薄っぺらいマーケティングをなくすために。マーケターが持ちたい社会・文化への眼差しについて
私、実は大学時代は文化人類学を学んでいました。
所属は経営学部でしたが、ゼミは一般教養科目の文化人類学を選びました。
文化人類学が大切にする、現場に住み込むフィールドワークという手法は、座学に飽きていた自分にとって新しい発見の宝庫で、のめり込んでしまったのです。
フィールドワークで人間観察する時は、何気ない日常の行動や言葉をキャッチして、その言動がどのような社会・文化背景から出てきているのかを考えます。
文化人類学を学んで身につけることができたことはなんだったのかを振り返ると、「人の行動の根底にある価値観や動機を捉える思考」が身についたことだと思っています。
そして、今はマーケティングにのめり込んでいます。
当時はマーケティングと文化人類学を繋げよう!
と考えていなかったのですが、今振り返ると、文化人類学を学んでいてよかったと思うことが多いです。
なぜか?
マーケティングという領域を進化・深化するヒントが文化人類学にはあると考えているためです。
最近感じているマーケティングの課題
一言で表すと、安っぽいマーケティングが増えていることが課題だと感じています。
語弊があるかもしれませんが、これは自分自身への自戒を込めて。
どんな社会や文化をつくっていきたいか?という問いがなく、
・フレームワーク分析から戦略を整理して、
・わかりやすいストーリーをつくりプレゼンをして予算をとり
・GoogleやMetaやXなどのアルゴリズムに合わせて広告を回す
ことがマーケティングの仕事になっていないでしょうか?
マーケティングの醍醐味は、
・市場、社会、文化を俯瞰的に捉えて
・企業のバリューチェーン全体を最適化して
・顧客が抱える課題を解決する→市場を動かしていく
このダイナミックさにあると自分は考えています。
マーケターが持ちたい眼差しについて
マーケッターは上記の社会視点、市場視点、顧客視点、企業視点をバランスよく分析できることが理想。
しかし、背景(オレンジ色)の経済・社会・文化の部分が抜け落ちがち。
経済・社会・文化背景により人の行動は変わるし、人の行動が変われば企業の戦略も変わってくるので、その根本を理解することは一番大切なはずです。
経済・社会・文化視点が抜け落ちると陥りやすいマーケティング近視眼
マーケティングの施策を考える時に、経済・社会・文化の視点が抜け落ち、市場・顧客のわかりやすい行動しか捉えられなくなってしまうことが多いなと感じています。
企業の固定化された視点や、ターゲットカテゴリーとして世の中で語られている視点でしか社会を眺められなくなってしまいがち。
だから、この薄っぺらさをなくすために文化人類学や社会学はヒントをもらえると思っています。
なので、このようなTweetをしました。
文化人類学や社会学を学ぶマーケターは増やしていきたい。
文化人類学の視点を整理してみる
本質的なことを考えられるマーケターを増やすために、文化人類学から学べる視点を2つ図解してみました。
ユーザーの行動の背景にある社会・文化背景を想像する
なぜユーザーはこんな行動をとっているのか?
なぜユーザーはこんな発言をしているのか?
といった問いを自分自身に投げかけ、ミクロ視点(顧客視点)とマクロ視点(市場・社会・文化視点)を往復して考え、繋げて思考する癖をつけたい。
フレームワークだと、STP→ペルソナを分析する視点と、PEST分析を往復して考えるイメージになるかと思います。
※下の図のピンクと緑の部分
マーケターがマーケティング近視眼に陥らないためには、マクロとミクロ視点を往復して統合する視点が大事なのだと自分は考えています。
フレームワークだけ使っていると、何となくまとまっているけど深くない企画が生まれがちです。
なので、文化人類学を学び、文化人類学の視点をマーケティングに持ち込んで、思考の深さを出していきたい。
文化人類学とマーケティングをつなぐ書籍
オススメしたいのが「文化の力」という書籍です。
著者の青木さんは、広告会社に勤めた後に、大学で文化的な視点からブランドや広告について研究をし、マーケティングと文化の間にあるものを理解し、探求し、新たなマーケティング原理としての「カルチュラル・マーケティング」を提唱されたとのことです。
マーケティングと文化の関係性を考えるヒントが詰まっています。
ただ、決して、短期的に活かせるフレームワークや事例が紹介されているわけではないです。
自分が一番好きな言葉が下記の引用部分です。
文化とはなにかを考え直す
自分たちのマーケティングが文化にどんな影響を与えたいのか?を問うこと大事であることを教えてもらえます。
発想法 改版 - 創造性開発のために
文化人類学の特徴である野外科学の思考法を学ぶテッパンは「発想法」
はじめての構造主義
文化人類学の概要を掴みたいという方は、わかりやすい解説本として「はじめての構造主義」がオススメです。
他にも、菊と刀、忘れられた日本人、タテ社会の力学あたりは、社会構造や文化構造を読み解く視点を学ぶのに役立ちました。
社会学や文化人類学を学んでいたor学んでいる人で、マーケティング興味あという方はぜひ何かしらご一緒できたら嬉しいです。