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「企業とデベロッパーの関係性」の重要度が増す2021年

DevRel活動の本質ってなんだろう?

最も著名なVCの1つであるセコイア・キャピタルのパートナーBogomil Balkanskyが年末に1つの ブログをエントリーしました。
DevRel is the new marketing」と題されたこのブログは、ソフトウェアインフラストラクチャー領域におけるマーケティング戦略の大きな変化を示しています。
同様の変化は日本国内でも数年前から兆しがあり、DevRelに関する国内コミュニティも立ち上がっています。
このブログは、日頃からデベロッパーマーケティングに興味のある筆者にとって興味深い考察が多く、自分の頭の整理がてらいろんな方と語りたいと思いまとめてみました。
Balkansky氏のブログに書かれている「DevRelについてのトピックス」と、「最新のコミュニティ活動計測ツール」などの紹介と合わせて、企業活動とコミュニティの関係について考察を試みたいと思います。

こんな単語に興味のある人、是非読んでみてください。
DevOps、SHIFT LEFT、DevRel、コミュニケーションのオンライン化、エヴァンジェリスト活動、コミュニティ活動計測ツール
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進むSHIFT LEFT化とDevRel

サービス提供価値が一層利用者に近い位置へと遷移していく現在において、利用者と開発者の距離が遠くなりがちなウォーターフォール型における弊害が顕在化し、アジャイルやDevOpsの重要性が高まっています。

このような「SHIFT LEFT」トレンドの中で、ソフトウェアインフラ領域は、効率化やスケーラビリティを考慮し、サブスクリプション(定期購買型)や重量型(pay per use)を前提としたSaaS/PaaS化が進んでいます。

SHIFT LEFT化における最も大きな変化は、システム開発への影響です。
従来のRFPで行われていたプロセスは、開発者フォーラムで開発者自身がその答えを見つけることに置き換えられ、ベンダーが管理をしていたPOCの行程は、開発者自身によるセルフサービストライアルに置き換えられるようになりました。
セルフサービストライアルや開発者フォーラムの利用などから派生するコミュニケーションにより、開発者同士のコミュニティが生まれ、開発者コミュニティに対するマーケティング活動(?後述にて詳細)が体系化されDevRelと呼ばれるようになっています。

DevRelにおけるトピックス

Balkansky氏はSequoiaの投資先など数社に、Covid-19以後のDevRel活動についてヒヤリングをしブログにまとめています。
トピックスとして挙げられた4点についてこの場でも紹介しておきたいと思います。

1.Covid-19はコミュニティの再構成を進めた
Covid-19により急速にオンライン化・非同期化が進んだように見られ、ブログの中では以下のような例を挙げています。

・SlackなどDevRelチャンネルのアクティビティは3倍以上の増加ものもある
・地域に縛られないコミュニケーションが可能となった
・オフィスアワーなどのカジュアルコミュニケーションもオンライン化が進んだ
・オンライン上での学習の場の充足(TwilioQuestなど)

私が国内で見回している限り同様な現象はみられました。
・オンライン動画化の促進(例KWC_Twilio
・オンラインコンテストなどによる機会創出(freee,KWC_Twilio

Before Covid-19ではオフライン-オンラインのそれぞれ良いとこをミックスしたコミュニケーションスタイルが多くありましたが、あらゆるコミュニケーションがオンライン化した1年だったようです。(この点がトピックス4にも影響します)

2.エヴァンジェリストは「生む」のでは無く、「生まれる」
DevRel活動において最も重要なアクティビティの1つとされているのが、熱心に製品を布教してくれる「エヴァンジェリスト(伝道者)」の認定です。エヴァンジェリストは当該製品の専門家となることが、自身のキャリアやデベロッパー的アイデンティティを満たすとされています。
また、この中で大事なのはエヴァンジェリスト(伝道者)は「生む」のでは無く、「生まれる」ことと、Balkansky氏はブログで強調しています。

これは、エヴァンジェリストの活動報酬は、所属(ブランドと結びつくこと)、成長(キャリアポジション)、そして楽しみ(同じ考えを持つ人々とつながること)、とされており、自発的な行動に後押しされやすいものとされているためです。
(金銭的報酬のみに動機づけられたり、無理やり育て上げるのでは適さないということ)

日本国内でもこのような製品エヴァンジェリストは多く誕生しており、海外製品も含めると、、
AWSヒーロー
Alexaチャンピオン
LINE API EXPERT
IBM チャンピオン
Microsoft MVP 
kintone エバンジェリスト
などなど。枚挙に暇がない状態です。
また、これらのエヴァンジェリスト制度の設計や、戦略支援、ハンズオンなどDevRel活動の支援を行う企業も増えつつあります。
アビダルマ株式会社
株式会社ムーンギフト
dotstudio株式会社

3.DevRelってマーケティング?製品? 大事なのは両方わかること
DevRelは組織的にどこに位置するかは、まだまだ議論の余地を残しているようです。
マーケティング組織の中に位置された場合のDevRelは、リードジェネレーションの1つとして見られ、それがROIとなる傾向にあります。
また、成功しているDevRelではデベロッパーがMarketing Fluff(マーケティング活動のふわふわした意思決定に関わらない指標や数値)に煩わされる事はあまりありません。
なぜならDevRelのマーケティングコミュニケーションは、デベロッパーコミュニティ自身がいち早く関与をしたいと考えるような、製品ロードマップなど製品に関する新情報・デベロッパー向け情報が主となるためです。

このため、DevRelチームはマーケティング部門と製品部門の両方に対しコミュニケーションが必要になります。
一般的な企業でも製品とマーケティングは相容れない要素を持つことが多いですが、その両軸を理解し進めていかなくてはならないのがDevRelの特徴だとも言えます。

一般的なセールスマーケティング活動とDevRelとの関わり合い方については、TwilioのCMOであるSara Varniがオンラインコンテンツ(VC・アクセラレーターのHeavybit提供)の中で言及しており、大変参考になるので興味がある方はご覧下さい。(要望があれば解説します)
Connecting DevRel & Sales: A Case Study(Sara Varni)

4.コミュニティ向け活動を支援するマーケティングツールの勃興
トピックス1でも言及されましたが、Covid-19の影響もあり、DevRelにおけるSlackなどのコミュニティコミュニケーションツールの重要性が一層高まりました。
多くのDevRelチームはGitHub、Stack Overflow、ソーシャルメディア、Slackなどを駆使してデベロッパーコミュニティとかかわり合いと持っています。
(日本国内ではこれにイベントプラットフォームのconnpassなども含まれます)
ただ、複数チャネルにわたるコミュニティとのコミュニケーションを、追跡および測定する統合ツールは存在していません。(それぞれ独自ツールを開発し計測しているのが現状)

このようにDevRel活動への期待が増えつつありながらも、解決できない課題に対し、ソリューションを提供するスタートアップがいくつか誕生しております。
この場ではブログで紹介されているサービスを3つほど紹介いたします。


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Commsor:Grow & Measure Your Community All In One Place
あらゆるコミュニケーションツール・プラットフォームを連結し、コミュニティ活動を計測。最も貢献度が高いコミュニティメンバーを見つけたり、GithubやTwitterなどプラットフォーム毎に影響度が高いメンバー知ることが出来ます。
また、どのタッチポイントが新規顧客につながったかもわかるとしています。※筆者はまだ試していません(テスト利用のinvite待ち)
連結サービスやその目的が、DevRelに絞られており今後の展開が楽しみです。


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Orbit:Build relationships, not spreadsheets.
こちらもcommsorと同様で、DevRelに特化した統合コミュニケーション追跡ツール。
Orbit's Discourse、GitHub、Twitterの結合により、重要なコメント、プルリクエスト、またはその他のアクティビティを見逃さないダッシュボード(コミュニティメンバー毎にも確認できる)を提供してくれます。 
また、レポーティング機能も充実しており、登録したROIやコミュニティメンバー毎の貢献度などもレポート抽出が簡易にできるようです。


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Bevy:Start with a conference,end with a community
オンラインカンファレンスなどのイベント運営を軸とし、イベントに参加する全ての関係者のコミュニケーションを誘発する様々な機能を提供しています。
開催前から参加者同士がチャットコミュニケーションする場があったり、誰がどのセッションに参加したのかがわかるのもオンラインイベントならではです。

最後に

ブログから引用をしながら、DevRelについてのトピックスと、最新のコミュニティ活動計測ツールなどを紹介してきました。
トピックス2で引用させていただいた、エヴァンジェリストは『生むのではなく生まれる』べきであるというキーワードの通り、コミュニティの活動は自由で能動的であるべきで、DevRelはあくまでもその活動を適切に支援・応援する仕組みとして位置しています。
そういう観点からもコミュニティの活動を見逃さないようにし、企業担当者の属人性(担当者と特定のコミュニティメンバーの繋がりの強さ)をおさえるためのツールが増えてきたという印象です。
今後、国内でも一層DevRelの重要性が高まる1年になっていきそうですが、少しずつ海外のツールや学びをブログで発信していければと思います。

最後にちょっとだけ宣伝

私が所属している一般社団法人MAでは、DevRel活動の支援の一貫としてハッカソンの運営や、デベロッパーコミュニティ向けの製品開発コンテストの運営をサポートしております。
DevRel活動を始めていこうとする際に、まずハッカソンや製品開発コンテストから着手される企業も増えてきてます。
もし、ご興味をお持ちいただけたら以下フォームからお気軽にお問い合わせいただけると嬉しいです!


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