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大前研一氏のコラム「岸田首相が的外れな政策をやめない限り、日本人の給料は韓国や台湾よりずっと低くなる」について

さすがは〝「維新」の祖〟大前研一氏の論だけのことはある。中小企業を中心に原資がなくてまんま賃上げのナンセンスさについての指摘も、DX導入等による労働生産性向上に伴う雇用流動化の必要性も概ね理解できるところではある。

MMTを否定する立場からすれば、方法論もさもありなん・・・職業訓練やらリカレント教育やら…それはそれで当然必要な〝風土〟ではあるが、そんな風土の醸成を待っていられるほど悠長な我が国の状況ではなく、一方で、『若者は持ち家にも自家用車にも興味を示さず、将来が不安だと言って、20代のうちから貯金に励んでいる。一方で、高齢者は貯金があっても「いざというときのために」というよくわからない理由で使おうとしない』「低欲望社会」などとみなして、数多の一般庶民のやむにやまれぬ低需要を見誤り、(外需を見据えた、国際競争力で評価するところの)労働生産性志向はともかく、この期に及んでDX導入等とリストラがセットで論じられるお決まりの「合理化」により市場の供給力(~個々の企業の体力)に重きを置いているあたりが、やはり新自由主義に苛まれた「維新」的発想なのだ。

大前氏をして高らかに唱えられた30年前の「平成維新」。その崇高な改革案(規制緩和等)は遅きに失した、あるいは片手落ちに過ぎた。鶏と卵の議論にならざるを得ないかもしれないが、「まやかし」、「楽観論」と言われようとも、今はMMT(~消費税凍結、ベーシックインカム等直接的に遍く国民にカネが行き渡る政策)により需要(内需)に圧倒的な力を与えるしか手はないと思う。あのバブルを見てどの口が「低欲望社会」などと言う!?狂乱めいた景気過熱に対するトラウマこそあれ、今の異常な低需要は誰が見ても〝ない袖は振れぬ〟だけのこと(袖がゆったり振れるようになれば=第二子、第三子と国から多額のインセンティブを供給、育児・教育・医療を手厚く補助すれば、長期的には大前氏指摘の少子化~人口減少も解消に向かう)。マネタリーベース云々言うが、日銀流MMTでもって日本企業株を買い支えたところで、一部の富裕層以外は外国投資家に流れ、国内的にはカネを刷っては溶かしたに等しい…なればこそのこの格差社会であり、日銀のカネはほぼほぼ一般庶民には渡っていないのである。

繰り返すが、「維新」的発想でもっていくら供給側を改革し(現維新の連中は「アベノミクスが不十分」などと寝ぼけたことを言ってるが)、企業の体力をつけさせたところで、先に低需要が解消されない(市場の安定性が見通せない)限りは、多少の儲けも内部留保へ…そういう傾向が大企業のみならず中小企業にも拡大するだけのこと(最近、生産者の価格転嫁=物価高を社会的に許容して、その利益をもって賃上げにシフトさせよう…という議論が散見されるようになったが、順序がまるでナンセンスだと思う。)。他方(日銀流にすでにやっちまってる)MMTについては、大前氏も国債の国内償還の安全性を認めているところで(確かにそれが保てるのは〝今〟までで、正真正銘技術力も含めて日本経済のポテンシャルそのものが低下しそうな今後はわからない…だからこそ事態は急を要するのだ。)、それでいて「アメリカのインフレが日本にも波及すれば…」と古典的な懸念材料を提示するところに(本人は解っていながら)〝解っていない〟読者を恣意的に説き伏せようという悪意を感じざるを得ないわけだが、何のことはない。今我が国を襲っているスタグフレーションではない、まっとうな(国内需要の力に押し上げられた)インフレならば、利上げはもとより、大増税にて対処すればよいだけのことである(そのための消費税「廃止」ではなく「凍結」である)。それこそ財務省のお望みどおり早晩(需給バランス的にもまっとうなかたちで)プライマリーバランス黒字化が達成されるというものである。

【記事(コラム)のURL】
https://president.jp/articles/-/58608?fbclid=IwAR2u5MxH7zDf56aNak9lruDq2RvM-xxgMHn6pBbX8X9DniKXBkJ1K54NrOY

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