フランス旅行記 リヨン篇 5
豊かさとは
ラッシェルとジャン=マリーのマンションに到着。彼らはリヨン郊外のヴィロバンヌという街に住んでいます。ナディア、クリストフという2人の子供は成人して巣立っていきました。それだけの時間がながれた。それぞれの近況から思い出話、ラッシェルのママのこと。夕飯を食べながらずっと話し込んで、就寝したのは深夜すぎ。フランスにいたころ、お金はなかったけど、よき友人たち、よき師、よき隣人に恵まれて充実した時間を過ごすことができたことはなんといっても幸運であったし、その関係が今現在も続いていることは実にありがたいことです。
わたしはもともと不器用で、タテ型社会にはなかなかなじめず、みんなと同調してうまく進んでいくというのが難しかった。あっちにぶつかりこっちにぶつかり、ぶつかってみて初めてわかるような進み方で、回り道遠回りの連続。見方を変えればその分いろんな経験をしたし、納得する時間を持つことができたわけです。今にして思えば、回り道や遠回りはロスタイムではなく貴重な時間であったと。
↓ ラッシェルのマンションからみたヴィロバンヌの風景。向こうに古い工場の屋根が並ぶ。
旧市街へ行こう
一夜明けて。旧市街へ行こう。フランスは紀元前後古代ローマ帝国の属州でありガリアと呼ばれていました。リヨンはガリア時代に首都であった街。ムルグドゥヌムというラテン名を持ちます。旧市街にはローマ時代の遺跡やフェルビエールの丘、大聖堂もある。そしてたくさんのお店があってもちろん楽しい。やっぱり旧市街へ行かなくちゃ。リヨンの人々は旧市街のことを「古いリヨン」(ヴュー・リヨン Vieux Lyon)と呼びます。くねくねと曲がりこんだ小道。独特の街並み。旧市街へ散策にでかけよう。
建物の壁の色を見てください。化学染料がなかった昔は土から天然顔料をとって使用しました。
リヨン (Lyon) は Lion。黄金のライオンがいます。
サン・ジャン大聖堂 ( Saint-Jean-Baptiste )
こちらはサン・ジャン大聖堂。リヨンで最も古い12世紀に作られた大聖堂です。外側はゴシック。内側はローマン。中央の窓が素晴らしい。なかなか一枚の写真では収まり切れないほど。フェルビエールの丘にあるフェルビエール・ノートルダム大聖堂と対になっており、丘の上と丘のふもとにそれぞれが位置している。冬に行われる「光祭り」の主役となる教会。
向こうに見えるのはフェルビエールの丘にあるノートルダム大聖堂。サン・ジャン大聖堂の広場からみたところ。
ローマ劇場
フェルビエールの丘には2000年よりも昔、古代ローマ人が作った大型の円形劇場が残っています。彼らは紀元前の時代に上下水道まで作るという技術を持っていました。石でつくられた円形劇場は音響の点でも優れており、電気もマイクもない昔、演劇や討論会が行われていたところ。リヨンには紀元前1世紀に作られた大型劇場と紀元1世紀に作られた小型劇場が良い状態で残っています。大型劇場は現在でも夏の野外演劇やコンサートに使用されているところから、当時の技術の高さがうかがい知れます。
古代ローマ人とは。かなり大まかな定義ではありますが、思うに。
・ラテン語を解し、読み書きそして話す。(言葉)
・穀物として小麦を栽培し、パンを作って食す。(主食はパン)
・ぶどうを栽培し、ワインをつくる(葡萄を醸造する技術)
ローマが属国としたガリア ( Galia ) はいまでいうフランスでありますが、このころのフランスは、ゴール ( Gaule ) という名前でした。つまりフランスの古称。ゴールに住んでいる人々、ゴール人はゴロワーズと呼ばれ、これは今でもたばこの名称になっています。日本も昔は「やまと」といったような感じでしょう。
フェルビエール・ノートルダム大聖堂
フェルビエールの丘にたつ大きな教会、19世紀に建てられたロマネスクとビザンチン様式による教会で聖母マリアに奉献されたもの。リヨンは16世紀にペストが大流行して悲惨な状態を経験しましたが、街が救われたことを感謝して建てられたもの。当時は大量のラベンダーを炊いて殺菌消毒をしたという話を聞いたことがあります。
フェルビエールの丘から見たリヨンのパノラマ。街が一望できるところ。
お店をのぞいてみよう
旧市街にはたくさんのお店があります。それぞれのお店のセンスが輝く陳列。
これはなんでしょう。ソーセージかなにか?いいえ、これは中身チョコレートです。思わずだまされてしまいますが。
当店のおすすめがいい味をだしています。
サッカーのワールドカップの年であったのでこちらのかんばん。
ソーヌ河岸では日曜市場が開かれています。
紀元前からローマと深いつながりをもったリヨン。旧市街でその歴史をたどって散策。洋の東西をとわず、長い時間によって濾過されて結局何が残るのかといえば、それは文化。そして現代にも受け継がれていく。これも豊かさのかたち。
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