「わが闘争 下(Ⅱ 国家社会主義運動)」

多分、忠実な翻訳の、ムダなセンテンスが多い細かい文字のシャワーを一身に浴びて、ついに下巻(II 国家社会主義運動)も読み切ったぜ。

俺も読書集中力が増したなぁ。でも、完全理解率は60%くらい。

上巻が、生い立ちやユダヤ人に対する思いなど個人的な事案が多かったのに対し、下巻は、既にナチスがある程度の権力を握っていたから、「国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)」が進むべき道と実践法、他国の分析、築くべき関係など、具体的な政治手法が中心に書かれている。

当時の政治情勢はチンプンカンプンなので、わかりやすい概念を言うと、国家は「目的ではなく手段である」として、全てをナチスの、言わばヒトラーの考える国や世界の在り方を目指して動くべきとしているのは言うまでもない。

平和が築かれたとしても、「世界をより高度の文化のために役立たせようとする支配民族の勝利の剣によって樹立されるべき」という。

支配民族はアーリア人で、純潔を保つために雑種の劣悪さを訴えるが、人類学的にも歴史的にも文化・文明的にも、雑種(混血)が強いのは自明の理だろう。純潔に拘る人間(レイシスト)がバカであるのは、今じゃ脳科学でも証明されている、と何かで読んだ。

ヒトラーは、「民族主義国家は人種を一般的生活の中心点に置かねばならない。人種の純粋保持のために配慮しなかればならない」と書いてるが。

また、古代ギリシアの肉体賛美について、「腐った肉体は輝かしい精神をふきこんでも、全く美しくならない」としてて、三島に(ドスコイ嫌いの俺も)近くもあるなぁと思った(笑)。

ヒトラーと言えば宣伝だけど、効果のある宣伝の仕方、目的、理念等も、読むのが苦痛な程、事細かに記してあって、近代の政治家も参考にするわけだ。基本は熱狂による洗脳だな。

ヒトラーの考えるドイツは全ヨーロッパ、ロシアも含む広大なもので、失地回復(レコンキスタ)は「激しい抗議によって戻ってくるのではなく、戦闘力のある剣によって取り戻される」と言うから戦争は避けられないものだったのだ。

「民族主義的国家の外交政策は、一方では国民の数及びその増加と他方では領土の大きさ及びその資源との間に健全で生存可能であり、また自然的でもある関係を作り出すことにより、国家を通じて総括される人種の存在をこの遊星上で保障すべきものである」…うーむ。

ヒトラーの政治理念の基本は反ユダヤ主義であり、アーリア人種至上主義だ。彼によれば、人類は、文化創造者、文化支持者、文化破壊者の3つに分けられる。創造者はアーリア人種のみであり、日本人も含めてその他の非アーリア人種はせいぜい支持者であり得ても、創造の能力は持ち得ないのである。破壊者は言うまでもなくユダヤ人だ。

この本には、こうした歪な間違った人種観が記され、ヒトラーが打倒すべきと考えた議会制民主主義、拝金思想、マルクス主義、ソ連のボルシェビキ等、一切合切がユダヤ人の世界支配の“陰謀”から派生してるという。つまりユダヤ人=悪魔なのだ。既にココに陰謀論が見られる。

イヤー、凄まじいね。政治の虚構や堕落、敵を作って自分達を特別視する思想やナショナリズム、マスコミによる大衆操作…いろいろと示唆に富むのは言うまでもないが、実は批判的に警告の書として読む者は少数じゃないか?歴史は必ず繰り返すし。それだけ権力を持った者の支配欲を強烈にくすぐる劇薬、毒のような魅力がこの本にはあると思う。それは人類の、人類が人類である限り持ってる、決して否定することはできない裏面なのだ。

そうだ、日本人についても書いている。ユダヤ人の、様々な民族を“雑種”にしてしまう力は、黄色いアジア人である日本人には通用しないと日本の天皇制国家主義国家を評価している。

「主よ我らの闘争を祝福したまえ!全能の神よ、いつか我らの軍備に祝福を与え給え、あなたがいつもそうであったように公正であれかし、今や我々がおよそ自由に値するかどうかを裁かれよ、主よ、我らの闘争を祝福したまえ!」


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。