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日本人海外MBA受験生の独特な行動様式

日本人海外MBA受験生には、世界的に見ると、ある種独特な行動様式が見受けられます。

東アジアの中だと多少似通ったところがないわけでもないですが、いずれにせよ、世界的には日本はやや異色です。

私の担当地域でもある中東をある程度念頭に置きながら、日本人とそれ以外の比較をしてみます。

主観は極力持ち込まず、なるべく事実に基づいて記載します。

また、本稿では、一般的な傾向に立ち入るのみで、同じ日本人であっても個別性が強いところも予めご理解ください。

そして、英語力がどうだとか、そういった自明な、しかも行動様式ではなく能力面に関わる話は持ち込みません。


CVとLinkedIn

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出願段階ではどのみち必ず提出書類の1つとしてCVが必要になりますが、出願より数カ月以前の段階ではCVもLinkedInも持っていない海外MBA受験生(アプリカント)が日本では少なくないです。

海外では、これらのうち少なくとも最低1つ(特にLinkedIn)がその段階であることが大半です。

外国人はLinkedInを名刺代わりに、そして各校の卒業生や在校生の検索とコネクション作りに使っているような印象です。

日本では、LinkedInの使用率は特に社費生において低く、未だに転職用ツールとしてみなされている側面があるものと思われます。

仮に個人のページはあったとしても何も手がつけられていないことも少なくなく、名刺的な用途や卒業生や在校生の検索やネットワーキングの用途として使うという発想はあまりないのかもしれません。

なお、いざ海外MBAの期間が始まると社費私費の別を問わず、LinkedInを使用する人が日本人であっても殆どとなります。

新型コロナウィルスのために対面の面会が減ったことで名刺という概念が薄れてきているために、LinkedInが日本で爆発的に流行るきっかけになるのではと予想していたのですが、今のところそこまでの気配は感じませんね。

また、日本人は完成されきっていないCVを提出することを恐れている節があります。

完成されていないものを出して評価がネガティブになるという深層心理が働くのでしょう。

ちなみに、例外はあるかもしれませんが、基本的にはどの学校においても、CVについては出願時のものしか選考時には考慮されません。

日本語のCVをあえて提出するとか全体で5行しかないCVを提出するとか、よほどのものを提出しない限り、評価がネガティブに働くことはないと思って頂いて良いです。


勉学とキャリア

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大人の学び直しが必要とリカレント教育を煽る文言も目立つ今日この頃の日本ですが、この仕事をしていると、むしろ既に、日本人は勉強するのがつくづく大好きな国民だと感じます。

きっと私が見ている層と、リカレント教育が必要と煽られている人の層はまるで別なのでしょう。

個別の選択科目の詳細や特定のプログラム(海外モジュールと交換留学など)の日程重複の可能性等について、ここまで細かく質問してくるのは日本人だけです。

逆に、卒業後のキャリアについては関心が薄いのか考える余裕がないのか、MBAに行って国際的な環境で英語を使って仕事をできる人材になりたい、人生でこれまで機会を逸した一度留学をこの機会にしてみたい、といった思考を伴う方が少なくありません。

他方、外国人は、勉学については、受験時点で大局的な理解(例:IESEは、多様性豊かで、15ヶ月か19ヶ月のプログラムでケースメソッドが主流で+α、程度)に留まり、むしろ外国人からの質問の多くの部分は、卒業後のキャリア(とGMATと奨学金)についてになります。

具体的には、キャリアサービスはどんな支援をしてくれるのか、欧州に就職したい場合のビザの発給状況はどうか、こういったキャリアチェンジは可能か、等です。

働く場所については完全に柔軟であっても、業界や職種については、日本人よりも、漠然とではあるものの、何かしらのイメージを持っていることが多いです。

私は、会話の方向性を定めることをほぼ唯一の目的として、カジュアル面談においても、海外MBA卒業後のキャリアをどうしたいか仮説レベルで考えていることはあるか、ということは社費生除きでほぼ毎回受験生に対して聞くようにしていますが、この質問をする際に、この差は顕著なものとなります。


寝技

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出願前のイベントへの出席回数やキャンパスビジット等、出願プロセス中以外の部分でアピールして少しでも加点に繋げよう、という日本人はいわば「寝技」を多く仕掛ける傾向がある印象です。

ただ、新型コロナウイルス以降は、オンライン化に伴い、それを体現し得る機会自体が減ってきているので、今年は例年ほどの寝技感を感じません。

外国人も、キャンパスビジットが明確に加点要素になると事実上名言されている場合はそれを実行してアピールにするでしょう。

ただ、IESEのようにキャンパスビジットそれ自体が直接の加点要素にならない学校の場合、そういった寝技は殆ど考慮せず、純粋にどんな環境でどういう勉強・生活となるのかを確認するためにビジットしている方が多いです。

出願前のイベントに関しても、どんなに参加を促しても参加をせず、出願前の情報収集は自分のペースで、公式ウェブサイト等を見ながら行っていく例が少なくなく、出願ラウンドに関しても自己判断の例が多いです。


財務計画

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外国人は、学校のローンや奨学金等に財務計画の小さくない割合を依存して海外MBAを目指すことが極めて普通です。

日本人は、借金に対しての抵抗感が高いのか、金銭的な準備ができていないからと言って海外MBA受験のタイミングを遅らせる例も少なくないです。

それも、選ばれるまでに時間を要する社費派遣制度及び英語力鍛錬に必要なリードタイムと並んで、日本人の平均年齢が高くなりがちな1つの要因でしょう。

したがって、ここで言う、海外MBAを目指すにあたり金銭的な準備ができている/いないの判断をする際にどこで線を引くか、についても日本人と外国人で全く異なります。


比較・参考対象

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日本人受験生は、日本人しか比較・参考対象として関心がない場合が多いです。

中国人、台湾人、韓国人であれば比較・参考対象としてかろうじてといったところでしょうが、それ以外の在校生や卒業生がどうという話をしても、自分事としてあまり捉えません。

ですので、学校目線からすると、日本に特化したイベントを打たないと日本人の集客は全く簡単ではありません(韓国も同じです)。

それに対し、外国人はもちろん自国や自地域といった括りを最も強く意識するのは同じながらも、他国や他地域の事例からも学んだり興味を深めたりする傾向が強いです。


おわりに

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私自身は、当時、特に深く考えていたわけではないのですが、「比較・参考対象」のうち一部を除く上記全ての項目について、結果的に、日本人の一般的な行動様式よりも外国人の行動様式に準じる形で、海外MBA受験生として行動していました。

したがって、この仕事を始めてからも、正直、ある時期までは、日本人の行動様式をなかなか頭で理解することができかねず、自分自身の効果的なアプローチに結び付けられていなかった部分もありました。

現在は、その段階は超えていますが、それでも自分の担当においても地域によって大きく異なる受験生の行動様式を汲み取って、両方に対応していかなくてはならないので、その切り替えがそんなに簡単ではなかったりします。

ちなみに、エッセイカウンセラーやインタビューの訓練について大きな違いはないのか、という点については、実は程度の差はあれど外国人も多少は使っていることが少なくないので、私の基準では大きな違いを見出しません。

一方、細かく掘り下げていくと、一部の受験生が入学審査官に出す英語メールの添削といったレベルまで手厚いサービスを受験生が受けているのは日本くらいなもので、彼らカウンセラーのカバー領域は他国籍の方々向けに比べて広めと言えるでしょう。





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