見出し画像

オランダの建築家グループ Space and matterに学ぶ、実証実験のコツ

マーケティングの世界では、「実証実験を行う」「テストマーケティングを行う」といった言葉が使われます。

これからの目的は「意味のある検証」をすることです。

しかし、多くの実証実験は何となくエビデンスを集めることに留まってしまうことが多々あると感じています。

そんなことを考えながら、欧州の実証実験に関するプロジェクトを調べていたところ、アムステルダム市と協働をしながらサステナビリティのプロジェクトを先導している「Space and matter」という建築家グループのことを知りました。

具体的なプロジェクト設計をトレースしながら、学びをまとめていきたいと思います。

サステナビリティの実証実験地区:De Ceuvelのプロジェクト設計

「Space and matter」がプロジェクトデザインをしたアムステルダムのサーキュラーエコノミーの実験区De Ceuvel」を訪れてきました。
アムステルダム中央駅から電車で5分、徒歩15分ほどの少し離れた場所にあります。

海沿いの土地にボート(船)がオフィスとして使われている不思議な空間です。写真にあるのはオフィスです。

使われなくなったボートを再利用してサステナビリティの実証実験地区をつくり、企業・市民などが集まる拠点をつくっている
画像:Space and matterのサイトより引用


元々造船所だった地域の土壌汚染の課題解決を目的にコンペがスタートしたようです。

土地が使われなくなっていくうちに船から流れ出た油などで土壌が汚染し続けていることをアムステルダム市が問題視し、民間企業へ再開発のアイデアを募ったのがはじまりとのこと。

この課題に対して、Space&Matterが斬新な実証実験アイデアを持ち込み、地域再生のプロジェクトを動かします。

どのようなプロジェクト設計をしたのでしょうか?

実証実験の設計ポイント①:今までの常識とは違うアイデアをもって考える

実証実験のアイデアは、前提の仮説やアイデアが大事です。

本当にこのアイデアは成り立つのか?
でも成り立ったらすごい可能性がありそうでは?
と関係者が感じられる仮説があることが重要だと考えています。

Space&Matterが持ち込んだのは、「埋め立てをしないというアイデア」です。

ダメになっている土地を何とかして欲しいという依頼なので、普通であれば土地を埋め立て、新たに建物を立てる手法をとるはずです。

Space&Matterは、そんな普通の手法を提案しなかったとのこと。

大学と提携し、土地の毒素を抜く植物を計画的に植えていく手法を使って、埋め立てずに場を成り立たせるアイデアを出したそうです。

植物の活用に関して解説がされている看板

このアイデアが成り立てば、地球・地域への負荷は減らせるはずです。

さらに、建物は、元からあったハウスボートを利用することとし、地球にも財務的にも負荷をかけずにプロジェクトを設計する案を出したようです。

Space&Matterのサイトより引用

・植物での土地の毒素を浄化するアイデア
・ハウスボートの再活用するアイデア
この2つのアイデアの検証となれば、アムステルダム市も可能性を大きく感じたのではないでしょうか。

De Ceuvel内のハウスボートのオフィスの電力は、100%再生可能エネルギー(ソーラー発電)で賄わう理想のエネルギー循環をつくり出す仕組みにいなっています。
Space&Matterのサイトより引用


ここまでの話をまとめると
「検証できたら社会や業界に影響を与えるアイデアは何か?」
を考えることの重要性です。

実証実験の設計ポイント②:持続可能なエコシステム全体像を描いて示す

さらに、提案されたビジネスモデルも一般的なテナント募集の手法を取らなかったようです。

何を提案したか?

サステナビリティを事業テーマとするスタートアップが入居し、交流や実証実験を行うエコシステムを構築することで、立派な店舗を入居させなくても持続可能なビジネスモデルを構築する提案をしたようです。

1. オフィス入居費で安定収益を得る
2. 先進的な事業者が集まれば、関係者が定期的に集まり場の活気が出る
3. 国や地域にとっても意味ある活動が行われる場になる

つくり出した循環

結果的に、サステナビリティの実証実験区としてのブランドを確立し、政府関係者、外部からの視察者、市民などが集まり、交流をするイベントも定期的に行われているようになったとのこと。

夏のイベント時は、盛り上がりを見せている写真が上がっていました。

ここから先は

1,083字 / 4画像