野村朋弘

函館生まれ。幼少の頃から歴史好き。「歴史では食べていけない 」といわれ工業高校に進学。…

野村朋弘

函館生まれ。幼少の頃から歴史好き。「歴史では食べていけない 」といわれ工業高校に進学。上京し郵便局員として仕事をしつつ、大学で日本中世史を専攻。大学院進学に合せて公務員を辞め、それからは持って生まれた器用貧乏さで、さまざまな領域に迷い込み現在に至る。旧字体主義の大学112期卒。

最近の記事

「地域の首都」感

毎年7月の連休は大学院のゼミ生とフィールドワークを函館で行っている。地域研究のフィールドとして西部地区を巡ったあと、調べ事もあったので数日函館に残っていた。そんななか瀧澤酒店さんで素敵な出会いをし、はしご酒をしたADDICTでこれまた奇縁があった。地域研究で地元の函館を勉強しなおそうと思ってから縁が広がり続けている。ありがたいことだと思いつつも、この縁は函館のサイズ感が関係しているようにも思う。偶さかTwitter(いまはXというらしい)で、ローカル食図鑑(@kKMGOS77

    • 松尾神社宮司を勤めた久我建通

      これは縁あって落手した掛軸。久我建通の画と歌です。 久我建通は幕末から明治期の公卿です。建通は皇典講究所が創設された際、副総裁となった人物であり、そうした点については國學院大學の比企さんが書かれています。 建通のもう一つの側面として、神社との関わりがあります。 明治4年に太政官布告で神官世襲制が廃止され、当時の松尾神社(現在の松尾大社)も秦氏の宮司世襲が廃されました。そのときに宮司として迎えられたのが久我建通です。 彼は摂関家の一条忠良の子で久我家の養子となりました。久我家は

      • オフラインの効能

        2023年は6月から12月まで毎週どこかへ出張している。学務の場合はもちろん、研究のための調査も多い。 そうした際少しでも時間があればしていることがある。街を歩くこと、そして古本屋に寄ることと珈琲屋を探すことである。 今日的には「日本の古本屋」というサイトがあり、全国の古本屋の在庫が調べられ購入することも多いが、その地域でしか見つからないもの・入手出来ないものもある。 特にwebでの在庫検索は、目的に直接当たれる利便性があるものの、その周辺というのはなかなか探しづらいものだ。

        • ぐんしょ

          調べ事で『ぐんしょ』をめくる。子規や碧梧桐の群書を買おうとする話は腹を抱えて笑えるほど面白い。いまも昔も変わらないのね。

        「地域の首都」感

          2024年、松尾大社展が開催されます。

          来春、松尾大社展を京都文化博物館で開催します。 史料調査をはじめてさせていただいたのが、2012年くらい。2019年からは東京大学史料編纂所の共同研究に採択され、仲間と調査・研究を進めてきました。松尾大社は重文の御神像が著名ですが、豊富で良質な史料群をお持ちです。 共同研究の成果としては、編纂所のSHIPS_DBで史料画像をweb公開することが2023年1月からはじまりました。メディアでも取り上げていただきました。 https://www.u-tokyo.ac.jp/fo

          2024年、松尾大社展が開催されます。

          松尾大社所蔵史料の画像公開について

           報道で取り上げて頂きましたが、松尾大社と東京大学史料編纂所との協定に基づき、松尾大社が所蔵している史料の高精細画像が史料編纂所のDBにて公開されることになりました。  松尾大社所蔵史料は、吉川弘文館から『松尾大社史料集』として刊行中であります。  史料編纂所でも史料採訪されており、影写本と写真帳がありましたが、一部ないものもあり、また新出史料もあり、改めて高精細画像を撮らせていただきました。その成果の一部が今回の公開になります。  今後も新出史料まで視野に入れ、松尾大社と

          松尾大社所蔵史料の画像公開について

          文字史料に遺らない伝統技術をどう維持するか

          2022年度がスタートした。 学部や大学院の他、このところ公開講座である藝術学舎の講座開発に勤しんでいる。新型コロナウイルスの感染拡大で、大学での学び方も大きく変化した。大学教育2.0のように、オンライン授業の開発が進められている。 ただ闇雲にオンラインを進める訳ではなく、芸術大学ならではのオンラインでの学修効果がある講座、対面だからこそ理解できる講座を精査したい。 そうした中で対面講座を開いているのが「表具文化のいろはの「い」」である。履修証明プログラムの「伝統文化スチュワ

          文字史料に遺らない伝統技術をどう維持するか

          誤字

          いつの世にも誤字は絶えない。 今年も幾つかの論文を書き、次年度に公開される文章などを書いてきた。 「あぁなんたる駄文」と忸怩たる思いになることはよくあることだが、それ以前の話となる誤字・脱字について、取り上げたい。 文章を書く際に注意する基本の一つが、「誤字」「脱字」をしない。ということだろう。この他、「衍字」もあるだろうか。それぞれ『日本国語大辞典』で意味を確認すると次のようになる。 誤字…「あやまった形、用法の文字。まちがって書かれた字。」 脱字…「あるべき文字が抜けて

          いま出ました。

          蕎麦屋の出前ではない。史料集を出した。 史料纂集の古文書編、宇治堀家文書である。古文書編としては51回目の配本となる。 宇治堀家文書は国立歴史民俗博物館所蔵の田中穣氏旧蔵典籍古文書にある。3巻からなり、京都宇治の中世から近世にかけて活躍した茶師の堀家が集積していた文書群と考えられている。現存するのは148通である。朝廷や幕府、大名と、一般の方々が興味関心を引く文書は少なく、多くは土地の売券である。茶師の堀氏がどのように土地を集積していたのか、また売買のやりとりはどのようなもの

          いま出ました。

          「名付ける」ということ

          先日、東京は下井草のギャラリー五峯に行く機会を得た。友人の小川哲さんの個展をみるためである。哲さんは町田に天点窯を持つ陶芸家である。彼の作る盃は、飲んだくれとしてとても手に馴染む。ゼミ生への卒業祝いの盃をお願いしても、気さくに引き受けてくれる私にとっては大切な友人の一人である。ギャラリー五峯で毎年同じ時期に個展を開いており、仕事の合間ながらお邪魔して様々な話を聞くのが恒例の愉しみにもなっている。 そんな彼の大小の様々な形をした皿や茶碗といった作品を眺めつつ、今年談義していたの

          「名付ける」ということ

          節分と立春正月

          今年は2月2日が節分ということで、例年の3日とは異なる。節分が2日となるのは124年ぶりという。 ともあれ、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言が発出されている地域もあり、それぞれの自宅で「鬼はそと」と豆まきをされる方も多いだろう。 伝統的な年中行事の一つである「節分」。実は年に4回あったといえば驚かれるだろうか。 本来、節分は「季節」の分かれ目を指す。季節が変わる節目といえば二十四節気のうち、「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の四立が該当する。 暦では四立の前

          節分と立春正月

          職場の名前について

          先日、所属している大学の名称について地裁で判決があったという。その内容云々については、特にここで書くつもりはない。 ただ、この件が世間を賑わしたときに、思ったのは「母校の名前が変わる」のと「所属大学名が変わる」のでは思い入れはずいぶんと違うだろうということだ。また、職員と教員でも異なるだろう。 旧名称の頃に、学内で書き溜めた学内向けのコラムを私家版として製本した。その「あとがき」に名称変更について、雑感を書いたが、その思いはいまのところ変わっていない。特に人目に触れていな

          職場の名前について

          篠を槌つ

          史料を捲っていると、様々な語彙に出会う。 同じ言葉一つとっても時代によって意味が異なる場合があるので、史料を読む際に国語辞典や漢和辞典は必須である。 特に研究で口に糊する身として、論文をはじめとする様々な文章を書くことはある種の日常行為である。一つ一つの言葉を大切にすべしと、自らを戒める。さて、話をもとに戻そう。史料を捲る、つまりは読む際に様々な語彙に出会う。そこで未知の語彙や言い回しに出会うことも多い。 大学院生の頃から友人の比企貴之とともに『氏経卿神事記』の講読を続け、

          篠を槌つ

          Total Recall

          新型コロナウイルスの感染拡大が進む5月、映像作家であり友人の岩本さんから、「都市」について話をして欲しいと依頼を受けた。テレビでもまたYouTubeなどのインターネットでも、罹患者数や、その対策といった病理的な解説が多い中、あえてwithコロナの都市を考えてみるという興味深いテーマだったのでお引き受けし、都市と疫病といったいった視点で幾ばくか話をさせてもらった。 歴史から鑑みるに、日本において疫病が都市計画に影響を及ぼした例はない。今回、特効薬が発明されるかは分からないもの

          Total Recall

          オンライン授業

          コロナ禍の中、部屋のカオス度はどんどん深まっている。 昨年度末、コロナ禍のニュースが出始めた頃も、なんとなく他人事と思っていた。 まさかここまで世界を席巻し、実生活に影響を及ぼすとは思っていなかった。 大学では通学部・通信教育課程ともに、遠隔授業が実施され、学生のみならず教員もまた新たな試みに、否が応でも対応させられることとなった。 特に新入生の学生にとっては、学校に通うこともままならず、サークル活動も、更には新しい友人を作ることも出来ないこともあるだろう。 それぞれの大学で

          オンライン授業

          庚申待ち -眠気とのたたかい-

          庚申とは干支(かんし・えと)の一つである。干支は十干・十二支からなり、十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類。十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種類を指す。十二支は生まれ年で今でも使われている。 十干・十二支の60種類の組み合わせは年・月・日にあてられている。その一つが庚申である。「こうしん」または「かのえさる」と読む。 庚申の日は、江戸時代までの人々にとってやっかいでもあり、楽しい日でもあった。というのも、この日は寝てはいけない日な

          庚申待ち -眠気とのたたかい-