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人生を変えた名盤シリーズvol.4 『mezzanine』

「深夜3時のトリップドライブ」

第4回目は、イギリス・ブリストル出身のグループ「Massive Attack」より、3作目の「mezzanine」です。

「Massive Attack」は、90年代のクラブシーンにて"トリップ・ホップ"と言われるジャンルを開拓し、ヒップホップ・レゲエをベースとしたジャズ・ロック・ファンク・ソウルなど、多様なジャンルを織り交ぜた浮遊感のある唯一無二のサウンドを特徴とし、今日までに多くのアーティストに影響を及ぼしています。

今作「mezzanine」は、クラブシーンが盛り上がりを見せる中、彼らの実力・人気を不動のものにした名作です。

メンバーは、3D(ロバート・デル・ナジャ)、Daddy G(グラント・マーシャル)、マッシュルーム(アンドリュー・ヴォウルズ)が中心となっており、様々なアーティストがゲストで参加しています。

Massivi Attackは基本的に様々なアーティストをゲストで呼んでアルバムを制作することが多く、作品に多様な色彩を与える強みを持っています。

また、彼らは寡作のアーティストとして有名で、1988年の活動開始から今日に至るまで、オリジナルのスタジオアルバムはたったの5作しか制作されていません。(2010年に発表された「Heligoland」が現在最後のアルバムです。)

今作は全体を通して重厚で静寂な印象ですが、その中にも浮遊感のある要素が散りばめられ、聴き心地の良いサウンドとなっています。

いきなり冒頭1曲目の「Angel」では、まるで夜な夜な異形の者が地を這うような暗いサウンドで始まりますが、不思議と不快感はありません。

続く2曲目の「Risingson」では、ドラムとベースが印象的なサウンドで、3DとDaddy Gとのボーカルの掛け合いも魅力的な、個人的にお気に入りの一曲です。

3曲目の「Teardrop」では、それまでとは一転して、女性のボーカルによる包み込まれるような、優しくも美しいサウンドとなっています。この曲は彼らの代表曲としても有名で、胎児をモチーフとしたPVはより一層曲のイメージを印象づけるのに一役買っています。

その後アルバムは「Exchange」で小休止を挟み、変わらず低めの曲調で進行していきますが、もう一曲私が個人的に好きな曲が、レゲエ歌手ホレス・アンディが歌う7曲目「Man Next Door」です。

ホレス・アンディはそれまで以前もMassivi Attackのアルバムに参加しており、彼らとは切っても切れない関係となっています。

彼のファルセットの効いた独特な声は、聴くほどにクセになっていく不思議な魅力を持っています。ぜひご一聴をおすすめします。

ちなみに、このアルバムで他のメンバーと方向性の違いを感じ、マッシュルームが脱退しています。実質的に3人が揃った最後のアルバムとなりました。

いつかまた、3人が揃って革新的なアルバムを世に放つことを心から願っています。

余談ですが、私は東京の学校を卒業した後、地元に戻りアルバイト生活をしていたとき、実家の車でこのアルバムを流しながら夜な夜な海岸沿いをドライブしていました。

今でもその光景はありありと思い出されます。

もう一度東京で何か爪痕を残したいという思いを、この作品を聞きながら内に秘めていました。(特に「Man Next Door」を聴きながら)

今や東京での生活も慣れて早や10年近く、果たして私は海岸沿いをドライブしていた頃に思い描いていた自分に近づいているのでしょうか。

もう一度あの頃、野望と希望と不安に満ちていた自分に戻らせてくれる感慨深い作品です。


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