tomosada kota

友定洸太です。俳句をつくっています。

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最近の記事

ゆるゆる読む京極杞陽 #06 昭和16年

昭和16年(1941年)の収録句数は46句。 描かれている人間が魅力的だ。 1句目、秋の夜長に人から「構想」を聞いている。成し遂げる前の段階を描くことで滑稽味を出しながらも、その人への敬意や愛着も同居するとてもキュートな句だ。 2句目、場面としては女性が離席しただけなのだが、「たばこを消して」に自らのタイミングで立った感じを受け取った。 「季節めぐりて」に驚いた。「や」「けり」の併用もある。型破りな句の作り方だ。 内容にも魅力を感じた。籐椅子が絶妙で、過去にその椅子

    • ゆるゆる読む京極杞陽 #05 昭和15年

      昭和15年(1940年)の収録句数は54句。 機嫌のいい句だ。 お店でこれから食べるのかもしれないし、通りを歩いていて看板が目に入ったのを書いただけかもしれない。 河豚そのものではなく文字を句材にしたことで、食文化単位で面白がっているようにも読めてくる。 〈まつぴるま〉も楽しい。まるで昼間の河豚はいけないみたいだ。 忌日俳句なのに笑ってしまった。そのまんまである。 けれども、亡くなった時代との時間的な距離を測り、その遠さを認めながら想う真摯さもうかがえる。 近世

      • ゆるゆる読む京極杞陽 #04 昭和14年

        昭和14年(1939年)は杞陽が31歳を迎えた年。この年の項には2つの追悼句が収められている。 訃報を前にして、何もできないし、何も言えない。そのありようが書かれている。 この年の7月、神戸へ船旅をしている。 ホトトギスのイベント「日本探勝会」で有馬温泉に行ったのだ。横浜から客船・鎌倉丸に乗った。往路は25人の大所帯で、船上句会も催されたという。 非日常の光景にしなやかに反応してみせた。反射神経のよさを感じてまぶしく思う。 ホトトギス昭和14年10月号に吟行の様子を

        • ゆるゆる読む京極杞陽 #03 昭和13年〔30歳〕

          昭和13年(1938年)の収録句数は76句。 雪崩によってもたらされた衝撃の大きさが伝わってくる。 句集冒頭はスキーの句だったから、雪崩も間近で見たことがあるのかもしれない。 〈巨きく巨きく〉のリフレインや〈鳴りどよみひんひんと〉の思い切った字余りが、雪崩を書き残そうとした気持ちに適っていたのだと思う。 略年譜から計算すると、杞陽には当時3歳と0歳の子どもがいた。0歳のお子さんはその年の1月に生まれたばかりなので、蜂を恐れているのは3歳のお子さんだろうと想像できる。

        ゆるゆる読む京極杞陽 #06 昭和16年

          ゆるゆる読む京極杞陽 #02 昭和12年

          昭和12年(1937年)の収録句数は52句。 明治41年(1908年)生まれの杞陽にとって、満年齢で29歳、数えで30歳を迎えた年だ。 文体が多彩だ。 1句目、「その日々の」の導入が新鮮。80年以上前の表現だとは。むかし住んでいた家を思い出しているのかもしれない。 2句目、3句目、どんな景色を見ているのかはわからないけれど、感覚や感触は確かに手渡される。 漫画みたいな「ギューッ」が楽しい。特に「ッ」がいい。これも昭和12年の表現だ。 「ギューッ」には、わずかではある

          ゆるゆる読む京極杞陽 #02 昭和12年

          ゆるゆる読む京極杞陽 #01

          俳句を始めたころ、歳時記の例句のなかでもとりわけ京極杞陽の句が好きだった。 俳句はこんなふうに軽くてもいいのかと思った。 今でもその気持ちは変わっていないが、最近になって気になり始めたことがある。「俳句人生のトータルとしてはどんな作品を残してきたのだろうか」ということだ。作品以外に発揮された振る舞いがどんなものだったかも知りたい。 まずは第一句集『くくたち(上・下)』を読んでみることにした。 収録句数は1000句以上らしい。急がずゆるゆる読み通していければと思います。

          ゆるゆる読む京極杞陽 #01

          2023年の俳句活動記録

          1月 川嶋ぱんださんのnoteに朝活俳句アワード2022受賞作品として5句掲載。 しりとりに喇叭ふたたび石蕗の花 2月 IRORIネプリに5句と島津亮作品鑑賞が掲載。 バレンタインデー森の写真に立ち止まる 週刊俳句 第825号に小川楓子さんの句集『ことり』出版記念トークイベントのレポートが掲載。 現代俳句 2月号に現代俳句協会青年部勉強会「俳句研究賞を読む」(前編)のレポートが掲載。 3月 俳句展望 第198号に全国俳誌協会第4回新人賞鴇田智哉奨励賞受賞作品とし

          2023年の俳句活動記録