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アメリカ横断ウルトラすごろく

80年代、私は中学3年生でした。

さて夏休み。
今年の夏休みはようこちゃんと「受験に向けて勉強をやろう」と話しました。

朝9時になると、玄関に
「ともーみさーん」
ようこちゃんの声が響きました。私の家での勉強が始まります。

私たちは毎日一緒に、同じ問題集を「今日はここやる」と計画通りに進めていきました。

午後からは自転車に乗って、中学校のテニスコートへ行き、部員の一年生にテニスを教えました。

家に戻ると2人で再び机に向かいます。
6時になるとようこちゃんは帰っていきました。
その後夜はオリンピックに釘づけ。
大体そんな毎日を過ごしていきました。

さて、ある日は、2人で学校から出ている社会の宿題をすることにしました。
宿題は「調べたい国をひとつ決める。その国を、図を入れながらよく調査してまとめる」というようなものでした。

一緒に作成することにしました。

調べる国を決める際、その時ちょうど行われていた「ロサンゼルスオリンピック」と、毎年夢中だった「アメリカ横断ウルトラクイズ」というTV番組から、私はアメリカを熱く提案し、やることになりました。

早速、私たちは城端線(じょうはなせん)に乗り、はるばる私たちの大都市「高岡」まで行って、旅行代理店のアメリカのパンフレットを沢山持って帰ってきました。

A3画用紙を4枚、丁寧にテープで貼り合わせると、まずそこに大きなアメリカの形を描きました。
毎年夢中になっていた番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」で聞いたことのある都市の写真などを、パンフレットからどんどん切抜き、都市がある位置にペタペタ貼りました。

スタートはサンフランシスコ、それからロサンゼルス、ゴールはニューヨークの自由の女神です。
「どういうルートで行こうか?」
「ラスベガスで滞在しちゃおう」
「ここの素敵なホテルの写真も切り抜いちゃえ」
「料理の写真も貼ってみよう」
「ナイアガラの滝に圧倒されちゃえ」
「広大な土地で叫ぼう」

夢中になって貼っては描いているうちに、大きなすごろくみたいなのが出来ました。
本当にアメリカ横断したみたいな気分になりました。
「私たち、夏休みの間旅行してるみたいね」
とても満足な作品が出来ました。

そんなこんなで充実の夏休みが終わり、例の私たちの社会の作品は、社会科教室に大きく飾られました。ひときわ目立ちます。
見ると旅行気分。楽しい。評判も上々です。
そして、社会科の普段気難しい先生に、作品の前に来るよう呼ばれました。
「褒められちゃうのかな〜」
「きっとね」
ニヤニヤしながら先生のところに行きました。
すると、先生は作品を棒で指しながら、

「この宿題ね〜大変見やすいし目を引くね。
でも、
君たちはなぁんにも調べてないね。
ラスベガスで遊ぶとか、滝を見て圧倒されちゃったとか、山に叫ぶとか、
ホテルの写真も料理の写真も…
あれもこれも宿題の意図と違うよね〜?
分かる?大体、図書館とか行ったの?
…次は気をつけなさい」

あきれ顔で言われ、去って行ってしまいました。
そこで初めて、2人は「あ…!そうだった」と顔を見合わせました。そして、笑ってしまいました。
何にも調べてない!

まぁ良いよね、楽しかったんだから。
あれを見ると誰でも気分はアメリカ旅行。

そんな中学3年生の夏でした。

今日も、私の思い出話にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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