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ストーリーのストーリー

ストーリーをつくる、ということ。当然のことながら、アニメーションをつくることストーリーをつくることであるし、例えばゲームを作ることもストーリーをつくることであったりする。

古今東西、ストーリーの型にはいろいろなものがあるが、特に日本で有名なものは「起承転結」であろう。

起承転結で語る

起承転結。世の中のストーリーを生じる作品は大体これでできているといってしまっても過言ではないほど、起承転結から世の中の物語はできている。

一番身近に触れられる起承転結は、「4コマ漫画」だ。そして、毎週日曜日の夕方にみんなが週末の終わりと同時に憂鬱な気分を誘う、あのエンディングテーマのマンガも、起承転結でできている。

ここには、掲載しないが、ぜひサザエさんのエンディングテーマを注意してみてみてほしい。すべてが起承転結の流れになっている。

起:ある出来事を境にして、ストーリーが始まる。

承:そして始まったストーリーがさらに進展してゆく。

転:進展しすぎたストーリーが大きなアクシデントによってひっくり返る。よくあるのは、苦難や試練に出会うことだ。

結:そして、アクシデントの後に結末を迎える。よくあるのは、その苦難や試練を乗り越えるか、逃げるか、どちらかの方法をとってストーリーは完結する。

以上の起承転結によってストーリーが描かれる。

科学で必要とされるストーリー

そして、この起承転結は科学においても必要とされている、と「ハーバード大学で博士号を取得し、テニュアトラックを得るも、その地位を捨ててハリウッドへ行った」研究者が提案する。

彼はこの本の中で「ABT」フォーマットを提案している。AはAND、BはBUT、TはTHEREFOREの略だ。どういうことかというと、起承転結で考えると大変理解がしやすい。

起 → AND → 承 → BUT → 転 → THEREFORE → 結

といったようにまさに、起承転結の接続詞を表現しているからだ。

ストーリーで語るときにはこのABTを意識して使うことで、自然と起承転結のストーリー性をもたせることができる。何かをスピーチするときだけでなく、プレゼンテーションや文章を書くときなどさまざまな分野で応用することができる。

ハリウッドのストーリーの作り方

映像作品をなんどか制作したときに参考にしたのが、「ハリウッドストーリーテリング」という本だった。これもまた、ハリウッドのストーリーの方法だった。

ハリウッドの映画は放物線を描くようにして、物語が対称形に作られている。ハリウッドではストーリーの「地図」を描いてから、映画の制作が始まる。大きく分けて3つのブロックにストーリーを分けて考えている。

状況設定(setup) 主人公の紹介、状況設定の説明

葛藤(conflict) 主人公が出会う葛藤。どちらにするかを悩み最終的に決断をする。

解決(solution) 決断によってどのような結末を迎えるのか、それが解決。

それぞれ、葛藤に向かって主人公の展開はどんどん加速していき、中心をすぎると、こんどはどんどん落ちていく。そういった意味で対照系になっている。

例えば、スターウォーズ(EP4)を考えてみると、

【状況設定】
レイア姫がダースベイダーから逃れるシーンから始まり、地球に降り立つドロイドたち、そしてそれを拾うルーク・スカイウォーカーが出てくる。

【葛藤】
育ての親が殺され、変わり者と揶揄されていたもののなんとなく気にかかっていたオビワンのもとへ行き、オビワンと一緒に宇宙へ飛び出るルーク・スカイウォーカー。しかし、デススターに捕まってしまい、デススターからなんとか脱出しようとする。オビワンを最終的に失うものの、デススターからの脱出に成功する。

【解決】
反乱軍に加わったルーク・スカイウォーカーはフォースの力を借り、デススターを破壊する。

といったようにストーリー展開はきれいな放物線を描いて幕を閉じるようにつくられている。

最古のストーリー研究

ストーリーの研究の歴史は古く、アリストテーレスの時代に遡る。

アリストテーレスは、悲劇の構造を「筋」とよび、その筋には3つのプロセスがあると彼の著書に記した。それは、「逆転」と「認知」と「苦難」である。

逆転:行為の転換のこと。主人公の性格でストーリーは決まるのではなく、主人公の行為によって決まるもの、そこで転換が図られることによって物語は大きく変わる。

認知:無知から知への転換のこと。優れた認知は逆転とともに引き起こされる。

苦難:人物が破滅をしたり、苦痛を受けたりする行為。これは、悲劇に特有であろう。

特にアリストテーレスはオイディプス王を悲劇の名作として取り上げた。

逆転と認知が同時に引き起こされ(父殺し)、悲劇は加速する。

考古学的研究からみるストーリー

同様にして神話のパターン、「出立」「イニシエーション」「帰還」を描いたのは、ジョーセフ・キャンベルだった。

様々な神話をあつめ、そのパターンを解析した結果、この3つの筋が共通していたのだった。

出立:偶然としか思えない事件によってたびに出ざるを得ない状況になる。勇者はそこで、たびに出るのだ。

イニシエーション:そして、たびに出た勇者は試練を受ける。様々な試練を減ることによって成長し、真の英雄となる。

帰還:英雄は帰還する。物語は円環の中に幕を閉じるのだ。

例えば、日本の神話における冒険物語のみならず、様々な神話が同様の構造であり、スターウォーズもこの構造になっている。(と考えるとEP9がどんなものなのか、想像することもできるかもしれない。)


近年ではストーリーテリングが注目されている。Stillmotionというポートランドのデザイン会社(というよりむしろストーリー制作会社)も出てくるくらいで、ますます、相手に伝わる物語り方が大切になってくるのかもしれない。


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