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ゲームの思い出語り ノスタルジア1907

「ノスタルジア1907」
大昔に自分が好きだったミステリーゲーム。


ヒロインの「森と湖の幻想」の
話がきっかけで、
フィンランドに旅しました
(写真は現地で撮影)
それが北欧にさらにはまるきっかけに
なったという。
それだけでなく、ミュシャの絵や、
王女メディアにふれるきっかけを
作ってくれた思い出のゲーム。

ロシア革命時代に暗躍した
女性スパイのイリューシャ・
グランセリウス。
彼女の数奇な人生をモチーフに書きました。
このゲーム、今でも、自分的ベストストーリーです。

Gransirius

かつて私は無邪気な子供だった 
汚れのない瞳を持った
でもそれは偽り 
私は幼い頃から仮面をつけることを覚えた
それは私を鏡の前でいつも不思議な
気持ちにさせていた
私は本当はどんな顔をしているのだろうかと

権力者達は私を密告者に仕立て上げた
彼らや彼女達の心の奥にある秘密を
一つ残らず見つけてくるようにって
私にとってそれはゲームのようなものだった
誰一人幼い私を疑わなかった

私はそれを楽しんでいた 
虫を殺して遊ぶ子供のように
あの人達は喜んでいた 
なんて聡明で美しい子供なんだろうって
正直、私も認められることに喜びを
感じていた 

劇場に そう 私とあの人達だけの劇場で
私は踊ったわ 破滅を
私のまわりで踊る破滅と死と残虐な悦びと
渇いた虚栄心の中で
照明のない舞台で
だってあの人達は光を何よりも恐れていた
闇に身を隠して・・・・・

大人になった 15の時よ 
私は最高の舞台女優だった
暗殺者 愛人 少女 そして母
どんな人間にだってなれた 私は踊った
夢を見ているようだった 
死と破滅と密告の世界

私はすべてをこの目に映し すべてを破壊し
響き渡る断末魔と嗚咽の中を踊り続けた
あの人達がカーテンの向こうで笑っているのが見えた

でも おかしなもの 
仮面がだんだん私を消していくのがわかった
私は飛び立ちたかった 
自分が何処から来たのかも知らない私
森と湖の幻想を見たわ それは私だけのもの 私の幻想だった
地図にものっていない何処か

髪を切ったの うんと短く 
18の時よ 私はパリにいた
絵を描くことを覚えたの 
それは私の空だった
私は何処までも飛んでいけるようだった 
それでも沢山の人を殺した
私をあの舞台に連れ戻そうとした人達を 
皇帝のもとで尽くせって

でも私はもう踊り疲れていた 
あの舞台に戻るつもりなんてなかった
私の部屋の枕元にはいつも銃があった 
ナイフもしのばせていた
人の殺し方まであの人達は教えてくれたもの
でもそれが仇になったのね
私はまるでサロメのように
死をふりまいて踊っていた

メデを知っている? ギリシャ悲劇
幼い二人の自分の子供を殺した女の話
それは私が殺した私の心でもあったの

メデは王の娘をもその手にかけた
憎んでいたんでしょうね 
彼女の心と彼女の夫を惑わせたことを
私も皇帝を憎んでいた 殺したかった 
カーテンの後ろにいる男達のことも

舞台のラストシーンでメデは空を
翔けていくの
何物も追いつけないスピードで 
でも私には翼なんてなかった
迎えに来る人もね

私はアメリカにいた それが20の時
船に乗ったの イギリスに向かう船
その当時 私の国は滅びつつあった
怒りと恐怖と儚い希望がいくつもの命を
焼き尽くしていた

滅びだった 私をつなぎとめていた世界の
あの劇場が焼け落ちる姿が目に浮かんでくるようだった
陽炎のようにいくつもの幻がゆらめいていた
でも私にはもうどうでもよかった

違うって思ったの 上手く言えないけれど
フィクションだったの 結局
あの世界にいた人間達も
あの劇場にいた私もすべて

やっと迎えが来た それがあなた 
ここから始まるの 私を見つける旅が

今 私には翼がある 
自分の心のままに自由に飛び回るの
鳥のように メデのように 
私は空を翔けてゆける
聞こえてくるのは 街の喧騒 
カフェの賑わい
少し困ったあなたの顔が見える

今 心はこんなにも自由 

森と湖が見える

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