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#8 「厳冬斜里岳北西尾根」 2022.2月

1日目

 定番となりつつ遅刻をかまし、もはや予定どおり予定を遅らせる。
「今日は明るいうちにつけばいいし」という気の緩みだ。このクセ直さねばならない。

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 まずは林道をつめる。約4.5km。ここが核心部といってもいい。あまり楽しいものではない。おまけに右往左往してまっすぐ歩かない謎の先行者トレースも我々の精神を追い詰める。きっとウサギの真似ごとでもしていたのだろうと思うよりほかない。

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 降雪結晶が美しい。それくらいが癒しといってもいい。それが林道の恐ろしさだ。

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 苦痛とは言いたくないが苦痛でしかない林道歩きを終え、樹林帯へ入る。ナチュラルな空間は我々の心を癒す。

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 シーズンはじめの重雪どか雪の影響だろう、どこを見てもスノーモンスターだ。春先の落雪を想像すると笑える。というかちょっと怖い。雪の塊が10m頭上からドサッ。それは笑えない。樹林帯でもヘルメット着用だろうか。

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 徐々に標高をあげる。やっと山らしくなってきた。やっとだ。

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 太陽も傾いてきた。

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 ウサたんにも遭遇。その距離4m。こんな至近距離は初めてのことだった。あまりの可愛さに目がハートになった。写真では伝わらないがウサたんは全身ガクブル状態。ふいな出来事にフリーズしたんだろう。人間が怖いらしい。そりゃそうか。
 ゆっくりと構えてシャッターを押した後、次のモーションの瞬間、スーパーダッシュで逃げていった。逃げ足早すぎだろう。

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 ああ、西日を受ける冬の森が美しい。

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 この辺をテンバにすることにした。森林限界少し手前の850m付近。

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 飯を食い酒の飲み(酒は自分だけ)くだらない話をして眠りにつく。山でのこの時間が好きだ。なお、酒好きとして今回の酒のチョイスと管理方法について少し触れておく。
 ビールはクラシックを2本。凍らないようにバックパックの中心付近へ。取り出したら広げてあるシュラフの中で保温。絶対に凍らせてはならない。気持ちよく2本あけると次は芋焼酎のお湯割りだ。テルモスに入ったお湯でいつでも温か。キンキンに冷えた身体にキンキンに冷えたビールを流し込み、温かいお湯割りをきめる。これだ。ホットウイスキーもよい。


2日目

 4:00起床。二体のイモムシがのそのそと動き出す。まずは飯だ。一緒に寝て温めたガスをストーブにつなぎ、昨夜の鍋のあまりを火にかける。朝はラーメンだ。食事を終え、水をつくり、行動用にリパックしてスタート。おっとう○こもしたくなってきた。スタートしたのは6:20。朝は忙しいのだ。

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 歩き始めて約1時間。傾斜がきつくなってきた1250m付近でスキーデポ。ここからは急にペースダウン。前日までの降雪と時々踏み抜くハイマツに行手を阻まれる。しばしば太もも上までズゴーっと埋まってはその度に肩を落とす。思わず舌打ちだってしてしまうし「くそー!」と暴言も漏れる。精神が未熟なのだ。そんな時も「ガンバー」と静かに低い声を発しながら一歩一歩足をすすめるのは御年55歳のマメさん。流石である。

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 きた道を振り返る。なかなか進まない。


 ピークまでもうすぐの場所でタイムリミット。1400m付近。このペースではピークまでもう1時間〜1.5時間はかかるだろうと判断し撤退をきめる。冬の斜里岳は遠い。

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 目の前に山頂があるが、これが遠い。

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 爆風の中、記念撮影を行う。マメさんから早くしてくれという無言のオーラが発せられているが、そこはスルー。確実に撮影準備にかかる。おかげで露出していた頬と鼻の一部に凍傷をくらう。強風時は気をつけなければならない。あとから自撮りした動画を見返すとその部分の皮膚が局所的に白くなっていた。現場ではなかなか気づけない。 

 3月頭に再び来る計画もあるので各斜面や稜線の状態もチェックする。

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 西尾根方面

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 西尾根方面ボウル斜面

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 玉石沢へ続く稜線からのシュート


 さぁ下山。斜面のチェック、撮影をしている間にマメさんはすたこらさっさ。いつも通りです。

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 スキーデポ地へ戻る。

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 ここからは僕は滑走モード(スプリットボード)に切り替え、お先に。マメさんは革靴にスキーなので滑走はなかなか難しいとのこと。やっと下から撮れた。

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 僕は(僕だけ)気持ちよく標高差300mを滑降。樹林帯に入ると雪は極上。安全な尾根上のメローな斜面。差し込む光。精神的ストレスのかかっていない1本は最高だった。気持ち良くてテンバポイントよりも少し落としすぎてしまった。無線をつなぎ離れたマメさんと交信。

マメさん「ゆっくり行くよ」
僕「気持ちよくて落としすぎました。少し登り返してテンバ撤収してますね」

今更日差しが温かい。そんなもんだ。ほっとする。

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 このあと修行にも思える長い林道歩きを終え、15:30下山。林道はオートで帰れない。斜度がなさすぎる上降雪があると板は走らない。荷物がやけに重く感じる。肩に食い込む。しかし歩くしかない。この脳内ループはつまり修行である。帰りの林道こそ核心部だった。

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LOG DATA

1日目(行動時間約6時間 距離6.7km 登り651m)
10:45 スタート
14:00 林道終点
16:20 850m地点テンバ

2日目(行動時間約9時間 距離11.0km 登り635m 下り1,300m)
4:00 起床
6:20 スタート
8:00? 1250m付近スキーデポ 
10:00 山頂手前1400付近折り返し
12:00 テンバ戻り回収
12:40 リスタート
13:00 林道戻りマメさんを待つ
15:30 Pポイント終了


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