,それを協働して成し遂げたり強い意志をもって実現したりする児童の活動内容や学習過程を示したものである。  

「なすことによって学ぶ」を方法原理としている特別活動においては,学級 や学校生活には自分たちで解決できる課題があること,その課題を自分たちで 見いだすことが必要であること,単に話し合えば解決するのではなく,その後の実践に取り組み,振り返って成果や課題を明らかにし,次なる課題解決に向かうことなどが大切であることに気付いたり,その方法や手順を体得できるようにしたりすることが求められる。

【特別活動編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説(pg.17)

児童生徒が、集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して,集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにするための、教師のアプローチとして、IBプログラムにおいて、6つの主要な教育原理に基づいて指導する1つである、「探究を基盤にした指導」に書かれてある探究のプロセスの枠組みと重ねることができると考えた。

具体的な事例

具体的な事例として、クラスの中で発言や行動に影響力のある友達がいることで、クラスで起きている生活上の課題を解決するために、自分の意見が言えなくなる状態が生まれていました。このときに、生徒指導の観点から、クラスにおけるルールメイキングのプロセスの中で人権意識を育めるようにすることが重要である助言を頂きました。

実践 クラス会議

そこで、クラス会議を学級の中で取り入れることで、クラスの中での困りごとを一人一人が発言できる機会をつくり、クラスの中にある課題を自分たちで見いだすことが必要であること、そしてその課題は自分たちで解決できる課題があること、また、単に話し合えば解決するのではなく,実践に取り組む機会をつくることで、子どもたちの中でクラスの課題を自分たちで議題に挙げ、話し合いの中で解決する姿が見られるようになりました。
しかし、実践後に、振り返って成果や課題を明らかにし,次なる課題解決に向かうことなどが大切であることに気付いたり,その方法や手順を体得できるようにしたりするところまで教師側がアプローチできていない現状があります。

考察

探究を基盤とした学習活動のアプローチには様々な枠組みがあるのですが、ここでは3つの探究メソッドと、このメソッドをクラス会議に当てはめて考察していけたらと思います。

・構成された探究 (Staver and Bay 1987) 
・ガイドされた探究 (Staver and Bay 1987) 
・オープンな探究 (Staver and Bay 1987) 

私の中で、この3つの探究の枠組みは構成された探究→ガイドされた探究→オープンな探究へと段階を踏んでいくと考えており、分ける視点として大人の介入度とクラス会議のテーマがあると考えています。つまり、子どもたちが合意形成や意思決定を育む機会の手段とてクラス会議を行う中で、子どもたちの発達段階に合わせてどの探究の枠組みを用いるのかを選択できると考えています。

今回のブログでは、ATTの6つのアプローチの1つである「探究を基盤とした活動」の考え方を 、子どもたちが集団生活の中で合意形成や意思決定を学ぶ教師のアプローチの考察として提案を行いました。次回のブログでは、2つ目の「概念理解に重点を置いた指導」の考え方を考察していきます。

いつも読んで頂きありがとうございます。

参考文献

Approaches to teaching and learning in the Diploma Programme(リンク


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