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ぼくが家事をシェアする理由。〜家事シェアで自由を手に入れた夫婦の話〜

ぼくの実家は「男子厨房に入らず」を地で行くような家だった。
こどもの頃なんか手伝いをしようとすると「いいから座ってなさい」「男がちまちま動くもんじゃない。じっと座って待っていればいい」と怒られたものだった。

だから自然と、無意識に「家事は女性の仕事である」と思っていた。なまじっかアルバイトなんかで料理もできるようになっていたため、家事力が低い女性をどこか冷めた目で見ているようなところもあった。

そんな中、「わたしは家事ができません!」と宣言する女性と付き合うことになった。いまの妻だ。
もともと彼女の仕事に対する熱意や考え方に惹かれていたぼくは、そんな言葉もまったく気にしてなんかいなかった。いや、家事なんて結婚すればそのうち嫌でもできるようになる、となんの根拠もなく信じていたのだ。(それに、彼女が作ってくれた唐揚げは最高に美味しかった)

そんな彼女と同棲するようになり、ぼくはひとつだけ問題を感じるようになっていた。それは、彼女が家から持ってきたピンク色の洗濯カゴについてだった。

当時、インテリアコーディネターとして働いていたぼくは、自分なりにインテリアにこだわりがあった。そのピンクの洗濯カゴは、どうしてもインテリアになじまず、常にぼくの視界に不協和音を奏で続けていたのだ。

「あのさ、そのカゴ捨ててもいい?」

おそるおそる訪ねたぼくに妻は言った。

「洗濯をしない人に、洗濯カゴのことで文句を言う権利なんてない」

その瞬間、ぼくの頭にはフリフリのカーテンや、花柄のトイレカバー、生活感あふれるリビングルームがフラッシュバックした。そのフリフリなお部屋の中でぼくは居場所を失い、落ち着く場所もなく、なにも言う権利もなく、黙りこくってじっと耐えるように座っていた。怒鳴られないように、怒られないように、息を潜めてこっそりと座っていた。

「洗濯はするから、カゴは変えよう」

ぼくの家事シェアは、こんな小さな提案からはじまったのだった。

***

それから半年ほど。
毎晩のように「いつ結婚するの?」と彼女からインタビューを受けながら、ぼくは起業することを考えていた。

でも、起業をすれば収入はおちる。ただでさえフリーランスで安定なんかしていないのに、その収入すらなくなってしまうかもしれない。
そんな状況のなかで、ぼくは彼女にプロポーズをすることはできなかった。

だけど、外堀を埋められ、毎晩の圧に押し込まれぼくはついに「いまの仕事を続けながら、できる範囲で起業しようと思う」と提案。

しかし彼女は間髪入れずにこう言った。

「そんな中途半端な気持ちで起業なんてできるわけない。いまの仕事をやめても、わたしの給料があるから大丈夫! だから仕事やめて本気で起業しなよ!」

と。

ぼくは、自分が一家の大黒柱から降りていいなんて想像もしていなかった。
女性が家事をするべきだ、というのと同じくらい、男性が家族を養うべきだと思っていたのだ。

だけど、そうでもないんだ。

大黒柱がどうのこうの、なんて考えていないでいい。家事は女性だとか、男子厨房に入らずだとか、どうでもいい価値観にとらわれて自分たちの人生を無駄にしてしまうなんてもったいなさすぎる。

このとき。
ぼくが彼女と同棲をしても家事をしていなかったら。家事は男性がやるもんじゃない、適度にサポートさえしていればいいや、なんて無責任に考えていたとしたら。
彼女はきっと、ぼくの背中を押してはくれなかっただろうと思う。

結果的にぼくは、家事をシェアすることで古い価値観から抜け出し、かけがえのない大きな自由を手に入れることができた。

***

その会話のすぐ後、ぼくは仕事をやめて起業を決意した。それと同時に彼女にプロポーズをし、結婚をした。

そのときに起ち上げたNPO法人tadaima!は、このときの想いを広めるべく家事シェアを伝える唯一の団体としていまも活動をしている。

そして、あれから9年。
妻が新しい挑戦をするにあたり、2ヶ月間の単身赴任を決意した。その間、ぼくは娘とふたりきりで家事育児仕事をこなさなければならない。
だけど、なんの抵抗もなく受け入れ、妻を全力で送り出すことができた。

──家のことは大丈夫。心配なんかなんにもしなくていいから、がんばってきな。

素直にそういうことができた。
家事シェアは、ぼくだけじゃなくて、妻にもちゃんと自由を生み出していたのだ。

家事をシェアすることは、とても大きな価値をもたらしてくれる。
毎日の、とても小さなことかもしれないけれど。
ぼくは、自分が家事をするようになったことを本当によかったと思っている。妻が、ぼくの中にあった古い価値観をぶち壊してくれたことに、心から感謝しているのだ。


***

今日も、見に来てくれてありがとうございました。
家事分担の話って、パートナーをディスったり、相手を思い通りに動かそうとする話ばかりだったり、ワンオペがいかに辛いかってのが多い。
そういう一面とは違う側面として、家事をシェアすることのよさを、もっと広めていきたいと思うんです。
家事をシェアするようになって、夫婦が自由になったり絆が深まったり、助け合えるようになったり。
そんな話がもっと、広まるといいのになと思います。
ぜひ、明日もまた見に来て下さい。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました! スキ・フォロー・シェアなどしてもらえたらとっても嬉しいです。 ぜひまた見に来てください!!