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多様性と科学的アプローチ〜『Dr.STONE』と『ローマ人の物語』より〜

今更なんでしょうが、子どもたちに勧められて観た『Dr. STONE』が面白くてハマってしまい、お盆の2日間でシーズン1コンプリート。

武力帝国と科学王国


印象的だったのは、「武力帝国」は若者の精鋭だけの石化を解き、新しい世界を作ろうとしているが、「科学王国」の千空は、70億人全員の石化を解くと宣言しているところ。


武力帝国の氷月は「科学王国の奴らは、一人を見捨てることもできないよわっちいやつだ」といいます。

千空は「多様な人たちがいることが強さなんだ」といい、誰にでも役割を与え、いつの間にか村のみんなが同じ方向を向いていくという雰囲気を作っていきます。

見ようによっては、「武力帝国」はネアンデルタール人で、「科学王国」は、ホモ・サピエンスという捉え方もできるような気がします。


「信じられないような長い道のりでも、トライ&エラーを繰り返し、一つずつクリアすれば、必ずゴールに辿り着ける」と千空は信じています。
そして、それが科学だと。

「科学」は「共同主観」とも置き換えられそうです。
そして、文化や宗教とも。

共同主観を多くの人と共有できたことが、ホモ・サピエンスが他の人類に勝利した所以と言われています。ただし、「共同主観」は時に戦争を引き起こす種ともなりましたし、今でもそうですよね。


共同主観の背景には「こうなりたい」というパッションがあるはず。
誰もが戦争はいけないと思っているにもかかわらず、戦争は無くならない。

なぜなんでしょう。

古代ローマの強さ

ここしばらく塩野七生さんの『ローマ人の物語』を読んでいます。
(全34巻。今26巻終わったばかりです。先は長い〜)

ローマ帝国が2000年も続いたのは、敗戦した国や部族の文化や習慣をそのまま残すという融和政策を採ったことが大きかったと言われています。

首長も、被征服側の首長そのままにしたケースが多かったそうです。これまで同様の生活に加え、他民族からの攻撃から守ってくれる。さらに、被征服者であっても、ローマ市民になれる、皇帝になれる道筋まで作った。

そうなると、むしろローマ帝国の中にいた方がずっと安心して豊かに生活できるわけです。

ローマという巨大なファミリーの一員として、被征服者も征服者もない、奴隷であっても市民になるチャンスがあるというような、多様な人たちに等しくチャンスがあることが当然だったことが、ローマの強さの一つだったのではないかと思います。

その背景にはローマは多神教の国だったことも影響しているのかもしれません(4世紀後半以降キリスト教が国教となりますが)。

いずれにしてもその開明的な考えと高度な科学技術、そして何より人心を掴む術に長けていたことに驚かされます。一神教のキリスト教国にならなかったら、この世界はずいぶん変わっていたのかもしれないなどと、”if”に想いを馳せたりもします。

終戦記念日に

思えば、今の世の中が、人類史上最も進歩的で開明的というのは実際にはあり得ない幻想なのかもしれません。

今ここにあるものが正しいのかどうか、いつでも足元から疑ってかからないと、人はすぐにサボっちゃう生き物ですし(涙)。


千空の言っているように「多様な人がいることが強さなんだ」ということを思い出しながら、「よりよいビジョンを描き、トライ&エラーを繰り返していけば、必ずゴールできる」という科学の原理をもう一度見直す必要があるような気がしています。

日々の些細なことから、会社の経営、そして社会や世界のことまで、実は繋がっていて、みんなが日々の些細なことを見直していくだけでも、結構世の中違ってくるんじゃないかなとも。



終戦記念日に、そしてお盆に、ご先祖さんの知恵に感謝しながら、
人間のありようを今一度考えたいと思います。


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