『越境EC』のハードルを下げる方法
以前の記事「越境ECの”不都合な真実”」で、越境ECや海外でのリアル販売に関する現実を少し辛辣に書きました。辛辣と言っても、実は現地バイヤーはもっと辛辣で、日本の行政から”アゴアシ付き”で招待されるから日本の商談会などにはやってきますが、それがなければ絶対に来ないというのが本音です。日本人が想像するよりも格段にビジネスライクです。
彼らは「いい商品」にはほぼ興味がなく、「売れる商品」「儲かる商品」のみにフォーカスしています(当然と言えば当然ですが)。本気で売りたいのなら、彼らをどれくらい儲けさせることができるかに、こちらもフォーカスしないといけません。
しかし、今後のことを思うと、海外でテストくらいはしてみたいと考える人も多いと思います。今はコロナでリアル販売はなかなか自由がきかないですが、ネットならできることが多くあります。
クローバルなプラットフォームに出品
もっとも手軽なのは、AmazonやeBayなどの国際的なプラットフォームに出品することです。アジアでは、Qoo10と言ったものもグローバル対応をしています。手軽と言っても、国内販売にはないハードルはそれなりにありますが、自社ECで本格的な受け皿を作ることに比べると、参入はしやすいはずです。
例えばAmazonの場合、Amazon.co.jp(日本)とAmazon.com(グローバル)への出品の選択肢(もちろん、その他の国に法人を作って、その国のAmazonに直接出品する方法もありますが、今回は日本からと言う前提です)、どちらも海外への販売は可能ですが、Amazon.co.jpの場合は、海外在住日本人がメインターゲットです。ただしこれは国内市場の延長であり、本当の意味で越境販売するなら、Amazon.comでFBA(フルフィルメント)を使うか、現地の代行業者と組むかです。
また、特定のツールで自社ECを構築し、それをAmazonやeBayと連携させることも可能です。これには少し高度なスキルが必要です。グローバルなプラットフォームへの出品、自社ECとプラットフォームの連携などは、具体的にサポートしてくれる業者も複数あります。
海外在住日本人を対象に
上に少し書いたように、最初は海外在住日本人をターゲットにするのもいいと思います。Amazon.co.jp(日本)だと、配送地域などのファイルを上書きすることで対応可能です。
あくまで国内市場の延長ではありますが、2020年時点で約135万人、そのうちアジアは約40万人の海外在住邦人がいます。コロナの影響もあり(もう規制が解かれている国も出てきていますが)、自由に国を跨ぐことが難しい今は、特にネットで日本製品を買う人が多いと思います。
今は海外でもかなり日本製品(特に食べ物)は手に入りますが、現地では手に入らないものもまだまだ多くあります。
ポップアップに出品
行政や公的団体が主催する現地販売会(今はオンライン商談会が多いかもしれません)が、結構な頻度で行われています。主にアジアやアメリカ、ヨーロッパなどの大手デパートの中にスペースを借りて、「ジャパンフェア」などと銘打つあれです。
補助金なども絡むので、一度JETROや中小機構、各自治体などに問い合わせてみてはいかがでしょうか。ただし、「補助金が出たらやる」のなら、成功する確率はゼロに近いのでやめておきましょう。
越境に潜むリスク
リスクはさまざまありますが、商品に対するものは、基本日本国内と変わりありません。
ただし、「社会基盤の異なる国」でのビジネスは、大きなリスクが潜んでいるので注意が必要です。例えば、資本主義と共産主義など、根本的な制度が異なる国は、一夜にして今までの努力が水泡に帰す危険性が常にあります。
私は以前、ある国のデパートに並べていた顧客の商品を、一夜にして全撤去されたことがありました。理由は大規模な反日デモが起きたからです。撤去と言うのは、こちらに返品されるということではありません。現地の人間が山分けしているのかもしれないし、実際に廃棄されたのかもしれないけれど、とにかく戻ってきません。
私の場合、その時にすでに現地のバイヤーに買い取ってもらっていたのでダメージはなかったですが、バイヤー(現地人)はダメージです。また、現地で知り合った日本の大手健康食品企業の社長は、商品が通関でストップして長期間動かず、結局賞味期限切れで廃棄処分と言っていました。
経験のある人ならわかると思いますが、海外のデパートの棚にリストされるまでは、かなりの時間と労力を要します。商品もどれだけプレゼンしたかわかりません。それが、政治的な事情で一瞬で崩れ去るリスクがあるなら、その国は最初から避けた方がいいと私は思います。
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