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武文賞氏のベトナム社会主義共和国首席就任について

 3月2日にマスコミがベトナムの国家主席に「ボー・バン・トゥオン」なる方が就任したと報道し、私は「ボーバン?はて、検索してみようか」と検索してみたが、マスコミによるニュースしか出てこない。
 実は「ヴォー・ヴァン・トゥオン」の方が正しい発音で、外務省もかつてはそう表記していたのであるが、文部科学省が「『vo』は『ボ』と表記するように」という指示を出しているため、「ヴォー」さんが「ボー」さんになって仕舞っているのである。
 我が国は漢字圏なのであるから、下手にカタカナ語で記すよりも本人の漢字名である「武文賞」と呼んだ方が良い。相手が漢字圏かどうかは関係ない。韓国も漢字を廃止しているが、日本では「ユン・ソクニョル」や「パク・クネ」ではなく「尹錫悦」や「朴槿恵」と報道しているのだから、ベトナムに対しても同様に扱うべきであるという、至極当然のことを言っているだけだ。
 日経新聞は「米中との間でバランスをとっていたベトナムが中国寄りに傾斜する可能性もある」とするが、スプートニクはサンクトペテルブルク国立総合大学東方学科のウラジミール・コロトフ教授の「ベトナムで形成された権力体制において、個人の役割は決定的なものではない」という見解を伝えている
 ベトナムは中国と領土問題があり過去には中国から侵略を受けたこともあったため、中国を牽制するためにロシアと接近している。中国とロシアを同じブロックであると思い込んでいる日本人には見えない構図である。
 もっともかつての日本は、中国とソ連の対立をしたたかに利用していた。その成果として、中国に北方領土が日本の領土であることを認めさせ、逆にロシアは(露宇戦争で対露制裁するまでは)サハリン2等の開発で中国よりも日本を優遇していた。
 無論、これには逆の面もある。かつて新聞でロシアの担当者が「日本が投資しなければ中国が来る」と言っていたと記憶するが、ロシアも日本と中国の対立を利用している側面がある。今では反対に日本が対露制裁をしてロシアと急速に対立したため、中国は中立を保って漁夫の利を得ようとしている。
 話をベトナムに戻すと、ベトナムが米中の間で中立を保っており、しかもロシアと関係が深いということを利用している国、いや、日本は国家承認していないため「国家僭称組織」とも言うべき勢力が存在する。「平壌政府」(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)である。
 「平壌政府」の金正恩「国務委員長」はトランプ前大統領との米「平」会談をベトナムで行ったこともあるほど、ベトナムを重視している。ベトナムの絶妙なバランス感覚が仲介役として最適であった面もあるのだろう。
 金正恩「国務委員長」は2日、武文賞主席に祝電を送った。単なる外交儀礼であると言えばそれまでだが、「平壌政府」によってベトナムは儀礼以上の関係があるのも事実だ。
 逆にベトナムの中立さを利用できるのは日本も同じである。仮に日本が露宇戦争で中立を保ちつつ中国とも距離を置きたいのであれば、インドやトルコと言う親日国の見本があるのは勿論、ベトナムも見本になる国の一つだ。
 幸いにも日本とベトナムは経済的にも歴史的にも関係が浅くはない。「平壌政府」に先手を打たれないよう、日本にはしたたかな外交が求められるのではないか。

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