月と私


寝支度を済ませて、ベッドに腰掛けて呆けていた。
いつもは見ないTVを今日は少しだけ見ていた。
久しぶりに見るTVに映る人たちはみんな知らない人たちだった。
暇を潰すために見始めたTVが余計に退屈にさせた。

テレビを消して、煙草を吸いに外に出てみたい。
さっきTVで春の兆しが、と言っていたがまだまだ冬だ。
ここに冬がある。
そう裸足で履いたサンダルから見える私の足が叫んでいる。

寒い足を暖かくしてやろうと歩き始めて通る道。
いつもの通勤には使わない一つ裏の道。
私はここが大好きだ。
歩いて三分程進むと、古い家屋があり夜の二十三時ごろなると月が綺麗に見えてくる。
今がちょうどその時だ。

今日は満月から少し月が痩せている。
私も少し痩せたい。
なんて事ない会話を月としてみても、次は答えてくれない。
私の足がそれを笑っている。
なんだ、この足は。

どうやら、冬のせいで足が寒いらしい。
それは笑っている訳だ。

私もそんな自分を見て笑いながら歩き始めた。
明日もこの時間に月は見えるだろうか。
また明日と言い残して立ち去ろう。

さあ、月と今日の私。
また明日。

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