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失敗法則①『愛情と私物化は紙一重』

先日、成功や失敗の法則について書きました。人は、成功すると後付けでもっともらしい理由を創作するものですが、成功要因なんて『偶々(たまたま)』でしかありません。本棚にある成功法則本は、ブックオフかメルカリ行きで構いません。

『賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ』と、ドイツの鉄血宰相ビスマルクは言ったそうですが、失敗の歴史(他人の失敗)、失敗の経験(自分の失敗)からしか、人は学べないのだと思います。

なので、少しでも参考になればと、私が見聞きした、あるいは私自身の失敗経験を、ここで暴露していこうと思います。この「他人の失敗(歴史)」を見て、少しでも事業の参考にしてください。

①精神的”公私混同”

これは、会社のお金をプライベートで使って経費扱いするとか、そんなことではありません。自慢ではありませんが、これまで2回税務監査が入って、一度もいわゆる「お土産」(追徴課税)を払った経験はありません。2回ともゼロです。マイナスは、数日間、会議室をタダで占領されたことくらいです(笑)。

それは、ただただ、その当時の経理担当者が非常に優秀だったからです。私のリクエストにも的確に素早く応えてくれて、とても助かっていました。前月の試算表なんて、その月の2日に出してくれていました。

そういう、わかりやすく、また修正しやすいものではないのです。もっと精神的なもので、会社を自分の子供のように思うというか。そういうと、会社に対する愛情の話で、少なくとも経営者なら誰もが持っているはずのことですが、結局、それって「私物化」とどう線を引けるんだということです

そうです。会社に対する愛情は、ともすれば私物化と表裏一体で、実は危ういものです。

ひとつ例を挙げましょう。

個人の金で危機を乗り切る

長く会社をやっていると、山あり谷あり、いろんなことがあります。その都度、何らかの方法で切り抜ける必要があるわけですが、私は、会社で起きる問題のすべては売上(利益)で解決するという信条があります。たぶんそれは正しい。それだけに、マーケティングの勉強を疎かにする会社は、時勢に流されるまま、時代の変化になす術なく流されてしまいます。

深い谷に落ち込んだ時も、ここを突破するために人材を増やそうとして、求人広告を出し、社員の士気を気にしてボーナスを出し、社員旅行をしました。通常は逆ですが、私はデスバレー状態の中で思いっきり逆張りをしました。

しかし、会社にはそんな余分なお金はありませんので、それらを個人のお金でやりました。私の自腹です。もちろん、社員には言いません。経理と税理士には言って、とりあえず一時的な処理をしてもらいましたが、とにかくそんなギリギリの綱渡りを何度かやりました。

その「何度かやる」というのは、最初にそれでうまく行ってしまったということなんですね。人材を増やして、全社一体でその谷を切り抜ける。そう聞くと、気持ちよさそうでしょ?気持ちいいんです、実際(笑)。

その小さな成功体験が、また同じ状態になったときに、同じことをやってしまうということになるのです。バカですね、ほんとに。

そうなると、だんだんと自分の中で公私の区別がつかなくなります。立て替えたものも、だんだんと「返してもらわなくてもいいよ」と。だって、会社と自分の線引きが曖昧になってますから。

最終的に、私は会社に2,000万くらいを貸すということになります。当時2,000万円の資本金でしたので、役員借入ではなく、それを出資として4,000万円にしておけば問題なかったのですが、どっちにしても自分の子供を救うためには同じこと、という感覚ですね。

公私混同型企業は社長も社員も疲弊する

先日書きましたが、今、銀行借り入れの個人保証を抜く動きがあって、そのようなガイドラインもあります。その条件として「公私混同していない会社」(会社と個人を区別できている会社)というのがあります。多額の役員借入がある、逆に役員に貸している、それが何年も返済しないままになっている、そんな「線引きができていない」会社は、個人保証を抜く対象にはならないということです。

つまり『あなたの会社は、あなた個人と同じようなもので、会社の借金も個人の借金も同じでしょ』というわけです。要は、公私の区別がつかない会社は、法人と言いながら個人事業と変わらないということです。

経営者からすると、何の悪気もなく、会社に負担をかけまいとしているのですが、それによってこのように評価されてしまうわけです。

それだけではありません。社長がその感覚になると、社員にも言外にそれ(会社への献身)を要求してしまいがちです。言葉には出さずとも、です。社員は社長の姿勢や態度を見ているものです。それでは社長も社員も疲弊します

歯車がかみ合っているときはいいのですが、一度歯車がずれると、その感覚を正さない限り、ずれっぱなしになります。「谷」に陥っている時なので、立ち止まって考える余裕もない。社員からすれば、会社だけでなく社員も私物化するような、そんな感覚です。

結果、徐々に社長と社員の意識が離れていきます

愛情と私物化は紙一重です。私の場合、人一倍そのような感覚が強かったのかもしれません。誰よりも社員を愛している気持ちがあるときに、ある女性社員から『社長、もう少し社員を愛してください』と言われて、心底びっくりしたことがあります。

あれは渾身のメッセージだったんだなと、今となっては思います。

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