「小林秀雄対話集」

知の巨人、批評家・小林秀雄の対話集。

作家らを相手に、いわゆる“芸術”について豊富な知識から縦横無尽に語り尽くすのだが…難しいでんがな〜、小林センセ。

三島由紀夫との、「金閣寺」や「美のかたち」についてのやり取りも難しい。

しょっちゅうチェーホフ、トルストイ、ドストエフスキーが出てくるけど、やはりロシア文学の内省的文学表現に大きく惹かれていたのだろうか。

小林センセは言う。
「私は小説が書けなくなった。例えば、恋愛をすると、もう心がメチャクチャになる。メチャクチャな恋愛ってのは、小説にはならない。容易くリアルが小説を超えたのだ。もう小説の意味がなくなる。ただ、具体的な描写的言辞が抽象的批評的言辞を超えることができるかどうか、その実験が批評。だから私は批評家になった」。
ふーむ。

文学者に大切なことは、トーンをこしらえることだと。

これからの日本の進路如何を問われた時、小林センセは、ただ「もののあわれ」の道を究めて行くだけだ、と答えたという。本来、文学とは心の技、心の業といったものを深めたり探求したりする磁場のようなものだと。

「一人の人間の身体の奥から出てくる生きた言葉ではなく、頭脳から出てくる言葉ばかりが全盛になってしまった」と言うけれど、今や言葉もいらない世界になってますがな。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。