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真鶴町から学ぶ、小さくても強いブランドをつくるヒント

神奈川県の真鶴町という町をご存じですか?

先日に建築家の方と話をしていて、神奈川県真鶴町の魅力を教えてもらいました。

条例に「美の基準」を定めて、まちづくり・景観づくりをしているとのことです。

真鶴町のホームページ画像を引用

人口は約7,000人
面積は7.05㎢(神奈川県内で2番目に小さい)
東京駅から新幹線で1時間半ほど

真鶴町に関して

真鶴町は、この数年は移住者が増えており、その理由も「美の基準」をもとに守り続けてきた風景と文化にあるとのこと。

たしかに、町の条例に「美」という定性的で捉えどころが難しい判断軸を持ち込んでいる取り組みが興味深く、ずっと気になっていたので、足を運んでみました。

港から撮った街の風景

訪れてみて、この美の基準づくりを軸にしたまちづくりの取り組みは、
「表面的にはデザインを整えてトレンドに適応している風」
といった表面的なブランドづくりから抜け出すヒントが詰まっていると感じました。

本日は真鶴町の「美の基準」から学ぶブランディングについて書いていきます。

美の基準とは?

そもそも美の基準とは何かを引用させていただきながら整理していきます。

美の基準は、住民が暮らしを営む中での工夫や、日々感じている「真鶴らしさ」をもとにつくられたとのことです。

美の基準は「町の良いところ」を「美しいもの」と定義し、「場所」「コミュニティ」「眺め」など8つの基準に属する

タウンニュース 言葉で守る町並み真鶴町 『美の基準』が30年

なぜ美の基準が必要になったのか?

通称「美の条例」と呼ばれるこの条例は、1980年代後半に真鶴町にも押し寄せてきたリゾートマンション建設の波に対抗するものとして93年に制定、翌年1月から施行された。当時、国や県は内需拡大のためマンション建設を推進していたが、住民間では反対運動が巻き起こっていた。町の良さを守ろうと、「合法だが不当」な開発を阻止するため「どのようなまちにしていきたいか」を明らかにする必要があった。

タウンニュース 言葉で守る町並み真鶴町 『美の基準』が30年

外からの動き・圧力に対して、自分たちの大切にし続けたい風景を守るために「自分たちにとっての美」を言語化した背景があったのですね。

美の基準は答えを提示するわけではない

このような町を構成する美を表現したキーワードが抽出されているとのこと。

美の基準が生み出すもの -生活景の美しさ-

関連書籍の中には、基本的精神として下記のように書かれています。

建築は風景を支配しないよう、人間の大きさと調和し、周囲の建物を尊重すること。海と緑の自然およびまち全体と調和すること。建築材料は極力真鶴町のものを使うこと。さらには建築がコミュニティを守り育て、最終的には美しい眺めを育てることが基本的精神である。

書籍:美しいまちづくり

何とも文学的な表現で、何か数字の基準や答えを提示しているわけではありません。

答えがないものの、町の風景の中には、美の基準が反映されていると感じる要素が多々ありました。

美の要素:相応しい色

シャッターも相応しい色としてカラフルになっているのかな
港沿いの道の外装も相応しい色になっているのかな

美の基準の冊子1ページ目には、このように書かれているそうです。

「本デザインコードは、町、町の人々、町を訪れる人々、町で開発しようとする人々がそれぞれに考え、実行していくべき小さなことがらを一つひとつ綴っています。」

新たに建物をつくる際には、できる限り「美の基準」を計画に取り入れることを推奨していて、今でも立ち返って対話がされることがあるそうです。

曖昧さがあるから対話が生まれる

見た人が自分で考えて、対話をしながらつくれる「曖昧さが残った基準」は非常に大切だと思っています。

ブランディングのプロジェクトでは、デザインはこのルールに従ってくださいね、というブランドの説明書のようなものをつくることが多くあります。

ブランドガイドブック、デザインガイドラインと呼ばれたりします。

このような定めが必要ないとは思っていませんが、内部の人が自分たちゴト化はしにくいなとと感じることが多々あります。
ただ、ルールを敷いて、それを守ってねと言われているだけだと、そのルールを守る意味がわからない。

美の基準は、あえて曖昧さが残されていることがポイントだと考えています。

例えば、「舞い降りる屋根」というキーワードがあります。

「舞い降りる」から想像する屋根のイメージは、人によって違いは出るはずです。

イメージや解釈の違いはあるものの、
「町にとっての美しい屋根とは何か?」
「それが舞い降りるとはどんな美しさか?」
といった問いと向き合うことで、深い対話が生まれるのだと思います。

屋根の色味は特徴的で、温かさを感じる風景でした。港の逆を眺める山も美しかったです。

小さなブランドが美の基準を定める意味

真鶴町は、「自分たち」で「美」の基準をつくり、守るための取り組みを続けてきたことで、今も豊かな街並みを保持して、最近は若者を町に惹きつけることにもつながっています。

自分たちが大切にしてきた美しい基準をつくり、それを丁寧に守っていくことは、最終的にブランドの独自性につながる。

小さなブランドこそ、関わる人たちが自分ゴトだと捉えることができる美の基準を定めることが、選ばれる理由に変わっていくのではないでしょうか。

規模が大きくなくても、自分たちの美の基準をもち、豊かさを追求するブランドを増やす仕事をしていきたい…
と舞鶴町の風景を眺めながら考えてきました。

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