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虹色ドリーミング(第28回)

#創作大賞2024
#お仕事小説部門

【橙色 キョウカ】

『犯人はこの中にいます』
 おぉ、そっか。末期の胃ガンになった院長が犯人だったのか。あっ!ベッドの横の花瓶にカーネーション。うぉぉぉ黒幕は誰なんだぁ。
 カレンに聞いても教えてくれない。でもネタバレされたくない気持ちもある。
 まぁ来週を楽しみにしよう。
 さて今夜もガンプラ配信。今日はネオジオングの続き。確か三回目。キットがデカ過ぎて何回で終わるか全然分からない。
 トゥルルル……
 家の電話がなるのは珍しい。誰からだろう。ママやパパなら携帯にかけてくるはずだし。
「もしもし」
 和宏が出た。
「はい」
「杏花姉」
 ん?
「はい、お電話代わりました」
「私、〇〇警察署交通課の渡辺と申します。安達春花さんのご家族でしょうか」
「はい、娘です」
「お母様が事故に合われました」
「えっ!」
…………
「美花ー」
「なあに?」
「ママが自転車とぶつかって病院にいるみたい。ちょっと行ってくるから、おうちお願い」
「ええ?ママ大丈夫なの?」
「うん、無事だって。ただ腰が痛くて立てないみたい。パパが帰ってきたら伝えておいて」
「うん、分かった」
『今日の配信はお休みします』とツイートして、病院へ向かった。
 病室へ入ると、ママはベッドで寝ていて、お巡りさんと母子がいる。子供は泣いている。
 お巡りさんによると、ママは子供が運転していた自転車とぶつかって、腰をうって、救急車でここに運ばれたらしい。あまりに痛がるから筋肉注射を打って、ママは寝てしまったらしい。
 説明を終えてお巡りさんは帰っていった。泣いている子供に
「うちのママは大丈夫だから心配しなくていいよ」と言うと
「ごめんなさい」と謝ったので
「うん、ちゃんと謝れるのはえらいね」
「本当に申し訳ありませんでした」
「あ、本当に大丈夫です」
「治療費や慰謝料はきちんとお支払いしますから」
 そんなにかからないと思うから、連絡先を交換して帰ってもらった。
 看護師さんに「明日の朝また来ます」と伝えて帰宅した。
 帰るとパパが帰ってきていた。
「ママはどうだった?」
「うん、心配いらないと思う。明日、私が迎えに行ってくるね」
「分かった、頼むな」
「寝るね、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
 翌朝、早めに起きて病院へ向かった。ママはベッドを起こして朝ごはんを食べた後だった。色々と検査をするとのことだったので、ママを車椅子に乗せてあちこち検査室をまわった。検査結果が出るまで時間がかかるみたい。
「ママ、何か飲む?」
「冷たいお茶がいいかな」
「うん、待ってて」
 自販機でママのお茶と私のミルクティーを買って戻った。病院はすごく混んでいる。いつもこんなに混んでるのかな。
「ママ、まだ痛いの?」
「うん」
 骨折はないと思うから、打撲かな。
「安達さん。安達春花さん」
 やっと呼ばれた。生年月日で本人確認して、診察室へ。
「内科部長の榊です」
 内科?外科じゃないの?
「腰椎のレントゲンを撮りましたが、骨には異常ありません」
 やっぱり。
「念の為、尿検査と血液検査をしました。こちらがその結果です。蛋白尿が出ています。あと血液に若干の異常が見られましたので、腰部のエコー撮影をしました。こちらがその画像です」
 今はレントゲンもエコーもパソコンの画面に表示される。
「ここに影ができています」
 えっ!
「同じ病院の泌尿器科を紹介しますので、診てもらってください」
 榊先生は紹介状に
『renal carcinomaの疑い』と書いた。
 あっ!それってカレンのドラマの。
 ママを泌尿器科に連れて行って
「これ紹介状です、よろしくお願いします」
「ママ、私トイレ行ってくるね」
 あの単語は間違いない。問題は『renal』それと段階。
 トイレでスマホの画面に『renal carcinoma』と入力して、検索をゆっくり押した。
 腎臓。神様……。

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