卒業式キモい式典〇ね(米collegeのCommencementについて)

式典絶滅しろ!

私は式典を心の底から嫌っております。強制であった高校の卒業式を最後に式典には出たことがありませんでした。PhDを取った米大学も、日本で出た大学も入学式・卒業/修了式とも行っておりません。日本では卒業式に出なかったので卒業証書を取りに来いと事務から連絡があり、いやいや(私は大学が嫌いでした)行ったところ、「卒業後の就職先を記入せよ」と不愛想な事務に言われました。かつての大学事務というのは恐ろしく不愛想でした。もっとも、二十歳そこそこの学生も不愛想だったと思うのでどっちもどっちだったと思います。「それは義務ですか?任意ならば記入しません」と今ならば言うところですが、当時はまだ初心な大学生だったので何も言えず、しかし事務に言われた通りにするのは癪だったので、嘘を書いて提出しました(ガキというものはよく分からない抵抗をするものです…もっとも今でも大して変わらないのですが)。

さて話が逸れましたが...個人的な式典虫唾ポイントとしては(①複数人で同じ行動をする滑稽さ+②学問生産上のマイナス+③敬ってもいない奴に行動を制限される精神面でのマイナス)*④にもかかわらず真面目な態度を見せなければならない、といったところでしょうか。①からそもそも学生という立場全般が苦手でしたし、(①[+③])*④から真面目な美術館(あるいは任意のx館)鑑賞などもダメです。(①+②+③)*④からなんらかの敬意を表するための一斉起立や黙祷、国歌や宗教的な歌の斉唱なども可能な限り回避してきました。なおアメリカは国籍取得者に国歌斉唱させる恐ろしい国だと聞いています。事程左様に式典というのは結局のところ踏み絵であり、根本的に学問の精神に反するものだと思います。(ちなみに私は日本の民間企業で働いておりましたが、まともな民間企業にはこのようなバカバカしい式典は無いので、実は大学より過ごしやすかったのです。なぜ戻ってきたんでしょう…笑)他の大学教員は一体いかに対処しているのか...謎です。

さて学生であればほとんどの場合拒否できる式典ですが、教員になると拒否できない場合もあるかもしれないなとは危惧しておりました。私は現勤務先では任期付きの立場に過ぎないので本来式典参加義務は無いはずなのですが、一方それなりの任期を頂いているため、卒業式に出るようにとのお誘い、もとい圧力を受けました。私はアメリカの同調圧力も屁とも思わないわりと強めの人間ですので、「それは義務ですか?任意ならば参加しません」と今こそ年の功で堂々と言えるはず…ですが、しかし所詮は任期付きの弱い立場です(嗚呼…)。また、一度くらい式典に参加してみてもいいかもしれない、人間は変わるものである。昔はじゃがいも最高!と思っていたが近年はさつまいもがおいしく感じる。薬味最高。肉より薬味食いてえ。薬味...もしかして式典がそんなに嫌ではなくなっている可能性も微レ存...?等と思考をめぐらせた結果、圧力に屈して参加してみました。

アメリカのCommencement参加記:教員篇

さて卒業式(アメリカではCommencementと呼びます)ですが、私の勤務先では恐ろしいことにあのコスプレ衣装を教員も着なければなりません。耐えられない...さすがこの世のパワハラと同調圧力を煮詰めた国アメリカ。

あのコスプレ衣装:

なんでもあるいらすとや

実は事前に色々考えた際、あのコスプレ衣装を購入しなければならないことを理由に参加を拒否しようかなどとも考えたのですが、なんと大学が無料で手配してくれてしまいました。ただでさえあらゆる物の質が悪いアメリカで無料でもらえるような代物なので、「百均か?」みたいな超絶チープなコスプレ衣装が届きました。しかし「百均か?」みたいな代物が15ドルくらいするアメリカですので、実はそのくらいかかっているのかもしれません...。まあ、おかげで用が済んだら心置きなくゴミ箱に捨てて帰れると思います。

さてこのコスプレ衣装、セーラー服などと同じで実際着てみたことのないかたにはどういう構造かちょっとよく分からないと思います。私がかつて別の機会に見たものはもっと簡易だったのですが…今回着用したものは帽子・割烹着・逆よだれかけから成ります。割烹着は前チャックです。逆よだれかけは以下参考画像の背中に見える変な色のビラビラです。幅が狭いほうを前、幅が広いほうを後ろにして、割烹着の上から着ます。割烹着の胸の裏にこの逆よだれかけをひっかけるためのボタンがあります。でよだれかけのほうにはひっかけるための紐があるので割烹着の裏のボタンに引っ掛けるのです。しかし、こんなデカいよだれかけをたった一つのボタンに紐で引っ掛けたら何が起こるか、普通の人間なら分かると思いますが、まあズレます。しかもこれ着て教員は式典中椅子から立ったり座ったりするわけですよ。右に左にずれたよだれかけが地面についたりしてほんと汚らしい式典でした。これは私のようにあからさまにやる気のない人間だけでなく、他の教員もズレていましたので間違いありません。

よだれかけ参考画像:

赤い逆よだれかけを掛けた教員等

さてCommencementが始まりました。私はTEDをちゃんと見たことがありませんので一般的に流通していると思われる偏見に基づいて書きますが、TEDが嫌いです。アカデミアの世界は仮説・調査・証明が本道ですので、TEDしぐさをする人間は少ない(というか、いない)ので大丈夫だったのですが、Commencementというのはその名の通り別に何が新しく始まるでもないのに何かが始まるかのような気にさせるのが目的ですので、まさにTEDです。しかも本場の。わーぉ。そんなTEDしぐさばかりやってるからここの学生は真面目に勉強しないんだろ...とか思いますがまあそれは置いといて、学長によるTEDスピーチ、卒業生代表によるTEDスピーチと、アメリカの大学でよくある外部の偉い人TEDスピーチがありました(ジョブズとかのアレです)。あとなんか教員の表彰とかもありましたが、正直そんなこと他の機会にお前たちだけでやってほしい...と思った参加者は私だけではないはずです。で、このスピーチ用に来た外部の偉い人がものすごく演説慣れしていて、もう横にTEDパロディ芸人でも置かないとこの世のバランスが取れないレベルでした。限界だったので、良心に基いて拒否の姿勢を明確に示そうと思い読書を始めたところ、他にも共感する人はいたようで、隣に座っていた教員は学生のレポートの採点を始めました(1~3年生の成績提出締切はCommencementより後です)。

で私は高校以来卒業式に参加したことがないもんですから、これで終わると思っていたんですね。何しろ卒業式のお知らせに終了時間が書いてなかったんですよ。書いていないならば、常識的に考えて、1時間か1時間半程度で終わると思うじゃないですか。偉い人のスピーチのあたりで既に1時間半は経過してたと思います。ところが、豈図らんや、なんとその後に、卒業生一人一人が(!)台に登って学長と握手して写真を撮る、という謎行事が延々始まったのです。個別にやれよ!まさか日本の大学ではこんなことやらないと思うんですが...やるんでしょうか?いくらcollegeで人数が比較的少ないとはいえこれではどう短く見積もっても一時間以上かかると思います。思います、というのは私はこの行事に耐えられず、教員席の後ろに扉があったのでそこに逃げ込みましたところ、事務の部屋なのか誰もいませんでしたので、そこでコスプレを解除して一般人として式典を抜け出ました。最後まで参加した皆さん、ほんとご苦労様です。

来年は二年目になり、教え子がかなり参加するので参加せざるを得ないと思いますが、最初だけ出て途中はあの事務室で休んでようと心に決めました。