【古典邦画】「女が階段を上る時」

なかなかソフトが見つからなかったが、YouTubeで見つけた!ラッキー!

成瀬巳喜男監督の、デコちゃん(高峰秀子)主演の、1960(昭和35)年の作品「女が階段を上る時」。成瀬監督の真骨頂ともいえる傑作であった。

「私は階段を上がる時が一番イヤだった。上がってしまえば、その日の風が吹く…」。

夫に先立たれて、独りで生きるために、銀座のバーの雇われママとなったケイコ(デコちゃん)。
母とトラブルを抱えた兄の面倒も見なくてはならない。
毎日、店に出てオヤジ客の相手をする。
複数の客の誘いを丁寧にあしらいつつも、どこかで女の“平凡な幸せ”を望んでもいる。
店のオーナーやマネジャー(仲代達矢)からは、売上げが落ちていることから、他のホステスのように身体を張れとも言われている。
しかし、ケイコは決して一線を超えることはない。
同系列の店に変わったりする。

「結局、女は簡単に許しちゃダメだと思うの。とにかく今日まで、それだけを通して生きて来たの。別に純潔がどうのって話じゃないけど、一度崩れたら、それこそ止め処がなくなっちゃう気がするわ」。

ホステスの引き抜きや移動が珍しくない中、店を持たせるからと迫る客もいる。ライバルだったホステスが狂言自殺をするつもりで誤って本当に死んでしまったこともあって、ケイコはストレスから胃潰瘍となり血を吐いて倒れてしまう。
実家で療養してても、集金の催促や兄からの金の無心など、寝てる暇もない。
ケイコに誠意を持って接する工場主の客がいて、彼にプロポーズされて彼女もそれに応じるが、その客には妻と子供もいて虚言癖があることがわかる。
ヤケになって酒に溺れたケイコは、銀行の支店長の男と一夜を過ごしてしまう。ケイコは、彼に好きだったと告白するが、彼は翌日、大阪へ転勤となるのであった。
現場を察したマネジャーの小松は、裏切られたと出て行く。

ケイコは仕方なくまた階段を上るが、一旦、店に入ると夜のケイコが戻って来る。夜の世界に脚を踏み入れたために、打算と欲望渦巻く中で、フツーの女の幸せなんて、さらに縁遠くなってしまう。

そんな女の悲哀をデコちゃんが見事に演じる。ちょっと鼻にかかった、べらんめえ口調にも思える声が、また拗ねた感じがして、とてもイイ。

常に、身内も含めて、男たちの欲望と、金の問題に翻弄されて、試練に耐える女の悲しみと虚しさを描くのは、当時、女を描かせたら右に出る者がいないと言われた成瀬監督のお得意とするところだ。

質素だけど艶やかな衣装はデコちゃん自ら担当してるんだね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。