真鶴町から学ぶ、小さくても強いブランドをつくるヒント
神奈川県の真鶴町という町をご存じですか?
先日に建築家の方と話をしていて、神奈川県真鶴町の魅力を教えてもらいました。
条例に「美の基準」を定めて、まちづくり・景観づくりをしているとのことです。
真鶴町は、この数年は移住者が増えており、その理由も「美の基準」をもとに守り続けてきた風景と文化にあるとのこと。
たしかに、町の条例に「美」という定性的で捉えどころが難しい判断軸を持ち込んでいる取り組みが興味深く、ずっと気になっていたので、足を運んでみました。
訪れてみて、この美の基準づくりを軸にしたまちづくりの取り組みは、
「表面的にはデザインを整えてトレンドに適応している風」
といった表面的なブランドづくりから抜け出すヒントが詰まっていると感じました。
本日は真鶴町の「美の基準」から学ぶブランディングについて書いていきます。
美の基準とは?
そもそも美の基準とは何かを引用させていただきながら整理していきます。
美の基準は、住民が暮らしを営む中での工夫や、日々感じている「真鶴らしさ」をもとにつくられたとのことです。
なぜ美の基準が必要になったのか?
外からの動き・圧力に対して、自分たちの大切にし続けたい風景を守るために「自分たちにとっての美」を言語化した背景があったのですね。
美の基準は答えを提示するわけではない
このような町を構成する美を表現したキーワードが抽出されているとのこと。
関連書籍の中には、基本的精神として下記のように書かれています。
何とも文学的な表現で、何か数字の基準や答えを提示しているわけではありません。
答えがないものの、町の風景の中には、美の基準が反映されていると感じる要素が多々ありました。
美の要素:相応しい色
美の基準の冊子1ページ目には、このように書かれているそうです。
新たに建物をつくる際には、できる限り「美の基準」を計画に取り入れることを推奨していて、今でも立ち返って対話がされることがあるそうです。
曖昧さがあるから対話が生まれる
見た人が自分で考えて、対話をしながらつくれる「曖昧さが残った基準」は非常に大切だと思っています。
ブランディングのプロジェクトでは、デザインはこのルールに従ってくださいね、というブランドの説明書のようなものをつくることが多くあります。
ブランドガイドブック、デザインガイドラインと呼ばれたりします。
このような定めが必要ないとは思っていませんが、内部の人が自分たちゴト化はしにくいなとと感じることが多々あります。
ただ、ルールを敷いて、それを守ってねと言われているだけだと、そのルールを守る意味がわからない。
美の基準は、あえて曖昧さが残されていることがポイントだと考えています。
例えば、「舞い降りる屋根」というキーワードがあります。
「舞い降りる」から想像する屋根のイメージは、人によって違いは出るはずです。
イメージや解釈の違いはあるものの、
「町にとっての美しい屋根とは何か?」
「それが舞い降りるとはどんな美しさか?」
といった問いと向き合うことで、深い対話が生まれるのだと思います。
小さなブランドが美の基準を定める意味
真鶴町は、「自分たち」で「美」の基準をつくり、守るための取り組みを続けてきたことで、今も豊かな街並みを保持して、最近は若者を町に惹きつけることにもつながっています。
自分たちが大切にしてきた美しい基準をつくり、それを丁寧に守っていくことは、最終的にブランドの独自性につながる。
小さなブランドこそ、関わる人たちが自分ゴトだと捉えることができる美の基準を定めることが、選ばれる理由に変わっていくのではないでしょうか。
規模が大きくなくても、自分たちの美の基準をもち、豊かさを追求するブランドを増やす仕事をしていきたい…
と舞鶴町の風景を眺めながら考えてきました。