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ネガティブすぎて元気が出る?『絶望名人カフカの人生論』

こんにちは、灯城(ともしろ)です。

今日は『絶望名人カフカの人生論』頭木弘樹 編訳を紹介しようと思います!


おっと、その前に”絶望名人カフカ”って誰のこと?


先にお伝えすると、あのフランツ・カフカのことでございます。
『変身』『城』『審判』などでお馴染みのあの小説家のお方。

きっとフランツ・カフカの小説を読んだことがある方は”絶望名人”という称号になんとなく心当たりがあるのではないでしょうか?

知らない方のために簡単にお伝えすると、フランツ・カフカの書くお話はそこはかとない孤独感や、絶望感、不安に満ちたお話が多いのです。例えば『変身』という小説は、簡単に説明すると「ある男が朝起きたら、巨大な虫になっていた」というお話です。この説明だけでわりと絶望的ではないですか?私だったら絶対にイヤだ…。しかもこの話、進んでいくにつれてもなかなか…。興味深くて面白いお話なんですけどね。なかなかです。笑

『変身』は実存主義文学の一つとして知られ、カミュの『ペスト』とともに代表的な不条理文学の一つとも数えられているそうです。

実存主義…人間の実存を哲学の中心におく思想的立場。あるいは本質存在(essentia)に対する現実存在(existentia)の優位を説く思想
不条理…不合理であること、あるいは常識に反していることを指す。
                         【Wikipediaより】

つまり???

「人間の本質を説くような話」「人間の決めた常識では、人間というものを理解しきれていないという指摘」というような感じでしょうか…?ここら辺を詳しく知ろうと思うと、哲学者サルトルの『実存主義とは何か』などを読み込んで深く理解しないといけないために、ここではざっくりと小難しい雰囲気が伝われば良しとします。

カフカの残した名言、本来のかたち

小難しく、そこはかとない絶望感のあるお話を生み出したカフカという人物。その人物像にも一癖も二癖もあったようです。

簡単に言うと、とってもネガティブ。

それを示すように冒頭、編者の頭木さんが引用しているカフカの言葉がこちらです。

すべてお終いのように見えるときでも、
まだまだ新しい力が湧き出てくる。
それこそ、おまえが生きている証なのだ。

あれっなんかとっても前向きでは?

ここまでは明るくて力強い言葉ですよね。

ところがですね、この言葉にはまだ続きがあるのです。

もし、そういう力が湧いてこないなら、
そのときは、すべてお終いだ。
もうこれまで。

諦めちゃってますね、これは。かなりネガティブです。

この言葉は、「前半部分で切り取られて前向きな言葉として引用されていることもある」と頭木さんは指摘しつつ、それではカフカの言葉にある本来の魅力が損なわれると考えておられました。私もその通りだと思います。


ネガティブな言葉が持つ力

ギリシャの哲学者アリストテレスは、「そのときの気分と同じ音楽を聴くことが心を癒す」と主張しました。つまり、悲しいときには、悲しい音楽を聴くほうがいいというのです。
これは「アリストテレスの同質効果」と呼ばれています。現代の音楽療法でも「同質の原理」と呼ばれて、最も重要な考え方のひとつです。
                          【本文より引用】

頭木さんはこの「アリストテレスの同質効果」を根拠に、カフカの言葉には悲しいときに寄り添う力があると考えてこの本を作られたようです。

この本を読んだ私としては、たしかにその力があると思いました。

本書の中で頭木さんは「あまりにもネガティブで、かえって笑えてこないでしょうか。」と記されているのですが、まさにそのとおり。

あまりにネガティブすぎて逆に元気をもらえる言葉が、頭木さんの解説とともに面白可笑しく詰まった本が『絶望名人カフカの人生論』です。


〇〇すぎて絶望した!

本書の目次は、状況ごとに整理され「将来に絶望した!」「仕事に絶望した!」「食べることに絶望した!」と章分けされております。

おそらくですが、『さよなら絶望先生』のオマージュだと思います。そこにもちょっとクスッときてしまったり。

さて、では引用されているカフカの名言を紹介いたします。

ぼくの生活はただ書くことのために準備されているのです。
時間は短いし、
体力はないし、
仕事はおそろしく不快だし、
住居は騒がしいし、
快適でまともな暮らしができないなら、
トリックでも使って切り抜ける道を見つけるしかありません。

この言葉、私はとっても好きです。笑

100年も前の偉人ですら、こんな言葉を残しているのです。

なんだか親近感を覚えるというか、安心感が得られるというか…。

生きることは、たえずわき道にそれていくことだ。
本当はどこに向かうはずだったのか、
振り返ってみることさえ許されない。

こういったカフカの言葉に対して、頭木さんはその言葉の残された背景や状況、それでも頑張ったカフカについての解説を添えてくれています。その解説がまた面白くて、カフカの言葉の魅力を高めてくれています。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

『絶望名人カフカの人生論』の魅力が少しでも伝わっていたら、幸いです。

私がこの本に出会ったのは2017年のことなのでもう4年近くですね、寄り添っていただいております。

現行のものは表紙もかなり格好良くリニューアルしているようです!

この表紙めちゃくちゃ良いですね…!

試し読みで冒頭部分が読めるようでしたので、ぜひこの本の雰囲気を知っていただけたら嬉しいです。


ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら本当にありがとうございます!

それでは、失礼いたします。


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