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「チャンスは準備した者に訪れる」から、私は毎日メイクをする。

「そういえば知美どこに行ったの」と探されることが、学生のころ結構多かった。「いや分かんない、どこ行ったんだろうね、あ、帰ってきた」。たいていはそういう流れで、私がどこに行っていたとか、解明されないままでスルー。

「そういえば知美どこに行ったの」と誰かが言ったときに、「このへんで一番キレイなトイレじゃない」ってぼそっと答える数人がいたとしたら、彼女たちは私ととても仲がよいのだろう。

「メイク直してるよ」ってバラされる。はい正解。ダンスをしていた頃は、ステージの前などはだいたい髪を巻き直していた。

別に誰に向けているわけじゃなくて、基本的にメイクをしている状態が好きなのだ。その日一日のテンションを決めるものがあるとしたら、気合いのレベルを測るものがあるとしたら、昔はたぶんしっかりメイクの濃さだった。(今は睡眠時間かもしれない、スッキリ起きられたらいいな、みたいな)

ヒールが1センチ高くなると、見える世界が少し変わる、と教えてくれたのは、グラマラスという雑誌だった。ヒール、メイク、巻き髪、スカート。そして生足。

若かったなぁ、と思う。でもいつでも恋ができる準備をしていた。正確に言うと、いつも恋はしていたんだけれど、新しい恋という名の、世の中の楽しい出来事に出会うため、スタートダッシュを切る準備、呼びだされたらいつでもその足で違う駅に向かえるような、身軽さ、のために。「でも今日メイクしてないから」とかがない、臨戦態勢、の準備。

特にそれが発揮されたことはない。「いつもメイクしといてよかったぁぁ」なんて、ほぼ思ったことがない。むしろ、「なんで私、毎朝毎日メイクして、夜になったらメイクを落として、また同じ面を朝つくるわけ」と、結構自分にイライラしていた。だから、せめてもの時間をということで、長い長いロングヘアを、ばっさり切ってドライヤーの時間を短縮、とかちょっとわけわかんない選択をしたことが何度かあった。

いやそうじゃないっしょ、メイクの方っしょ、髪じゃないっしょ、っていう話は、もうなんか今日は不毛だからしないでおきたい。お願いだから。

えっと、とにかく別にメイクはひとつの例であって……。

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座右の銘はなんですか、と聞かれるのって、じつは結構困りものだったりする。信念思想、ゆるぎない決意、芯、いや……私……ある? 「その時々で好きなことを全力でするために」その一心だから、私は信念思想のあるひとのそばにいることを決めた節もある。

絞りしぼって考えて、ふと思いつくのは「チャンスは準備した者に訪れる」みたいなことば。

そうだよね、と思う。

チャンスは、世の中のいろいろなところに転がっている。ただそれが、チャンスをチャンスと認識できるかどうか、とか。チャンスの流れの速さの前に、「あぁっ」とかって言って指を咥えてモジモジしちゃうか、しちゃわないか、その間に同じような属性の「ダレカ」に、とられちゃうのをよしとするかしないか、みたいな話。

装備が軽すぎるときも、飛び込むのをためらいがちだ。「あぁっアレを持っていたら応戦できたのに!」。家に置いてあったのにとか、前は持っていたのにとか、明後日買おうと思っていたのにとか。あっそっか、じゃあ残念だったね、また今度。桃って結構な速度で流れていっちゃんだね、っていう。

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チャンスは世の中にきっと溢れている。でも、ぶつかることは、じつは少し難しい。あぁあれもチャンスだ、たぶんこれもチャンスだ、ピンチはチャンスだなんて言ったところで、ピンチに出会うことすら、やっぱりこれも行動を続けていないと難しい。

チャンスは世の中に溢れている。でも、チャンスはすぐにいなくなってしまうから、頭で考えるよりも条件反射で直感に判断を委ねなければいけないこともあるし、経験が浅いと判断を間違えることもある。


いつでもメイクをしているか、私は今マックスな状態ですよと、自信を持って出ていけるかどうか。そうじゃなくても、私の場合はすっぴんの自分でいつも通りのパフォーマンスができるかどうか。見て、と言えるかどうか。(厳しいな)

結局は、チャンスがきた、と思えたときに、飛び込めるかどうかというのは、日々助走の練習をしているかどうかとか、筋トレしているかとか、流れに乗る覚悟をしているか、みたいな話に集結していく。


でも、誰かが言っていた。「選んだ方を正解にするしかない」と。そうね、何が正解かなんて、究極のところ誰にもわからない。「あれはチャンスだったね」というか、「あればチャンスじゃなかったね」というかは、私の心ひとつに委ねられる部分がある。

「チャンスがないんだ」ということばは、「まだ俺は本気だしてないんだ」みたいなことばに少し似ている。チャンスはいくらでも転がっている。それが、見えるか、見えないか。踏み出すか、踏み出さないか。動くか、動かないか。

夢を叶えるためには、夢がある必要がある。やるかやらないか、結局はそれだけが違いだと、群言堂のおんなのひとが言っていた。

あぁやっぱり明日もメイクしておこうか、と未だに結構な割合でメイクを続ける。「知美、昔よりも化粧薄くなったね」と言われる、そんな私も嫌いじゃないんだけれど。

いつも遊びにきてくださって、ありがとうございます。サポート、とても励まされます。