祖父母と私と炊飯器。

元彼が、県外で一人暮らしをすることになった時、私は実家暮らしだった彼に3合炊きの炊飯器を貸した。
もちろん、使っていなかった訳では無いが、私はそのころ精神科のデイナイトケアで昼、夜のご飯を食べていた為、しばらく必要なかった。
復職するまでに返してもらおうと思っていた。

しかし、そのまま返してもらわないまま別れた。

その炊飯器はどこにでもあるような、1万円弱のまぁそこそこいい炊飯器だった。

でも私にとって、18歳で愛知に就職で出てきて、
初任給で買った自分だけの炊飯器。
炊飯器を買った時は改めて一人暮らしを実感してワクワクしたものだなぁと感じる。
私にとって少し特別な炊飯器だった。

実家に帰ってふと炊飯器を返してもらえてないことが気になった。

それを祖父母に言うと、『炊飯器くらい買ってあげるからその男と縁を切りなさい』そう言われた。

炊飯器を買ってくれると言われてすごく嬉しかった。あんなに仲が悪かった祖父母からそんな言葉が出てくるとは到底思っていなかった。

学生時代、祖父母との関係が上手くいかなくて喧嘩ばかりだったがこの所、仲違いせずに仲良くやれている。それが、私にとってとても特別で嬉しかった。

なぜ喧嘩ばかりしているのだろうと自分を責めてばかりだったからだ。
当時、上手く自分の気持ちを上手く表現出来なかった私は叫んだり暴れたり、キレ散らかしたりして祖父母に沢山迷惑をかけた。

私は家庭の事情で、両親がいない。幼少期から祖父母に育ててもらっていた。

今ではとても感謝しているが、当時反抗期で発達障害の特性をバリバリに発揮していた私は周りとも祖父母とも馴染めずにひとりぼっちだった。

寂しかった。

だから今とても楽しい。発達障害であることを自覚してからはむやみやたらと当たり散らすことはなくなり祖父母とも衝突しなくなった。

だから今回の『炊飯器くらいかってあげる』という発言がかなり嬉しかった。

炊飯器を返してもらえなかったのは悔しいが、返して貰っていたらこんな会話もしてなかっただろうと思うと、返してもらわなくてもよかったかなと思えた。

おじいちゃん、おばあちゃん、今までごめんね。
そして、ありがとう。

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