【序章】王子様探し、始めました。

昔々あるところに、それはそれは美しいお姫様が暮らしておりました。なんて言って始まる物語に憧れてるのに、未だプリンセスになれないどころか白馬に乗った王子様のお出迎えも無し。このままじゃいけないって、思ったわ。なぜなら、アタシはもうすぐ20歳。白馬の王子様は十代のうちに見つけなきゃいけないって、プリンセス界の法律で決まっているのよ。アタシ、今日から王子様探し、始めます!

まずは念には念を入れて、パパとママに聞いてみた。
「ねえパパ。アタシの本当のママはもう死んでいて、実はママは継母だったってこと、ない?」
パパとママは笑って否定した。
どうやらこの線はダメみたい。ママが継母だったら、アタシのところに魔法使いがやってきて、舞踏会へ連れて行ってくれるかなって思ったんだけど。ママが継母だったら。ふふっ。

モノのついでに、もう一つ聞いてみた。
「ねえママ。ママは実はお城のお妃様で、美しいアタシを妬んでるってこと、ない?」
ママはもうおかしくて笑いが止まらないみたい。やっとの思いでお妃様じゃないって否定したわ。
これもダメみたいね。美しさを妬まれ毒リンゴを食べさせられたアタシが、王子様のキスで目覚めるっていうのも、難しそう。

もうこうなったら、とことん聞いてやろうと思ったわ。
「ねえ、アタシが生まれた時、お祝いのパーティーに呼ばなかった魔女から、20歳の誕生日に糸車で刺されて死ぬ呪いとか、かけられなかった?」
パパとママはアタシのおでこを触ると、熱はないみたいね、と言った。失礼しちゃう。
ともかく、アタシが生まれながらにしてプリンセスである線はほぼ0になってしまったわ。

アタシはよくよく考えた。どうやって王子様を探すのか、無駄な時間は1秒だってありゃしないわ。憧れのプリンセス。そう簡単になれるモノじゃないってことは重々承知よ。でも、諦めちゃいけない!

そしてアタシはピンと閃いた。

王子様を探すのも悪くないけど、悪い魔法使いを探すのって、結構アリなんじゃない!?
悪い魔法使いに囚われた女の子を助けに王子様がやってきて、目と目が合ったその瞬間に2人は恋に落ちるの。そのままお城まで連れて行ってもらえば……。リーンゴーン! 鐘の音が響いてアタシは晴れてプリンセス!

うん、これがいいわね。でもちょっと待って。プリンセスってやっぱり、歌が上手じゃなくちゃいけないわよね。じゃないとほら、王子様と目が合った時に歌い出せないじゃない。
いつか出会えば〜すぐにわかると〜信じ今日まで生きてきた〜♪
ああ〜あなたこそ〜運命の人〜♪
ううん、ちょっと腹式呼吸がなってないわね。
今日から腹筋始めなくちゃ。

あ、いけない! アタシったらかなり大事なことを忘れていたわ。何よりも大事なこと。そう。森の動物さんたちとお友達にならなくっちゃ。これならすぐにできそう。さっそく朝の残りのパンを持って森までお出かけよ!

さあ、忙しくなってきたわ!

おしまい

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春の毎日朗読会 開催中!
◆日時◆
4月中毎日22:45頃
◆場所◆
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◆内容◆
本noteに投稿された短編を、その日の夜に朗読いたします。一読だけでどこまで表現できるかの挑戦です。よろしければぜひご覧ください!

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【脚本】たかはしともこ(@tomocolonpost)
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【出演】鳥谷部城(@masakimi_castle)
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