見出し画像

「愛してる」と言える日が来るなんて。今夏、子どもを産みました

朝起きたら、隣にいつも赤子がいる。ずっとずっと会いたかった、私の子。生後1ヶ月の終わり頃から、少しずつ笑うようになってきて、その笑顔を見るたびに、こんなにも嬉しいものだったのかと驚きが隠せない。

世界に、こんな種類の幸せがまだ残っていたなんて。

初めまして、私の小さな男の子
小さな足と小さな手。
その先にもっと小さな爪たちが、けれどきちんとついているなんて

子育てをしている人は、みんなこの幸せを知っていたの? 世界を旅していた頃は、気づかなかった。

世界一周中のペルー・クスコ。マチュピチュに向かう前に立ち寄った丘

「もしかしたら、私の人生の未来にも」と微かには思っていたかもしれないけれど、「今だ」とは到底決められず、「私は私の人生を生きるの」とずるずる30代半ばになった頃には、妊娠がそんなに簡単じゃないという現実にも直面した。

世界一周や語学留学後、コロナ禍に移住した沖縄の海で
photo by 古性のち

願い続けて、早数年。

私はずっと、あなたに会いたかったのね。スペインの海岸線で物思いに耽ったあの朝も。ペルーのマチュピチュで風に吹かれて昼寝をしていたあの昼も。モロッコの満月の夜、砂漠を歩き、そのひんやりした感触を足裏でしっかり感じた夜も。

左:私の手 / 右:夫の手。生後9日目、退院後の実家にて

私は誰かを探していたの。まるで週末のスクランブル交差点の一瞬に、まだ見ぬ誰かの横顔を見つけたいとでも言うように。

間違い探し。臨月と、生後0ヶ月の子どもと実家で。
ようこそ世界へ、これからどうぞよろしくね

あなたは、私の中にいたのね。小さなちいさな、けれど力強い生まれたての男の子。私の目の前で空を蹴るその両足は、ほんの3ヶ月前まで私のお腹の中で私の横腹を蹴っていて。

photo by 古性のち

今でも、ふとした瞬間涙が出る。無事に生まれてきてくれて、元気にすくすくと育ってくれて、私たちにたくさんの幸せを、ありがとう。

愛してる、と頭が考えるより先に言う。口から愛しい言葉が次々と滑り出す。

ひいおじいちゃんの手と、子どものおてて
抱いてもらうことができて、よかった

1年前の今日は、まだ影も形もなかった私の子。1年前の今頃は、スペインにポルトガルにハワイに沖縄、まだ旅する仕事も趣味の移動も全力だった。

ちょうど1年前は、バルセロナでサグラダ・ファミリアが見えるホテルに泊まっていた

あの秋の終わりの日、お腹に命が宿っているのかも、と知ってから。世界がすっかり変わった、とはまだ言わない。多分変わったのは世界じゃなくて私自身。

陽だまりの中でお腹いっぱい、眠っています

愛してる、とまだ誰にもちゃんと言ったことがなかったの。二度も結婚したのにね。胸を張って言えなかった。愛することがどんなことか、指先をこぼれていく雫のように、捉えることができなくて。

世界に、こんな幸せがあるなんて。2023年のとても暑い夏の日に、あたらしい命を迎えました。
(信じられないくらい辛かったし、一生あの痛みと産後の壮絶さは忘れてやらないけれど! もう心の底から可愛過ぎて、子どもは望んでも1人だと思っていたのに、気持ち的にはもう2人目がほしいくらい)

名前は「耀(よう)」です。かがやく、日々。風の名前も音の名前も考えたけど。風より音より速く遠く、光のあなたは、きっと私の知らない世界にも行けるはず。

耀のクーファンを自分の寝床だと思っている、保護猫の音♂(おと)
同じく耀のベビーベッドを自分の寝床だと思っている、保護猫の詩♀(うた)
最初は驚いていたけれど、段々と仲良くなってきた3人
ソファの猫引っ掻きがすごいので、そろそろカバーを変えなきゃねぇ……な日常です(笑)

***

【お知らせ】
30代の葛藤の日々を綴るエッセイアカウント「伊佐知美と古性のちの頭の中」が、一周年を迎えました。一緒に運営しているのは、名前の通り旅友達の古性のちさん。こちらにもぜひ遊びにきてくださいね


ここから先は

0字

子どもが産まれるまでの特別な日々を忘れないために

いつも遊びにきてくださって、ありがとうございます。サポート、とても励まされます。