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順番逆になっている気がする、「サービス」の本当の意味

今から15、16年前。夫の実家がある、中国遼寧省瀋陽市に初めて行った時のことです。

瀋陽随一の繁華街、太原街の地下にある、若者が集う商店街(ファッション、雑貨がメイン)に連れて行ってもらったのですが、

その薄暗くて、うるさくて、まあそれだけ激戦区でもある商店街で、夫の遠い遠い親戚が店を出していました。

二人並んで歩けば道幅いっぱいという通路の両端には、中国的「安かろう悪かろう」が結集した衣料品や雑貨のお店がズラーーーーと並び、

すれ違う人とぶつかりながら歩き、夫が突然足を止めたと思ったら、無愛想なお姉さんが小さな店舗の前で座っていました。

そこは、ジーパンを山ほどワゴンに積み上げ、まるで野菜を叩き売りするみたいにしている、見紛いようのないジーパン屋なのでした。

お姉さんは私たちを見つけると声をあげ、嬉しそうに迎えてくれました。

当時、生まれたばかりの双子の子どもを預けて店を開いているシングルマザー。中国で商売するなんて並の精神力じゃあ生き残れない。お客さんが近寄ると声を張り上げ、似合う似合わないの判断を瞬時にし、迷っているだけの客は追い払い、

そのテキパキさ、はつらつ具合に、まだ20代だった私は結構感激してしまったような気がします。しまいに接客ほとんどせず話に夢中になり、私は「すごいねえ」を連発したんではないだろうか。

家族以外で初めてゆっくり話した人で、地下商店街の熱気や好奇心にもやられながら小一時間過ごしていたら、帰り際はすっかり名残惜しくなっていました。

夫と共に「また来ます」と言って店を出るとき、お姉さんはワゴンを指差し、

「どれでも好きなの、持っていきな!」

と、ジーパンを2本、プレゼントしてくれたのでした。


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中国の最近の接客文化がどうなっているかはわからないけれど、

当時は本当にお客さんは「金(カネ)」で、「買わないならあっち行って」を態度で示すのが、中国的商売文化だったと思います。

私が現地で暮らしていた2012、3年ごろはちょうど変わり目だったような気がします。過剰な接客、とうとう「ここまできたか」というパターンで言えば、

飲食店のレストランのトイレにはスタッフがいて、お絞りを手渡してくれたりとか。ちょっと高いお風呂屋さんにいったら、バスタオルで体を拭いてくれるとか。

火鍋屋の順番待ちの部屋に無料のネイルサービスがあることや3リットルくらいの油買ったらもう一個同じものが無料で付いてくることに、中国の人は別に違和感感じてなかったと思うけど(「タダやん!」みたいなのは感じたと思うけど)、

私からすると、そんな日本の過剰な接客文化を中国風(大量、無料、安い)にアレンジしたサービスは、どこか物に隠れて嘘の上塗りをしているみたいに感じられて、なんだか閉口してしまうことも多かった。

思い返してみても、「好きなの持っていきな!」ってジーパン渡された、あの時の感動を超えるサービスには、私は、当時の中国では出会ったことないです。


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昨日も実家で「あの店はサービスが悪い」っていう言葉を聞いたんだけれど、はて、サービスって何よ?と思ったんですよね。

中国的にいうと、それは、サービスを提供することでお客さんに恩を感じてもらう、つまり自分のメンツを保つことの意味あいが強いものだと思います。

相手にこんなこともできない自分じゃあ恥ずかしい、といったプライドでもあるでしょう。その文脈で言うと、お客様は神様ではないんですよね。「お客さんに感謝される我々でいなくてはいけない」ということであって。

お姉さんにしたって、私が親戚の親戚の結婚相手じゃなかったら、ジーパンプレゼントなんかしていないと思います。

でも、あの時、私はシングルになって双子を育て、ひたむきに商売に向き合うお姉さんにまあまあ感激してしまった。お姉さんにそれがどう伝わったのかわからないけれども、心のやりとりみたいなものがジーパンとなって私に返ってきた時、思わず涙ぐんでしまったんだよなあ(ちょろい日本人/恥ずかしい)。

お客さんが欲しいからサービスする。買って欲しいからサービスする。

そうではなくって、本当は順序が逆なんですよね。

仕事でも人付き合いでも、順番逆じゃない?って感じられることが、たまにあります。サービスって、結果を求めてするものではなくって、純粋に「相手の役に立つ」っていうことじゃないかしら。

無駄にティッシュ箱が当たるガソリンスタンドとかで、私はよく、このことを思い出します(笑)


※goo辞書にはこうありますよ。サービスって、本来の意味は「奉仕」なんですよね。

[名](スル)
1 人のために力を尽くすこと。奉仕。「休日は家族に―する」
2 商売で、客をもてなすこと。また、顧客のためになされる種々の奉仕。「―のよい店」「アフター―」
3 商売で、値引きしたり、おまけをつけたりすること。「買ってくだされば―しますよ」
4 運輸・通信・商業など、物質的財貨を生産する過程以外で機能する労働。用役。役務。

(goo辞書より)


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遠い遠い親戚のお姉ちゃんとは、実はあれから一度も会っていません。

私はですよ、個人的にサービスとは、「あなたのことを想ってます」ってことの表明だと思う。

やらしい意味ではなくて、人とどう向き合うかの姿勢です。

私にできることであなたの役に立ちたい、その心の交流ができた時に、サービスという形で、本当のおもてなしができるんだろうなあと。


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