世界最速プレーヤー相手にエースを取る方法を考える③~サイドライン付近・ベースライン内1m~
こんにちは、トモヒトです。
今回も、相手の想定としてジョコビッチ選手を取り上げます。
前提条件
ここで、いくつかの前提条件を定義しておきます。
ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間
ジョコビッチ選手がヒッティングポジションへ移動する時間を、次の式で定義します。
$$ t= 0.25 + (sprint length / 10) $$
この式は、以下を想定したものです。
反応時間=0.25秒
スプリント時間=スプリント距離 / 10〔m/s〕
ショットの条件
ショットの落下点=想定よりも0.5m以上短い位置でバウンドした場合はカウントしない
ネットの上0.5m以上を通過したものをカウントする
エースの条件
エースの条件は、相手がベースライン後方2mにポジショニングしていると仮定し、ベースライン後方2mのショットの到達時間がフットワークの時間を下回った場合とします。
結果
それでは、結果についてみていきます。
このあと出てくるshot widthは、以下のように値を定義しています。
ストレート:ネットを挟んで反対側のバウンド地点を0とし、シングルスサイドライン方向をマイナス、センター方向をプラス
クロス:シングルスサイドラインからの距離
今回は、シングルスサイドラインから0.5m内側・かつベースライン内1mからのショットを考えてみます。
【ストレート方向】
このケースでの合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ1.565mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。
shot width=-0.5: 0.8224s (0.25 + (5.724 / 10))
shot width=0.0: 0.7680s (0.25 + (5.180 / 10))
shot width=0.5: 0.7137s (0.25 + (4.637 / 10))
shot width=1.0: 0.6593s (0.25 + (4.093 / 10))
shot width=1.5: 0.6049s (0.25 + (3.549 / 10))
これらの結果から、エースになる最低速度は次のようになります。
shot width=-0.5 => 打点=0.6m: 130km/h / 打点=1.5m: 130km/h
shot width=0.0 => 打点=0.6m: 140km/h / 打点=1.5m: 135km/h
shot width=0.5 => 打点=0.6m: 150km/h / 打点=1.5m: 145km/h
shot width=1.0 => 打点=0.6m: 160km/h / 打点=1.5m: 160km/h
横のポジションが同じでベースライン上の位置からだと、shot width=-0.5のときの最低速度が140km/hであったことから、ポジションが前になるほどショットスピードの最低ラインが下がることがわかります。
また、-0.5middleはサービスラインとベースラインの中間、-0.5shortはサービスライン付近と、やや角度のついたショットとなっています。
これらについてshot width=-0.5のときのフットワーク所要時間を当てはめると、-0.5middleでは110km/h、-0.5shortでは95km/hでエースが奪える計算となります。
反対に、shot width=0以下のショットでエースを取るためには、相手が何m以上離れた位置にいればいいのかを見ていきます。
センターマークを0mとすると、ショットスピード別に次のようになります。
100km/h => 打点=0.6m: 4.655m / 打点=1.5m: 4.525m
110km/h => 打点=0.6m: 3.565m / 打点=1.5m: 3.485m
120km/h => 打点=0.6m: 2.655m / 打点=1.5m: 2.575m
130km/h => 打点=0.6m: 1.885m / 打点=1.5m: 1.865m
140km/h => 打点=0.6m: 1.325m / 打点=1.5m: 1.295m
150km/h => 打点=0.6m: 0.805m / 打点=1.5m: 0.765m
160km/h => 打点=0.6m: 0.355m / 打点=1.5m: 0.345m
170km/h => 打点=0.6m: 0.015m / 打点=1.5m: -0.035m
この結果をみると、相手がAかDにいれば130km/h台のストロークでも、ストレートへのショットでエースになると考えることができます。
【クロス方向】
次は、クロス方向へのショットを深さ別でみてみます。
ショートクロス
仮に、センターマークから1.565m横にずれた合理的待機位置から、ボールの軌道に対して最短距離(直角)に動くと仮定します。
この条件の場合の、エースとなるボールスピードは以下のようになります。
shot width=0.0: 105km/h
(移動距離=5.616m/フットワーク所要時間=0.8116s)shot width=0.5: 115km/h
(移動距離=4.986m/フットワーク所要時間=0.7486s)
ミドルクロス
合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ1.565mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。
shot width=0.0: 0.6880s (0.25 + 4.380 / 10)
shot width=0.5: 0.6262s (0.25 + 3.762 / 10)
shot width=1.0: 0.5644s (0.25 + 3.144 / 10)
shot width=1.5: 0.5025s (0.25 + 2.525 / 10)
以上から、各バウンド地点でエースになる最低速度は、次のようになります。
shot width=0.0: 打点=0.6m: 140km/h / 打点=1.5m: 140km/h
shot width=0.5: 打点=0.6m: 155km/h / 打点=1.5m: 155km/h
反対に、このポジションからミドルクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
センターマークを0mとし、サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。
100km/h => 打点=0.6m: 1.96m / 打点=1.5m: 1.843m
110km/h => 打点=0.6m: 0.973m / 打点=1.5m: 0.903m
120km/h => 打点=0.6m: 0.193m / 打点=1.5m: 0.173m
130km/h => 打点=0.6m: -0.497m / 打点=1.5m: -0.517m
140km/h => 打点=0.6m: -1.027m / 打点=1.5m: -1.048m
150km/h => 打点=0.6m: -1.487m / 打点=1.5m: -1.467m
160km/h => 打点=0.6m: -1.827m / 打点=1.5m: -1.917m
170km/h => 打点=0.6m: -2.117m / 打点=1.5m: -2.267m
深いクロス
深いクロスの場合、一番相手との距離の遠いshot width=0のときでも2.55m(フットワーク所要時間=0.505s)となります。
よって、相手に合理的待機位置に構えられると、深いクロスでエースを奪うことは困難です。
もし、深いクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。
100km/h => 打点=0.6m: 4.750m / 打点=1.5m: 4.620m
110km/h => 打点=0.6m: 3.590m / 打点=1.5m: 3.440m
120km/h => 打点=0.6m: 2.600m / 打点=1.5m: 2.510m
130km/h => 打点=0.6m: 1.870m / 打点=1.5m: 1.760m
140km/h => 打点=0.6m: 1.130m / 打点=1.5m: 1.160m
150km/h => 打点=0.6m: 0.620m / 打点=1.5m: 0.600m
160km/h => 打点=0.6m: 0.160m / 打点=1.5m: 0.090m
170km/h => 打点=0.6m: -0.290m / 打点=1.5m: -0.300m
まとめ
今回は、サイドライン付近・ベースライン上のケースで、エースの取り方を見てきました。
前回よりも前のポジションになったことで、返球可能範囲やショットの距離が変わってくることから、エースになる条件が変わってきます。
エースになるショットスピードの下限が下がるため、ショットスピードを補う選択肢としても有効だといえます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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